第11話 南下すると……
その後、橋を横から見たり、鶴を見たりした後、再びゲートの位置へと戻ってくる俺たち。
「さて、次は城か。――先に移動して適当な場所にゲートを開いて来ないと駄目だな」
「とりあえず、私たちはここら辺で待っていればいいかしら?」
「そうだな。ささっと行ってくる」
かりんに対して頷いてみせると、俺は即座に飛翔魔法と隠蔽魔法を使った。
「……あの島も、船で回り込まずに隠蔽魔法で突っ切れば良かったんじゃ……?」
「いや、さすがに全員に隠蔽魔法かけて維持するのは厳しいし、隠蔽魔法じゃ完全な消音ってのは難しいから、あそこで使うのには向いてないぞ。そもそも、森の中を突っ切る事自体が歩きづらいし面倒だろ」
霊体の問いかけにそう返事をすると、
「……なるほど。たしかに……。私……木々もすり抜けられるから、そこまで、気にしてなかった……」
と、そんな風に言ってきた。
それに対し、
「まあ、その感覚は分からなくもないわ……」
なんて事を呟くように言うかりん。
……たしかにかりんも最初の頃は、俺を連れたまま防火扉をすり抜けようとしたり、駅の自動改札をすり抜けようとしたりしてたしな。
とは口にせず、心の中でだけ呟いておき、
「ま、ともあれ行ってくる」
と告げて、その場から離れた。
そして南下する事しばし……
……ん?
一瞬、不思議な魔力というか霊力というか……そんな妙な力を感じた俺は、そこで停止してみる。
……例の時計塔がこっち側に出現した場所から近いな。
神社がいくつか見えるから、それらの発する神聖な力って所か?
……というか、あの村落跡の近くにも神社があったな……
もしや、龍穴がこの地点にあって、その上に神社を作っている……のか?
着陸して確認してみるも、龍穴があるのかどうかまでは不明だったが、何やら鬼に関する伝承がある土地らしい事はわかった。
鬼……か。何か別の存在を示している可能性もあるが……
いや、ここで考えていても仕方ないな。今はさっさと城へ向かうとしよう。
とはいえ……あの時計塔のあった場所にも近いし、使う事はないかもしれないが、この辺りにも一応印だけ刻んでおくか。
俺はそんな風に考え、その場に印だけ刻んでその場を後にする。
そしてそこからしばらくすると、市街地と共に城が見えてきた。
うーん、城の敷地に隣接するように学校がふたつもあるのがちょっと面白いな。
なんて事を思いつつ、着陸。
人のあまり来ないであろう場所に印を刻むと、先程の橋へとゲートを開く。
「あ、到着したんですね」
ゲートが開いた事に気づいた舞奈がそんな風に言ってくる。
「ああ。城のある場所が公園のようになっていたから、そこの端っこの方に繋いでみた。……が、全員いるようには見えないな」
ゲートから向こう側を覗くと舞奈とかりんと亜里沙しかいなかった。
「ここにいない面々なら、待っている間に魔法の練習をするとか言って、湖畔の人気のない場所へ行ってるわよ」
「時間的にもうすぐ戻ってくるのではないかと思いますが……」
かりんと舞奈がそんな風に言ってくる。
「ああなるほど……。まあブルルンが同行しているようだし、ブルルンに伝えればいいか」
ふたりに対してそう返事をすると、俺はブルルンにゲートを開いた事を伝える。
『了解ブルッ! 皆に伝えてすぐに戻――』
ブルルンからの返答が途中で途切れる。
そして一呼吸置いてから、
『――少しだけ時間がかかりそうブル……』
という、ちょっと呆れ気味の言葉が耳に届いた。
……なんだ? 何かあったのか?
移動だけで思ったよりも長くなりました……
とまあそんな所でまた次回!
次の更新も平時通りの間隔となりまして、6月22日(木)を予定しています!




