第31話 舞奈と魔法IV
「――分析うんぬんはさておき……身体魔法を使いたいというのは、一番最初の運動神経の部分を補いたいって所か?」
という俺の問いに、舞奈が頷いてみせる。
「あ、はい。そうです」
「他の皆に迷惑かけたくないから魔法を使う……と?」
「あ、いえ……それもなくはない……ですが、最大の理由は古武術です」
「ん? 古武術? たしか、月城は古武術を見るのが好きで趣味みたいなもの、なんだよな?」
「はい、そうです。どうしてそのような物が好きなのか気になりませんか? 私と同じ年齢くらいの女子にしては珍しいですよね?」
なんていう問いかけを逆にしてくる舞奈。
珍しいという事は認識している――いや分析して理解している、といった所か。
「まあ、たしかに気になると言われたら気になるな」
「私がそれを好きに――趣味と言っても良い物になったかというとですね……私のお祖父様の影響ですね。お祖父様って、古武術の達人なんですよ」
そんな風に俺に言う舞奈の表情は、凄く自慢げで誇らしげだった。よほど、お爺さんの事が好きなんだな。
「古武術の達人……か。その部分には少し興味を惹かれるな。いつか機会があれば会ってみたいものだ」
「ふふっ、おふたりが顔を合わせたら、いきなり手合わせから始まりそうですね」
俺の言葉にそんな事を言って笑う舞奈。
……いやいや、俺は武人ではなくて魔道士だし、いきなり手合わせ! みたいな流れにはならないと思うが……。一体、舞奈は俺の事をどう見ているんだ……?
「私は、お祖父様の優れた『技』を見ながら育った事もあり、いつかああいう事が出来たら……と、ずっとそう思っていました。――ほら、物語とかに良く出てくるじゃないですか、武術に優れた男の人っぽい口調で話す女の人。ああいうのに憧れていたんですよね、私」
舞奈はそこまで口にした所で一度切り、両手を胸の前に出してそこへ視線を落とす。
そして、軽く息を吐いてから、
「ですが……どれだけ練習しても、時を重ねても……どうやってもお祖父様のような動きは出来ませんでした……。頭で動きが理解出来ても、身体の方がついていかないんですよ」
と、言葉を続けた。……ああ、なるほど。
「まあ、たしかにそういうのってあるよな。俺にもそういうのあったし」
舞奈の言葉に、自分も昔は武術とかズタボロだったなぁ……と昔の事を思い出しながら、そう言葉を返す。
「え? 成伯さんもですか?」
「ああ。というか、今でも魔法を使わなければかなり厳しい」
驚く舞奈に対し、そんな風に答える俺。
今でこそ魔法で身体能力を補う事によって、一線級の戦士並の動きが出来はするが、魔法なしでは、間違いなく武術の心得がある者には到底及ばない。
剣と弓なら――特に剣であれば、魔法なしでもそこそこ出来るとは思うが、それでも剣聖と称されるような人間を相手にしたら、1秒も持たないだろう。
もっとも……魔道士である以上、魔法を駆使して戦ってこそではあるので、それでも別に問題ないと言えば問題ないのだが。
本日、もう1話更新があります。
「舞奈と魔法」の話が一段落するまで行ってしまおうと思います。
……1話にまとめても良かったのですが、長くなりすぎるので分割しました。




