第43話 超再生の触手
あっという間に一掃された事に対し、蒼生博士は理解が追いつかないのか、
「バ、バカ……な……!? 我が……我らが……! 魔が……あの大いなる力が……巨いなる力が……魔なる力が……こうも容易く……!? 無理……不理解……理解不能……! 能力解析……! 解析不能……! 想定外……! 埒外……!」
などと、そんな意味不明な言葉を口走り始めた。
と同時に、数多の触手を一斉に伸ばし、こちらへと攻撃を仕掛けてくる。
「防ぎます! ――シルマグラターナワイル!」
紡が俺たち全員をすっぽりと包み込む半円の障壁を展開し、その触手を弾く。
「脅威……! 驚異……!」
そんな事を叫びながら、障壁めがけて触手を打ち付け続ける蒼生博士。
それに対してギネヴィアと霊体が、
「せいっ!」
「砕く……!」
という掛け声と共に衝撃波を放ち、触手の半数近くを一気消し飛ばす。
「す、凄い威力ね。でも、これなら――」
かりんが驚きつつそんな風に言う。
しかし、
「無駄……! 駄法……! 回復……! 復活……! 活性……!」
そう蒼生博士が叫んだ瞬間、消し飛ばされた触手が一瞬で全て再生。
再び障壁へと叩きつけてくる。
「一瞬で全回復!?」
「どこかのラスボスかよ!?」
驚きの声を上げる咲彩と雅樹に続き、
「再生力が強すぎる……。厄介そう」
と、ミイ。
そのミイの言葉に頷きつつ、
「こういう時は、再生の限界を超えて攻撃するというのが良くある方法ですが……効果があるのかは不明ですね……」
と自信なさげに口にする紡。
「ま、ガンガンいってみるか」
「そうだね。斬りまくるよ!」
言葉通りひたすら斬り刻む咲彩とひたすら焼き払う雅樹。
俺もそれに合わせるようにして光の槍を乱れ撃ち状態で叩き込む。
しかし、そのそばから、どんどん再生していく触手。
「……この再生力を超えるのは、ちょいと厳しそうだな。だが、なんなんだ? この異常な再生力は……」
「この再生力……あの触手の奥――心臓部付近にある禍々しいけど純粋な……不思議な力のせい……?」
そこにある『代物』を感じ取ったのか、雅樹に続くようにしてそんな事を口にする弥衣。
それに対して俺は、
「ああ。あそこにあるのは『魂の欠片』……。つまり、混じりっけなしの『破壊』の力だ」
とそんな風に告げる。
「あれが話に出てきた『魂の欠片』……。強い、強い、破壊の力……」
「なるほど。何かを『破壊する』というただそれだけの為にのみ、極限まで高められた力というわけか。純粋さを有するのも納得というものだ」
弥衣とギネヴィアが納得の表情で、それぞれそんな風に言う。
とそこでミイが、
「……破壊の力でどうして再生力が?」
というもっともな疑問を投げかけてくる。
ま、そう思うよな。
それに対して俺は、
「それこそが、まさにカナを蘇生させようとした所に繋がるんだ」
と告げる。
「……ダメージを無効化――ううん、破壊している……?」
「ああ、そういう事だ。そして、この性質を知ったからこそ、ミイとカナのお父さん、そしてあの連中は、カナを擬似的に蘇生させる手段を構築出来ると考えたのだろう」
「なるほど……納得。理解した」
俺の説明にミイがそう返してきた所で、
「それはいいけど、その再生力、一体どうすれば停止するのよ? 再生力が凄まじすぎて、このままだとどうにもならないわよ?」
と、かりんが言ってくる。
それに対して俺は、蒼生博士に静寂魔法を使って――きっと使われた事にすら気づいていないだろうが――こちらの声が届かないようにしてから、
「それは簡単な話だ。あの欠片を破壊すればいい」
と答えた。
というか現状をどうにかしようとしたら、それ以外に方法はないというものだ。
「……簡単に言うけれど、触手に阻まれて攻撃が届かないじゃない。貫通させようにも、触手が何層にも折り重なっているし、再生力が凄まじいしで、私たちの中で最大火力を誇る透真の魔法ですら突破出来てない状態だし」
「いっそ燃やしてみたらどうかと思って試してみたが、引火させた直後に燃え広がるのを阻止するように、その部分を切り離して再生するとかいう行動を取ってきやがったからな」
かりんと雅樹が、触手に対して攻撃を続けながらそう言ってくる。
だが、俺はそれに対して首を横に振ってみせながら、
「――奴の破壊の力に破壊の力……『攻撃魔法』で対抗しようってのがまず間違いだったんだ。そう……ここは『攻撃』せずに魔法で欠片までの『道』を作ればいいのさ」
と、そんな風に告げるのだった。
HP全回復魔法を使うという、なかなか凶悪なラスボスが昔いましたね……
それはそうと静寂魔法、何気に久しぶりの登場な気がします。
SCROLL2だと、展開的に使い所がなかったんですよね……
とまあ、そんな所でまた次回!
次の更新も、平時通りの間隔となりまして……9月22日(金)を予定しています!




