第6話 満腹と転移魔法と霊力と
「うぐ……。これはなかなか厳しかったぜ……」
「そ、そうだね……。ボ、ボクもリミットブレイクしたよ……。うぷぅ……っ」
そんな事を口にして突っ伏す雅樹と咲彩。
いや、リミットブレイクしたら駄目じゃないか? などと思っていると、
「なかなかの量だったブル……」
「うむ……。我らでも厳しかったぞ……」
俺と弥衣が呼び出したブルルンとギネヴィアも、そんな事を言ってくる。
一応、どちらも食事が出来る『術式』は組み込まれていたりする。
正確に言うと、接種する事で魔力に変換されるという感じだ。
……と、そう説明したら「どこかの青いタヌキ……じゃなくて、ネコ型のロボットみたいだね」なんて事を鈴花が言っていたが。
とまあそれはともかく、俺とかりんを除いた他の皆も、言葉こそ発していないが似たようなものだった。
そんな皆を見回しながら、
「だから、頼みすぎると大変だって言ったじゃない……」
と、呆れ顔で言うかりん。
「しかし、これではしばらく動けそうにないな」
「そうね……。あまり色々な場所には行けそうにないわね。それとも転移しまくる?」
肩をすくめてみせた俺に、かりんがそう問いかけてくる。
だが、それは難しい。なぜなら――
「いや、実の所、都内はそんなにゲートを設置してないんだ。だから、転移しまくるってのはちょっと厳しいな……」
「え? そうなの? それは意外ね」
「なんというか……都内でゲートを設置しようとすると、どこも人が多いから隠蔽しないとまともに設置出来ないだろ? だからと言って人の少ない所に設置すると、それはあまり意味のない場所である事が多いし」
心底意外だと言わんばかりの表情をするかりんに対し、そう説明する俺。
すると、かりんは一応ではあるが、
「うーん……。たしかに言われてみると、そうかもしれないわね」
と、納得顔でそう言ってきた。
「でまあ、人が多くてゲートを設置すると便利そうな場所っていうのは、大体移動手段が豊富にあるし、大した距離でもないから転移で行かなくてもそういった移動手段を使うなり、隠蔽状態で飛行するなりすれば簡単に行けるし、別にわざわざ細々と設置しなくてもいいか……って思ってな。必要最小限にしている感じだ」
そんな風に俺が言葉を続けると、かりんは顎に手を当てて、
「なるほど……。でもそうなると、普通に移動するしかないわね」
と、そう考えながら言ってくる。
それに対し、俺に代わるようにして、咲彩が苦しげな表情で返事をする。
「うぷっ。まあ……回りきれなかったら、また後日でもいいと思うよ……。一応、ボクも転移魔法でこっちにはすぐに来られるし……」
「そう……ですね……。咲彩ちゃんを捕まえれば、簡単に来られます……ね……」
紡が何故か樽に両手を付き、こちらに背を向けながら、そんな事を言ってきた。
……というか、紡はどうしてそんな妙な格好になっているんだ……?
などと思った所で、ふと妙な霊気を感じた。
「ん? これは……ホーンテッドカフェ全体にかりんが張り巡らせた結界が、何かに反応した感じ……か?」
「ええ、そうね。……マスター、また何か変な物を買ったのかしら……」
俺の呟きに対し、かりんがそんな事をため息混じりに口にしてこめかみに手を当てる。
たしかにその可能性は大いにあるが……と思いつつも、一応気になるので、食べ過ぎで動けない面々をその場に残し、俺とかりんは、感じ取った霊気の『もと』へと向かう。
「あれ? 透真先輩にかりん先輩? どうかしたんですか? 今日はお客さんなんですから、ここに入ってきては駄目ですよ?」
辿り着いた先――店のバックヤードの倉庫には璃紗がおり、そんな風に言ってきた。
一応、認識阻害魔法を使っているのだが……良く気づいたな。
もしかして、魔法的な特性を備えるホムンクルス体だから、魔法の効きが弱いのだろうか?
「ああすまん。ちょっとばかし妙な気配みたいなものを感じたんで、来てしまった」
「妙な気配……。もしかしてそれは、霊的な感じの……ですか?」
俺の返答に対し、璃紗が顎に手を当てて少し考えた後、そんな風に言ってくる。
「え? あなた、霊力とか感じられるの?」
「ええ、まあ、その……元々、ほんの少しですが霊感のようなものがあったんですけど、最近は以前よりも『そういうもの』を強く感じられるようになったんですよ」
かりんの問いかけに、璃紗がそう答えてくる。
それを聞いた俺は、「最近……か」と、小さく呟くのだった――
なんだか妙なサブタイトルに……
ま、まあそんな所でまた次回!
次の更新も予定通りとなりまして、11月4日(土)を予定しています!




