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第1話 転移魔法と今日の予定

「完全に理解した!」

 朝食用の広間で唐突にそんな事を言って来た咲彩に対し、雅樹が呆れ顔で返事をする。

「……急に何も理解出来ていない時に言うセリフを口にしてどうした?」

 

「これについてはボケ半分、本気半分だよ!」

 再びそんな事を言ってくる咲彩に、今度は紡がため息混じりに、

「ボケが半分なんですね……」

 と、言った。

 そして、それに続く形で雅樹が呆れた顔のまま問う。

「で? 何を理解したって?」

 

「ふっふっふー。聞いて驚いて! なんと、転移魔法の術式を完全に理解したんだよっ! 魔導具に頼らないで使える魔法だよっ!」

 胸を張って告げる咲彩に、驚いた表情――本当に表情だけだが――で、

「おー、すごーいー」

 なんて事を口にする弥衣。

 

「驚き方が棒っ! 絶対凄いと思ってない奴だよね! それ!」

「そんな事はない。ほんの少しだけ凄いと思ってる。私もギネヴィアや形代を操る魔法くらいしか、魔導具や呪符なしでは使えないし」

 憤慨する咲彩に対し、弥衣が真顔でそんな事を返す。

 

「……うん、明らかに私より先行ってる気がするね、それ……」

 トーンダウンしてそう呟くように言う咲彩に、

「それはそれとして、その転移魔法はどのくらいの距離を飛べるんですか?」

 という問いの言葉を投げかける弥衣。

 

「あ、うん。透真の使うゲートの魔法と性能自体は全く同じだよ。もっとも、登録出来る数に関しては、圧倒的に少ないけど……」

「え? あれが使えるの?」

 今度は普通に驚きの表情を見せた弥衣が、俺の方を見てくる。

 それに対して俺は、

「まあ……たしかに昨日の夜、あの魔法について詳細を聞かれたから、術式や発動の手順について説明したにはしたが……一晩で使えるようになったのか……」

 と、少し感心しながら言葉を紡いだ。

 

「最初はサッパリだったけど、どうにかして使えるようにしようと思ってあれこれやってたら、唐突にこう……ピカーンって電球が頭上に現れたような感じで理解したんだよ」

「ひらめき……いえ、学習ですか。面白い習得の仕方ですね」

 ジェスチャーを交えて伝える咲彩に、紡がそんな風に返すと、

「どっちかというと『ヒント』を得て、剣をブンブン振ってると『早撃ち』という抜刀術を会得する、どこかの荒野が舞台のRPGに近いですね」

 なんて事を言う舞奈。

 

「いや、そこはどうでもいいでしょ……」

「しかもそれ、古い方のだよねー? 新しい方はすぐに使えるしー」

 かりんとセラがそんなツッコミを入れる。

 

 そう言えば、そんなゲームを前に舞奈の家で見たな。

 セラが『新しい方』と言っているリメイクの方も、かなり昔のゲームだったはずだ。

 

「……そっちの話も置いといて、その魔法を覚えたという事は、私たちの街にも一瞬で来られるという事だよね? 一度来れば、だけど」

「うんまあ、そういう事だね。ちなみにもう学校の近くには設定してきた! これで学校に遅刻する可能性が大幅に減ったよ!」

 鈴花の問いかけに対し、咲彩がそんな風に答えた。

 

「インチキくさい事してる……」

 今度は弥衣がそう呟くように言うと、

「大丈夫! 定期はちゃんと買うよ!」

 なんていう返事をする咲彩。

 何が大丈夫なのか良く分からないが、まあいいか。

 

「それはそうと、弥衣って学校はどうするの?」

「うん? 色々あってゴールデンウィーク開けから、透真や舞奈たちの通う学校に1年生として編入する事になったと聞いた。年齢的には問題ない」

 咲彩の問いかけに対し、サラッとそう答える弥衣。

 

「えっ!? それは初耳です!」

 驚きの声を上げながら俺の方を見てくる舞奈。

 しかし、俺もその事は知らなかったので、

「……いや待て、それは俺も初耳なんだが……」

 と答える。


「それはまあそうだろうね。なにしろ、私も昨晩『上』に報告した際に始めて言われたし」

 そんな事を言いながら、俺たちのいる方へとやってくる亜里沙。

 そして、

「なんでも、『かりんの親類』という事にするのが一番手っ取り早いと判断したらしいね」

 なんて言いながら、かりんへと視線を向ける。


「なるほど、まあたしかにそう……かもしれない……わね?」

 かりんが理解はしたがイマイチ納得がいかないと言わんばかりの表情で、そう口にする。


「そう言えば、昨晩『上』に報告した……と言いましたが、綾乃さんたちを救う方法――ホムンクルスの件はどうなったのですか?」

 舞奈がそんな風に亜里沙に問いかけると、

「そっちも予想通りというか、セラと同じ方法を用いる方向性でOKが出たよ。……というわけで、なるべく早く連れて行きたいんだけど?」

 と、そう返しつつ俺の方へと顔を向けてくる亜里沙。

 それに対して俺は肩をすくめながら答える。

「……分かりました。朝食を終えたら、ゲートを開きますよ」


 するとそこで咲彩が、

「それだったら、今日は久しぶりに『あっち』を見てみたいかも。こっちへ戻ってくるのは自前の魔法で問題ないし」

 なんて事を口にしてきた。

 更に紡と弥衣も、

「あ、個人的にも咲彩ちゃんが以前住んでいた場所というのは興味がありますね」

「うん。そっちに引っ越すし、前もって見ておきたい。特に近くにあるという電気街」

 と、そんな事を言ってくる。


「まあ、いいんじゃないかしら?」

「そうですね。私たちの街……と、弥衣さんお望みの場所を案内するとしましょうか」

 かりんと舞奈がそう告げると、他の皆も特に異論はないという反応を示す。

 

 というわけで……俺たちの今日の予定は、大幅に変更となったのだった。

というわけで、SCROLL3の開幕です!

まあなんというか……こういう展開だったので、屋敷の探索をSCROLL2.5内に無理矢理収めてしまおうと思ったというのもあったりします。

(その結果、SCROLL2.5が予定の10倍くらい長くなってしまいましたが……)


ちなみに、序盤が終わるとまた別の地方(タイトル通り、西のどこか)へ向かいます。

なので、『街』の話はあまり長くならないと思います(多分……ですが……)


とまあそんなこんなでまた次回!

次の更新は、『更新日』通りとなりまして……10月18日(水)の予定です!

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