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ファンタジー世界の大魔道士、地球へ転移す ~異世界生まれの高校生?~  作者: TOMA
SCROLL2.5 異世界の大魔道士、東北から帰る
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第44話 攻撃魔法と防御魔法

「攻撃せずに?」

「欠片までの道を作る?」

 首を傾げながら、咲彩と弥衣が言葉を紡ぐ。

 

 言葉こそ発していないものの、他の皆も同じように『良く分からない』と言わんばかりの表情をしている。

 ……ただひとり、紡を除いて。

 

「なるほど……。『これ』ですね?」

 と言いながら、自身が展開中の障壁へと視線を向ける。

 それを見て、綾乃がやろうとしている事を理解したのか、

「もしかして、この障壁をあの折り重なっている触手へとぶつける形で、『押し広げる』……とか?」

 と、そう問いかけてきた。

 

「ああ、そんな感じだ。もっともそれだけじゃなくて、ほぼ全員の力を借りる事にはなるんだけどな」

「まあそうよね。『攻撃』と『防御』を逆にしようとしたら、それだけじゃさすがに難しいわよね。要となるのは紡だろうけれど」

 俺の返答に対し、そんな風にかりんが言いながら紡を見る。

 かりんは、どうやら『やろうとしている事』の全体をなんとなくだが理解したようだ。

 

「そこはもうバッチリお任せください! ……と言いたいのですが、障壁魔法は『展開したまま移動する事が出来ない』という問題はどう解決すれば……?」

 というもっともな疑問を口にする紡。

 

「なに、そこは大丈夫だ。障壁魔法が使えるのは紡だけではないからな。――シルマギルワイル!」

 俺はそんな風に返しつつ、紡が展開している360度全方位を防御する障壁のちょうど半分となる半円――正面方向180度を防御する障壁魔法を少しだけ前面に展開する。

 

「さすがに紡のレベルの障壁は展開出来ないが、このくらいは出来る。そして、障壁の強度はこっちの方が高い。当然だが、紡がこっちの魔法を使えば俺よりも強く押し込めるはずだ」

「た、たしかにシルマギル系の魔法は正面に魔力を集中させられる分、シルマグラターナ系の魔法の倍近い衝撃吸収力および反発力を生み出せます。その増加した力を利用すれば、『押し返す』事が出来ますね……。1回ではさすがに無理ですが、繰り返せば……」

 俺の説明に対し、紡は魔法の性質を口に出しつつあれこれと考えながら、そう返事をしてくる。

 

 ……言っておいてなんだが、今の説明だけでそこまで理解するとはな。

 というか、随分と魔法について詳しくないか? 自身が使える魔法についてはある程度、どういう性質を持っているか分かるものではあるが……それにしては……

 なんて事を思っていると、

「え? そうなの? っていうか……紡、随分と詳しくない?」

 と、まさに俺が思っていた事そのものを紡に向かって問いかける咲彩。

 

「ええまあ、昨日今日と色々と『試して』学びましたので」

 咲彩の問いかけに対し、紡はそんな風に答えた。

 なるほど。妙に理解力が高いのはそういう事か。

 と、納得した所で、

「――ただ、それゆえに分かるのですが、シルマギルは自身の前方を起点に展開される障壁です。横や後ろがガラ空きになってしまいます。そこはどうすれば……?」

「それに、だ。こっちが障壁を押し出して行ったら、奴が後ろに下がっちまうかもしれんぜ?」

 というもっともな疑問を俺に投げかけてくる紡と雅樹。

 

「たしかにふたりの言う通り左右や後方からの攻撃を防ぎつつ、後ろに下がるのも防ぐ必要がある。だが、防ぐのは攻撃を仕掛ける事で抑えられるし、後ろに下がるのは――」

「――私の術……拘束術とかを使って防げばいいって話よね?」

 俺の言葉を引き継ぐように、かりんがやれやれと言わんばかりの表情でそう言いながら、両手を広げてみせる。

 

「ま、まあそうだな。その通りだ」

 なんだか少しバツが悪くなった俺は、そんな風に返しつつ頬を指で掻くと、

「移動を阻止するだけならば、今までの無理……ではないけれど難題だったあれこれと比べるとマシな部類だから、どうにかなると思うわよ」

 なんて事を言って若干苦笑の混じった笑みを浮かべるかりん。

 う、うーん……。たしかになんだかんだで、かりんの術に頼っている場面は結構あるな……

 

「なるほど、ほぼ全員の力を借りるってのはそういう事か。まさに『攻撃魔法』を防御に使い、『防御魔法』を攻撃に使う感じだな。――要は、左右や後方からの奴の攻撃を『防ぐ』のは俺たちの出番ってわけだな」

 腕を組みながらそう雅樹が口にすると、咲彩、ギネヴィア、弥衣、そして霊体がそれに続くように、

「なるほどね、完全に理解したよ。そしてボクたちの火力ならば攻撃するだけじゃなくて、『防ぐ』のも余裕! 楽勝だね!」

「うむ、その通りだな。任せておくが良い!」

「形代を出せるだけ出す」

「攻撃を……吹き飛ばすだけなら、余裕……」

 と、それぞれ自信満々の表情で言ってくる。ここはもうさすがだと言うしかない。

 

「そうですね……。咲彩ちゃんたちが守りに徹してくれるのであれば、私も正面に集中出来るというものです!」

「うんうん、正面突破は任せるよ。で、ボクたちの方はいつでも大丈夫だから、紡の良いタイミングで開始していいよ!」

 やる気に満ちた顔の紡に対し、周囲を――雅樹、弥衣、ギネヴィア、そして霊体を――見回してからそう告げる咲彩。


 その様子を見た紡が、俺の方へと視線を向けてくる。

 それに対して俺は無言で頷いてみせ、咲彩の発言に同意する旨を示す。

 

「わかりました! それでは、10数えたら障壁を変更します!」

 紡はそんな風に俺たちに対して告げると、そのまま続けてカウントダウンを開始し始めた――


「じゅう……きゅう……はち……なな……ろく……ご……よん……さん……に……いち――」

かなり長くなってしまっているSCROLL2.5も、どうにか終わりが近づいてきました……


とまあそんな所でまた次回!

次の更新も平時通りの間隔となりまして、9月25日(月)を予定しています!

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