第15話 封じられた部屋の中
「……何? この髪の毛で雁字搦めにされている襖……」
「どう考えても物騒だな。燃やすか?」
首を傾げるミイに対し、雅樹がそんな風に言う。
「これ、まだあったんだ……。あの異空間でここに来た時にもこれあったよ」
「そりゃ余計に物騒だな。やっぱ燃やしちまうか」
咲彩の言葉を聞いた雅樹がそう返して、魔法で髪の毛を燃やし始める。
「ギャアァアァァァァァアァァアアァァァァアアァァッ!!」
凄まじい悲鳴が響き渡った。
と同時に、『邪な殺意』を感じ取る。……上か。
「雅樹、上だ!」
「ちょっと早いけど、来ると思ったよ!」
俺の警告とほぼ同時に雅樹に張り付いていた咲彩が、そう言い放ちながら、いつの間にか手にしていた光の剣を真上に突き出していた。
と、その直後、雅樹の頭上に巨大な縦長のひとつ目――イビルアイの類だろうか――が姿を見せる。
しかし、当然剣が突き出されているわけで……
「ガアアアアアアアアアアアアアッ!?!?」
イビルアイは自ら剣に突っ込む格好となり、そんな苦悶の悲鳴と共に消し飛んだ。
「こいつが出てきたって事は、次は赤黒い手形が周囲に……」
咲彩がそんな事を呟く。
……なるほど。周囲に霊力が満ち始めているな。
「ルクセマギターナ!」
俺は真上に球形の魔法陣を発生させ、それを炸裂させた。
すると、その魔法の発動に合わせ、
「「「「「ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲッ!?!?!?」」」」」
という複数の叫び声と共に、誰も居なかった場所に、赤黒い影が一斉に姿を現す。
やはり、隠れていたか。ま、看破魔法で見破れる程度ではまだまだだが。
なんて事を思っていると、
「下等な怨霊どもめ、我が剣にて消し飛ぶがいいっ!」
などという掛け声を発し、弥衣の使い魔である女騎士人形が赤黒い影の群れへと突っ込んでいき、手持ちの剣を連続で振るった。
と、次の瞬間、青い剣閃が嵐のように女騎士人形の周囲に生み出され、それが赤黒い影の群れを斬り刻む。
「「「「「ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ……ッ!?」」」」」
姿を現した時と同じように複数の叫び声が周囲に響き渡り、そのまま全て消し飛んだ。
「おお、さすが……」
という弥衣の声に、
「この程度は造作もないというもの」
などと冷静な口調で答える女騎士人形だが、顔はもの凄く嬉しそうだ。
「見事にホラーブレイカー状態ですね」
「ある意味、安心。もういない?」
紡とミイがそんな風に言う。
そんなふたりに対し、
「周囲からは危険な気配は感じないな」
と告げる俺。
「――あの時は、この部屋に入らなかったけど、何があるんだろう……?」
雅樹の炎で髪の毛が焼き払われ、開けられる状態になった襖に手をかけ、横へスライドさせる咲彩。
「……ここは、倉庫……いや、書庫……か?」
部屋の中に並ぶ棚――古びたウッドラックとウッドシェルフを見回しながらそう呟くように言う俺。
全てのラックとシェルフに本が置かれており、書庫として使っていたのではないかと推測する。
……ただ、それにしては整理されておらず、乱雑に置かれているだけなので、単に本の置き場がなくなった為に、ここに置いているだけというだけの話である気もしないではない。
「うん? この本って……」
そう言いながら、部屋の奥のラックに置かれた一冊の本へと手を伸ばす弥衣。
「それ、どこからどう見ても『あの本』……ですよね? ちょっと見せてください」
弥衣に対してそんな風に言いつつ、弥衣の横に移動して本を覗き込む紡。
「……やはり。間違いありませんね。このページ、見た記憶があります」
「つまり……。ここにも、この本があった?」
紡と弥衣がそんな事を言いながら、その本をめくっていく。
そう……ふたりが今読んでいるその本は、あの異空間への入口となっていた本だ。
だが、何故こんな所に存在しているんだ……?
咲彩の『夢』という形で一度出てきている屋敷ですが、あの時出てきた『あれこれ』が一体なんだったのか……? という事で、あの時には行かなかった場所へ今回は行きます。
まあ、あの時出てきた怪異は、最早ただの雑魚ですが……(透真たちが怪異に対して、圧倒的に強すぎるとも言いますが)
とまあ、そんな所でまた次回! 次の更新も平時通りの間隔となりまして……7月3日(月)を予定しています!
※追記
誤字を修正しました。




