第34話 舞奈の部屋
「さあ、成伯さん。どうぞ入ってください!」
……と、そんな風に言ってドアを開ける舞奈。
そう――結局俺は、舞奈の部屋へとやってきた。やってきてしまった。
これは仕方がない。うん、仕方がないのだ。
なんていう言い訳じみた事を、心の中で呟きながら、
「じゃ、じゃあ……おじゃまします」
と言って緊張しながら中に入る俺。
「……これはまた、同じマンションの部屋とは思えないな……」
内装を見てそんな感想を口にする俺。
驚きの光景に、緊張その他諸々がどこかに吹き飛んでしまった。
――舞奈の部屋は、まさかの畳だった。
舞奈の部屋全体に、畳のマットが敷き詰められていたのだ。
更にリビングに入ると、畳のマットだけではなく簾風のカーテンが目に飛び込んでくる。
そして、低いテーブルを囲う形で、上面が畳になっている箱のようなものが設置されていた。無論、座布団も完備だ。
ついでに周囲を見回すと、棚の上には良くわからないけど高そうな壺やら、行灯風のランプまで設置されていたりする。
そして、何故かそんな場所に、桜満の家で見た事のある複数のゲーム機が置かれていた。
……なんか、かなり古そうなゲーム機もあるぞ……これ、動くんだろうか?
――閑話休題。
「よくまあ、ここまで和風な内装にしたものだな」
「私、畳――イグサがないと落ち着かないんですよね」
「そういうものなのか……?」
俺は畳とか存在していない世界で生まれたから良く分からんな……
コウイチも別に畳にこだわってはいなかったし。
というか、畳の話を聞いた事すらない。こっちの世界に来て始めて知ったくらいだ。
「そういうものなんですよ」
と言いながら、舞奈は木目調のシートが貼られているキッチンカウンターへと移動すると、収納スペースから何やら大きめの籠を引っ張り出してくる。
その籠へと視線をむけてみると、そこには大量のインスタント食品が詰め込まれていた。……なるほど、たしかに凄い種類と量だな。
「それで、どれを食べますか?」
なんて事を言ってくる舞奈。
「……そう言われてもさっぱり分からんから、一番良いのを頼む」
「前にそんな感じの事を鈴花に言ったら、大丈夫だ、問題ないと言いながら、問題のあるのを選ばないといけない気になる、とか言われましたね」
わけがわからん……。って、そういえば昔、見た目だけ派手なナマクラ装備を身に纏った奴に、「そんな装備で大丈夫か?」と聞いたら、「大丈夫だ、問題ない」と言われた事があったなぁ……
あいつは結局、翼の生えた魔物に瞬殺されたんだったか……? いや、ギリギリ生きていた気もするな。
などという、割とどうでもいい記憶をふと思い出した俺だったが、それを片隅に追いやり、
「……わけがわからんが、そこは本当に問題のない物で頼む」
と、そう答えた。
舞奈の部屋は簡単に言うと、マンション内に日本の古い屋敷の一部を再現したような、そんな感じです。
といった所で、また明日! しっかり更新しますよ!




