第30話 舞奈と魔法III
いきなり何を言い出すのかと思えば、魔法を教えて欲しいという話だった。
いやまあ、魔法を目の当たりにしたら、自分も使いたいと思うのは分からんでもない話ではあるが。
実際、俺も村に来た魔道士の魔法をこの目で見た事で、魔法を使いたいと思ったしな。
閑話休題――
「今のバフの魔法というと……身体強化系の魔法、か?」
「はい、それです!」
今度は目が輝いているな……。そんなに使いたいのか、身体強化魔法。
でも、いきなり攻撃魔法を教えてくれとか言われるよりはいい……のか?
「なんでまた身体強化系の魔法を?」
「……私、あまり運動神経が良い方ではないので、こういう動きが出来る事に憧れていたんですよ」
「うん? そうだったのか?」
体育の授業は男女別だったしなぁ……。舞奈の運動している姿を見た事がないから何とも言えないな。素の俺よりは運動神経があるのかもしれないし。
「はい、そうなんですよ。今日の体育でも、バスケットボールのドリブルがまともに出来ませんでしたし……。皆に迷惑をかけてしまう事が多いんです」
あ、なんか素の俺と同じくらいの運動神経な気がしてきたぞ……
サッカーのドリブルがまともに出来ない俺じゃ、バスケットボールのドリブルも多分出来ないと思うし。
「ついでに言うと、私は料理も下手なので、家庭科の調理実習でも迷惑をかけています」
「お、おう……?」
「その上、中学2年生になるまで色々あって同年齢の方と話す機会が少なかった事もあり……他の人――クラスの方などに話しかけるのがどうも苦手ですし、今の流行りとかも良く知らないので、何を話せばいいのかもわからず……会話が続かない事がありますし……。そもそも勉強もあまり得意ではないですし……」
「待て待て! どこまで自身の問題点を上げ続けるんだ……」
……どうやら舞奈は、思ったよりもポンコツな所があるみたいだな。
しかし、よくまあここまで自身のマイナス部分を自分で述べられるもんだ……
なんて事を思いながら、俺は舞奈に問う。
「というか……だ。『ついで』以降の部分は、どう考えても身体強化魔法と関係なくないか……?」
「あっ! ……す、すいません、私、分析を始めると止まらなくなる事がありまして……。つい『自分』という情報を客観的に分析して話し初めてしまいました……」
なんて事を言ってくる舞奈。
分析って……。まあたしかに、驚くほど的確に自分の問題点を上げ続けていたが……
桜満が月城家が厄介だと――隠すのが難しいと言っていたのは、この『分析』能力に優れているから……とかなのだろうか?
うーん……まあそう考えると、色々と納得出来るのもたしかだったりする。
そして、それが一族の血によって代々受け継がれているものなのかは不明だが……とりあえず舞奈が、その高い分析能力を有している、という事は理解出来た。
なんというか……魔道士としては実に興味深い話であり、詳しく知りたい所だ。
……が、今の『本題』はそこじゃないので、俺は特にそこに関しては何も問わずに、話を先に進める事にした――
この物語は『普通(一般人)じゃない』人物が結構多めだったりします。
まあなんというか……敢えてそういった人物たちの、日常と非日常を描写しよう、
という意図が一応あったりはします。一応ですが。
とまあ、そんな所でまた次回! 更新は明日の予定です!
……が、もしかしたら今日の夜にもう一度更新するかもしれません。




