第21話 フレッシュゴーレムとホムンクルス
「む? あの幽霊、ミイ嬢の持つ人形と何か妙な波動を互いに発して共鳴しているぞ?」
ギネヴィアがそんな事を言いながら首を傾げる。
「つまり、この人形に封じ込められている魂と何か関係がある?」
「うむ。その可能性は大いにあると言えよう」
ミイの問いかけに対してギネヴィアがそう返事をした所で、その幽霊に対して槍が一直線に飛来。幽霊の脚に突き刺さった。
「っ!? ミイ嬢! その人形を放すのだ!」
慌てた様子でギネヴィアがそう大声で警告しつつ、ミイの方へと接近する。
だが、ミイの方はその警告の反応出来ず――
「え?」
ミイの持つ人形の脚から血が噴き出して、ミイの服の一部をその血で染めた。
「……血でべっとりする……」
なんて事を言ってくるミイに、
「仕方ないな……」
と、ため息混じりに返し、洗浄の魔法を使う俺。
すると、ほどなくして血が消えた。
元々は屋外で汚れを落とす時に使われた魔法なので、こうして服についた血を消し去る事も可能だ。
「ありがとう……。さすがに急すぎて反応出来なかった……」
「でも……幽霊と同じ場所から出血? ……どういう事?」
ミイと霊体が唐突なその現象に理解が出来ず、そんな風に呟くように言ってくる。
いやまあ、俺も完全に理解出来るわけじゃないが……
「推測ではあるが……おそらく、あの幽霊と人形は『繋がっている』んだろう。だから、幽霊が傷つくと、本体――人形と一体化するような感じで囚われている方――が、傷つくわけだ」
と、そう推測を口にする。
「でも……これ人形……。出血ってありえる……の?」
霊体がそんなもっともな疑問を投げかけてくる。
それに対して俺が答えるよりも先に、
「……血や涙を流す呪いの人形はホラーの定番」
なんて事を言って、首を縦にウンウンと振ってみせる弥衣。
「そうだな。ただ、これはそういったホラーな呪いの人形とはちょっと違う」
ミイの持つ人形に顔を向けながらそう告げる俺。
それに対してミイが「というと?」と小さく口にしつつ首を傾げる。
更に霊体の方も、同じく意味が分からないようで首を傾げてみせた。
……まあでも、普通はそういう反応になるか。
と思いつつ、俺は告げる。
「これは人形というよりかは、一種のフレッシュゴーレムの類だと言った方が正しいのだろう」
「フレッシュゴーレム?」
「なに……それ?」
ミイと霊体のみならず、ギネヴィアと弥衣もそんな反応を示す。
「――簡単に言えば、石や木、粘土などの代わりに、死体を継ぎ接ぎしたものを使って生み出されたゴーレムの事だな」
「……つまり、ホムンクルスみたいな感じ?」
俺の説明を聞いた弥衣がそんな風に問い返してくる。
それに対して、なるほど……と思いつつ、
「ああそうか、そうだな。たしかに小型のホムンクルスだとも言えるな」
と、答える俺。
たしかに弥衣の言う通り小型のホムンクルスだと言えるな……これは。
まあ、幽霊と共鳴させるとかはそれとは完全に別物であり、むしろゴーレムの挙動に近い所があるが。
そして同時に――
……しかし、そうなるとこれはある意味、対処しやすい……のか?
なんて事をふと思う俺だった。
本日、何気にギリギリの更新だった為、調整しきれていない部分があります。
後ほど調整するかもしれません……
といった所でまた次回!
……なのですが、今週は色々と予定が詰まっており、あまり余裕がない為、申し訳ないのですが平時よりも1日多く間が空きまして、次の更新は7月21日(金)を予定しています。
とはいえ……今の所、その次の更新からは元の間隔に戻れる想定です。




