第31話 拘束と封印と障壁
「――雅樹たちの所へ戻ってみるのが良さそうだな」
「たしかにあそこには何かありそうだから、それ自体には賛成するけど、こっちはどうするつもり?」
かりんが俺の発言に対してそう返事をしながら、拘束状態にある雑誌記者の妹らしきアンデッドを指さす。
「そうだなぁ……。このままここに拘束し続ける……ってのは出来たりするのか?」
「……それはさすがに不可能ね……。離れすぎると術が維持出来なくなってしまうし、ここに残って維持し続けたとしても、15分……いえ、全力でどうにかすれば30分くらいはいけるかもしれないけれど、逆を言えばそれが限界だわ」
俺の問いかけに、かりんがそんな風に答えて肩をすくめてみせる。
なるほど……やはりそのくらいが限界か。というか、むしろ十分過ぎる長さだな。
となると封印するとかが方法としてはあるが、さすがに封印魔法なんてもん俺には使えないし……
いや……。外へ出るのを阻止する――つまり、反発する状態にすれば、封印に近い事は出来る……か?
そんな事を考えた所で、先程アンデッドの伸びてきた首を障壁で防いだ時の事を思い出す。
……障壁で囲ってしまえば、外へ出るのを防げる……か?
しかし、俺の障壁ではアンデッドを封じる程のものは無理だな……
……って、そう言えば紡が障壁魔法で咲彩を弾き返していたりしたな。
今度は湖での出来事を思い出す俺。
障壁系の魔法に特化している紡ならば周囲を覆うのも可能……か?
「そうだな……擬似的な封印状態に出来ないかやってみるか」
「え? 封印? どうやって?」
「今、拘束しているかりんの符術と紡の障壁魔法、それを俺の魔法で組み合わせるような感じにすれば、それっぽい事は理論的には出来る……はずだ」
かりんの問いかけに対してそう答える俺。
さすがに試した事がないので、言い切るのは無理だった。
「それ、下まで運ぶか紡を連れてくる必要があるわよね?」
「そうだな。下へ運ぶよりは行き来の手間があるが、紡を連れてくるのが妥当だろう。かりんは拘束を維持する必要があるから当然だとして、他の皆も監視を兼ねてここで待機していてくれ」
そう告げて皆を見回した所で、
「例の転移魔法は……使用不可能な……状態?」
という、ある意味もっともな疑問を口にする霊体。
「ああ。どういう理由なのかは分からないが、この屋敷だけ空間が不安定な状態になっているらしくてな。ちょっと使えそうにない」
肩をすくめながら霊体に対して返事をすると、霊体の代わりにミイが、
「……たしかに。言われてみると安定している感じが全くしない。まるであの時計塔――異空間みたいな感じになってる……かも。……もしかして、ブルルンを呼んでいないのもそのせい?」
なんていう問いの言葉を、周囲を見回しながら俺へと投げかけてきた。
「それもあるし、まだ呼ぶ程のものでもないってのもある。あと、セラを任せてあるしな」
俺はミイにそう返事をした後、一呼吸置いてからその場にいる全員に対して、
「ま、そういうわけだから紡を連れてくる。15分もかからないで戻ってこられるはずだから、しばらく維持しといてくれ」
と告げ、その部屋を出た。
どういうわけかここまでやって来た時と違い、亡霊の類は一切出て来なかったので、あっさりと書庫部屋へと辿り着く俺。
道中のあれこれが、全てあの雑誌記者の妹らしきアンデッドによるものであるとは思えないが……まあ、今は妨害されなかったからよし、としておこう。
などと思いながら書庫部屋に入ると、
「――あ、戻ってきたんだ。ちょうど良か……って、あれ? 透真ひとり?」
という言葉を投げかけてくる咲彩。もっともな疑問だ。
だが、その疑問を口にする直前に『ちょうど良かった』と言いかけていたのが気になるな。
もしかして、何か見つけたのだろうか……?
さて、何を見つけたのでしょう?(まあ、大体予想出来てしまう気はしますが……)
とまあ、そんな所でまた次回! 次の更新も平時通りの間隔となりまして、8月18日(金)を予定しています!




