第46話 消え去った霊力
「……どうやら倒せたみたい……ね」
綾乃が灰――蒼生博士だったもの――へと視線を向けながらそう言ってくる。
「でも、結局色々な事が謎なまま」
そんな風にミイが口にし、弥衣がそれに頷く。
「たしかに……」
「あの蒼生博士という人物は、自らあのような存在になったのか、それとも誰かの手でああなったのか謎ですね……」
「……案外、その『どちらでもある』のかもしれないわね」
紡に対してかりんがそう返事をすると、紡がそれに首を傾げる。
「と言いますと?」
「自らああなった後、やって来た綾乃たちを利用するつもりが、逆に利用されたのかもしれないという事よ」
「あ、なるほど……。たしかにそれは十分にありえる話ですね」
かりんの説明に紡が納得の表情でそう返す。
それに続くようにして、
「そうだな。『欠片』の事を踏まえると、綾乃の『関係者』の中に奴を手玉に取っていた人間がいたとしても、なんら不思議ではない。というか、むしろその方が色々としっくり来るというものだ」
と、腕を組みながら言う俺。
「ふむ。まあ、あの蒼生博士は明らかに思考力が正常ではなくなっていたし、騙すのはさほど難しいことではない気もするな」
ギネヴィアがそんな事を口にしつつ灰へと視線を向ける。
と、そこで、
「あれ? 閉じたまま残ってる棺桶があるよ?」
「奴の棺桶と鎖で繋がってた奴だな」
なんて事を告げてくる咲彩と雅樹。
うん? どういう事だ?
と思いつつ水中を覗いてみると、そこにはたしかに閉じたままの物があった。
しかも、ひとつだけではなく4つもだ。
「……たしかに気になるな。後で桜満に言って回収して貰おう。もしかしたら、綾乃や例の記者の『肉体』とかかもしれん」
そう俺が言うと、
「ああ、なるほど。たしかにそれはあり得るな」
「もしそうなら、色々とナイスだね」
と返してくる雅樹と咲彩。
そこへ霊体がやってきて、
「もっとも……その推測通りだったとしても、残りのふたつは何なのか……という話になる……けど」
と呟きながら、沈んでいる棺桶を見る。
「そうなんだよなぁ……。うーん……幸いにも、怨霊の存在は完全に消え去ったっぽいし、何かその辺りに繋がりそうな記録とかが残されていないか、改めて色々とこの地下部分を調べてみるとするか。正直、まだ調べていない場所の方が多いしな」
「あ、携帯も使えるようになってるね!」
「怨霊の発していた霊的な力の類が消えたから……とかでしょうか?」
俺の言葉を聞いた咲彩と紡が、自身のスマホを見ながらそう言ってくる。
どうやら『通常の空間』へと回帰したようだな。
「そうね。アレ――蒼生博士が邪な霊力によって、この辺りの空間を歪ませていた『親玉』で『元凶』だったという点に関しては、間違いなかったみたいね」
かりんが咲彩に頷きつつそんな風に返事をして、俺の方を見てきた。
俺はそれに対して、
「ああ、そういう事になるな。……残念ながら『真の黒幕』ではなかったが」
と、答えた。
そう……真の黒幕だと思われていた蒼生博士は、そこまでの存在ではなかったのだ。
なんというか、まるで向こうの世界で魔王を倒した時みたいな感じだな。
あの時も魔王を倒したと思ったら、更に強大な力を持つ破壊神が出てきたし……
「ま、今は後顧の憂いを断てただけでよしとしておくしかねぇな」
肩をすくめながらそう口にする雅樹に対し、「そうねぇ」と返事をするかりん。
と、そこでかりんのスマホが振動。
「……って、舞奈からメッセージが何度も来ているわ……」
なんて事をスマホを見ながら言ってきた。
って、俺のスマホも振動したぞ……
もしやと思いつつスマホを見ると、舞奈からのメッセージが来ていた。
まあ……かりんの所に送って反応がなければ、俺の所にも送ってくるのは当然の話だよなぁ。
「……これは、改めてここを調べる前に、一度宿に戻って説明した方が良さそうだな。もう普通にゲートも開けるし」
額に手を当てながらそう言うと、その場にゲートを開く俺。
「そうね。……でも、どうやって説明したものかしらね……」
というかりんの言葉を聞きながら、俺は着信しているメッセージを改めて確認し、たしかに舞奈たちに説明するのは色々と大変そうだな、これは……と、そんな事を思うのだった。
途中からSCROLL3の冒頭を組み込んでしまったせいで長くなりすぎたSCROLL2.5も、どうにかあと2話前後で終われる所まで来ました……
幸い(?)その影響でSCROLL3のプロットは最後まで既に出来ている事もあり、SCROLL2.5が終わり次第、そのままSCROLL3へ間を開けずに移行する事が可能だったりはするのですが……
とまあそんな所でまた次回! 次の更新も平時通りの間隔となりまして……10月1日(日)を予定しています!




