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第12話 アンティークショップ

「――少しばかり遅かったようね」

 店主の死体を見下ろしながら、そんな風に言うかりん。

 

「ちなみに、死後硬直はまだ始まっていないようです」

「それと、店主で間違いないという確認は取れています」

 既に先に来ていた捜査員――と名乗ったスーツ姿の男女から、そんな風に告げられる。

 

「これは……うーん……。口を封じられた……いや、逃げられたと見るべきか?」

「大正時代から存在していて、なおかつ錬金術師との繋がりが強いとなると、『逃げる為の肉体』くらいはあると考えて良い……と思います」

 俺の呟きに対し、舞奈がそんな風に言ってくる。

 

 舞奈はまだそこまで食べていなかった事もあり、どうにか動けている。

 ……もっとも、少しばかり何とも言い難い顔色ではあるが。

 

「なんにせよ、店主から話を聞くのは無理。あとは店内を漁るしかない」

 弥衣がそんな事を言いながらギネヴィアを見る。

 するとそれに対してギネヴィアが、

「めぼしい物を見つけるだけならば、このギネヴィアにお任せあれ。故に、もう少し休んでいてくれ。マイレディ」

 なんて事を、妙に芝居がかった感じで告げた。

 

「でも、この店からめぼしい物を見つけるだけでも一苦労な気がするわ。なにしろ――」

「ブッル……。怪しい魔力を放っている物が多すぎるブル……」

「そうなんだよなぁ。そこかしこからヤバげな魔力を感じるんだよなぁ」

 かりんの言葉を引き継ぐようにして、ブルルンと俺がそんな風に言う。

 

「ですが……慌てて逃げたのであれば、隠蔽は不完全だと思います。何かしらの『手がかり』は残されているはずです」

 舞奈が周囲を見回しながらそう告げてきた。

 

 まあ、舞奈がそう『推測』するのなら、何かあるのかもしれないが……

「ま、片っ端から調べていくしかなさそうだな」

「厄介ブルねぇ……」

 俺とブルルンはそんな風に言った所で、

「なら、私と透真とブルルンとギネヴィアで霊的な力を放っている代物を調べていって、舞奈と弥衣には他の捜査員の人と一緒に、書類とか書物とかを調べていくのがいいんじゃないかしらね?」

 と、かりんがそう言ってくる。

 たしかにそれが一番良さそうなので、特に異論はなく同意する俺たち。

 

 ――というわけで、怪しい魔力を放っている物をひとつひとつ調べ始める。

 

「良く分からない物が多すぎブルゥ」

 ブルルンが浮遊しながら文字通り『良く分からない物』を次々に確認していく。

 

「そうね。普通のアンティークショップには絶対になさそうな良く分からない道具ばっかりだわ。これとかアンティークじゃない気がするんだけど……」

 と言いながら、髑髏を手に取るかりん。いや、なんでそんな物が……?

 

「骨……にしては、魂魄的な残滓すら感じない。一体どういう事だ?」

 ギネヴィアが骨を眺めながら首を傾げる。

 それに対してかりんが、

「そりゃそうよ。これ、ただの石膏だし」

 なんて言ってくる。

 

 ギネヴィアは呆れた表情で、

「……どうしてこんなものを作ろうと思ったのか」

 と呟くと、かりんは「さあ……?」と返しつつ髑髏を戻し、

「儀式とかで、本物の数が足りなくて、代わりに使ったとかなんじゃないかしらね?」

 と、推測を述べた。

 

「まあたしかに、本物が手に入らずに何かを代用にした……という話はたまに聞く事があったなぁ。もっとも、道具の持つ性質を理解せずに代用品を用意した場合、成功率が著しく下がる場合もあるから良い方法だとは言い難いが、ものによっては入手困難な場合もあるし、仕方がないと言えば仕方がないんだが」

 俺は向こうの世界での事を思い出しながらそんな事を口にする。

 

「どっちにしてもアンティークかと言われると微妙よね……」

 肩をすくめるかりんに、俺は同意して頷いてみせた。

「まあ、そこはたしかにそうだな」

 

 そんなこんなであれこれ調べていくが、どれも何かに繋がりそうなものではなかった。

 俺たちが来る前に破棄されてしまっているのかもしれない。

 

「透真さん! この資料なんですが、何かの道具が定期的に納品されている先が記されていました。もしかしたら、この納品先に――」

「――錬金術師や『企業』の関係している場所があるかも」

 舞奈の言葉を途中から引き継ぐようにそう言ってくる弥衣。

 

「定期的に……か。なるほど、それはたしかに何か関係ありそうだな」

「ですよね。処分されていない事を考えると、直接的な繋がりはなさそうな気もしますが、そこから追っていけば……」

「だな。ちなみに、どんな所に納品されているんだ?」

 舞奈に対して頷きながらそう問いかけると、舞奈は「えーっと……」と言って、資料――ファイルのページを捲っていき、

「――研究所っぽい所や、工房っぽい所、それから倉庫? らしき場所ばかりですね。地域的にはどこも西日本です」

 と、そう言ってきた。

 

「西日本……。黒志田の逃げた先や、例の龍脈の流れの先もそっちの方だったな」

「そうブルね。黒志田に繋がる可能性がありそうブル」

 俺の呟きに対し、頷くように身体の上半分を曲げて同意を示すブルルン。

 

「その資料はこちらで預かりましょう。すぐにそこに記されている場所を調査いたしますので」

 いつの間にか現れていたスーツ姿の女性捜査員がそんな風に言ってくる。

 それに対して、「あ、はい。お願いします」と返し、舞奈がファイルを手渡す。

 

 それを眺めながら、これで黒志田の居場所や『企業』に繋がる情報が少しでも分かればいいんだがな……と、そんな風に思いつつ、再び怪しい代物を確認して回る作業へ戻る俺だった。

ちょっと展開を圧縮&調整していたら予定時間よりも少し遅くなってしまいました……

どうにか『西』へ行く前の話は今回までで片付けたかったもので……

(無理矢理纏めた感がちょっとあるので、後で微調整するかもしれません……)


とまあ、そんな所でまた次回! 次から『西』が舞台です!

次の更新も予定通りとなります、11月25日(土)を想定しています!


※追記

誤字を修正しました。

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