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ファンタジー世界の大魔道士、地球へ転移す ~異世界生まれの高校生?~  作者: TOMA
SCROLL2.5 異世界の大魔道士、東北から帰る
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第18話 人形と魂の檻

「そう言えばさっき、咲彩が人形の置かれている部屋にセーラー服を着た亡霊がどうとかこうとかって言っていたわよね?」

「ああ、たしかに言ってたな。先に進む前に覗いてみるか」

 かりんの言葉に頷きつつ、後方の部屋へと向き直る俺。

 

「開けてみる」

 弥衣がそう言いながら障子を開くと、たしかに咲彩が言っていた通り、その部屋には人形が置かれていた。それ以外には衝立(ついたて)屏風(びょうぶ)、それから着物を掛けておく……ハンガーラックみたいな代物があるくらいだ。

 

衣桁(いこう)とはまた珍しい物があるわね」

 かりんがそのハンガーラックみたいな代物を見ながらそう呟くように言う。

 

 なるほど、衣桁(いこう)というのか。

 と、そんな事を思っていると、

「むむ。私に似たような人形が置かれているな。というか、私と同じでまるで使い魔のような力を感じるぞ」

 なんて事を女騎士人形が口にする。

 

 使い魔のような力……?

「……なるほど。たしかに何か霊的な物が込められているような、憑依しているような、そんな感じがあるな……」

「言われてみるとそうね……。でも、邪気の類は漂っていないから、怨霊ではないようだけれど……」

 俺とかりんがそんな風に言葉を紡いだ所で、

「これ……私と同じというか……誰かの魂がこの人形に束縛されている……気がする」

 と、首を捻りながら告げてくるミイ。

 

「誰かの魂が束縛されている……?」

「そう。ただ、私と違って表面に出てくる事も出来ないっぽい」

 首を傾げる俺に、ミイがそう返してくる。

 

「それはまた、なんというか……人形型の魂の檻って感じね」

 顎に手を当てながら人形を見てそんな風に言うかりんに、俺は頷く。

「ああ。たしかにそうだな」


「でも、もし本当に誰かの魂が束縛されているとしたら、それは一体誰なのかしら……? ……この屋敷と関係のある人物?」

「……咲彩が言っていた、セーラー服を着た亡霊っていうのが怪しい?」

 かりんの疑問に対し、こめかみに人差し指を当てつつ推測を返すミイ。

 

「……うん、たしかに。消去法で考えても、そうなる……」

 そんな風に同意する弥衣の言葉を聞きつつ、俺もまた心の中で同意する。

 

 しかし、セーラー服を着た亡霊……か。

 咲彩はここで遭遇したと言っていたが、それらしいものが出てくる気配はなさそうだ……

 先にあの襖と髪の毛を吹き飛ばしてしまったのがマズかったか……? と。

 いや、そもそもその亡霊がどうなって髪の毛が消えたんだ?

 うーん……。もう少し咲彩から詳細を聞いておくべきだったな……

 

 そんな事を考えているとミイが、

「これ、持っていけそう」

 などと言いながら、人形を持ち上げてみせた。

 

「まあ……ここに居てもセーラー服の亡霊が出てくる気配は一向にしないし、ここから持ち出した方が、案外出てくるかもな」

「それはつまり、セーラー服の亡霊がこれを追いかけてくるって事?」

 俺の言葉に対し、かりんがそう言って小首を傾げる。

 

「ま、あくまでも可能性の話ではあるが、そういう事だな。もしこれが魂の檻であり、亡霊がその周囲に現れるのだとしたら、これの場所を動かせば亡霊もそれに合わせて動いてくるんじゃないか……? って思ってな」

「うーん、なるほど……。そう言われると得心がいくわね。セーラー服の亡霊とやらには出てきて貰った方がいいし、たしかにこのまま持ち歩いてみるのはありね。見た感じ、呪いの類とかはなさそうだし」

 かりんは俺の説明に対して納得顔でそんな風に返事をしつつ、ミイの持つ人形へと顔を向ける。

 

「じゃあ、私がこのまま持ってる。……ここにはもう何もなさそう?」

 ミイがそう言いながら人形を抱えて周囲を見回す。

 

 と、そこでガタガタンッという音が響いた。

 ……「うぎゅっ!?」っていう声も混じって聞こえたような……?


「っ!?」

 弥衣がビクッと身体を震わせながらその音がした方へと向く。

 それに続く形で俺もそちらへ向くと、衝立(ついたて)やら屏風(びょうぶ)やら衣桁(いこう)やらが盛大に倒れており、

「す、すまない……。助けてくれないだろうか……。出られぬ……」

 なんていう女騎士人形の声が、その下から聞こえてきた。


「……なにしてるの……」

 ちょっと安堵の表情をしながら呆れた声を発する弥衣。

 やれやれと思いつつ、俺と弥衣で女騎士人形の上に覆いかぶさっているそれらをどかしてやると、

「お、お手を煩わせて申し訳ない……室内を一通り確認していたら、これが急に倒れてきたもので……」

 と、言いながら女騎士人形が頬を掻いてみせる。


「……いきなり驚かせないで欲しい。……それで、何かあった?」

「いや、これらの隙間や裏などの狭い所も含めて一通り室内を確認してみたものの、めぼしいものは他になかった」

「――という事らしい」

 女騎士人形の報告を聞いた弥衣が、そう言ってこちらを見てくる。

 そんな弥衣に対して、

「なら、セーラー服の亡霊とやらが出てくるのを待ちつつ、改めて上へ向かうとするか」

 と返事をし、俺は――俺たちは改めて上へ向かう事にした。

今回は前回溢れた部分があった為、少し長くなったものの、一区切りする所まで一気に行ってしまいました。

それに合わせる形で、最後で微調整を行った為、またもや平時の更新時間を少し過ぎてしまいましたが……


とまあそんな所でまた次回! 次の更新は平時通りの間隔となりまして、7月11日(火)を予定しています!


※追記

いくつかルビを追加しました。

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