第9話 古きモノと橋
冒頭から移動と前話で書いたのですが、1シーン頭の中からすっぽ抜けていました……
というわけで、次の場所に移動する前に、前話の場所でもう少しだけ話があります。
「――これで一通り見た感じか?」
翡翠のアクセサリーっぽいものや土器の破片のようなものなどが展示されている建物内を一通り見て回った所で、そう呟く俺。
「そうですね。これで見終わったと思います」
と、俺に対して頷いてみせる舞奈に続く形でブルルンが、
「それにしても……ブル。古い時代の遺物というのは……こう……ブルブルくるものがあるブルねぇ」
という感想を口にしつつ身体をブルブルっと短く震わせた。
「……まあ、優れた力を有していた魔道士やシャーマンなんかが使ったであろう道具ってのは、長い年月を経ても魔力や霊力の類がそれなりに残存していたりするもんだからなぁ」
「たしかにそうね。そういった人間が力を込めた物が代々受け継がれ、更に力が込められ続けていく事で、高い霊的な力や神秘の力を宿したりする事もあるくらいだし。……たまに呪いの力が宿ってしまったりする事もあるけれど……」
かりんが俺の言葉に同意しつつ、そんな風に言ってかたをすくめみせる。
「それは、なんとなくわかる。あの異空間に取り込まれた物……最初はなんでもないごく普通の物だったのに、徐々に血を浴びて邪悪な意思を持ったのとかあった。例えば、図書室の本棚とか」
「あー……。言われてみると、あれはたしかに呪いの力が宿ってそうだったな」
ミイの発言に対し、俺はあの時倒した本棚を思い出しながら、そう返す。
たしかにあれって、最初からああいう魔物だったようには見えなかったしな。長い間にあの辺りで殺された者たちから流れ出た血を吸い続けた結果、あんな風に変質してしまったのだろう。
向こうの世界でも、リビングアーマーだとかイビルウェポンだとか呼ばれている魔物ってのは、大体そんな感じだし。
「それはそれとして……。そろそろ次の所へ行く……?」
「そうですね。十分見て回りましたし、次の場所へ向かっても良いと思います」
霊体の問いかけに対して舞奈がそんな風に答えた所で、かりんが周囲を見回しながら、
「って、そう言えばセラと弥衣は?」
という疑問の言葉を口にしつつ首を傾げてみせた。
「あ、それならちょっと前に――」
「――『全部見終わったから、さっきのレストランに行って栗のアイスを食べてくるー』とか言ってたよ。阿良木先生が付き添ってたから大丈夫だと思う」
紘都の言葉を引き継ぐ形で、鈴花がセラの声真似をしながらそう告げてくる。
そして、
「ちなみに、咲彩がその後に続くようにしてレストランに向かいました」
「で、その後を呆れた様子で雅樹が追いかけたよ」
と、紡と紘都がそんな風に補足するように言ってきた。
なるほど、言われてみるとふたりもいないな。
まあ……ある意味、あのふたりらしい行動な気もするが。
なんて事を納得顔で思いながら、
「そうなのか。まあ、それならレストランに行って合流してから移動するとしようか」
とだけ告げた。
◆
「うわぁ、凄い長い橋……!」
「こんなに長くてきれいな橋だったブルねぇ……。なかなか圧巻の景色ブル!」
橋の所へとゲートを使って移動するなり、セラとブルルンが感嘆の声をあげた。
しかし、その声も理解出来るというものである。
昨日訪れた湖にかかる木造の橋は、湖とその先に見える山を含め、想像していた以上に雄大さというか清廉さというか……ともかく、そういったものを感じられるような、そんな建造物だったからだ。
なにしろ鈴花が、
「うーん! たしかに写真映えするね! これは!」
なんて言いながら、パシャパシャとシャッターを切りまくっているくらいだし。
「とりあえず渡ろう!」
「おー!」
「ブッルブッルー!」
そんな事を言いながら橋へ向かって走っていくセラと咲彩。そしてブルルン。
あ、いや、ブルルンは空を飛んで、か。
それを見て、
「おいこら、走んな」
と、雅樹が呆れた声でそう言いつつ、ふたりの後を追う。
……なんだか雅樹が、子守り役みたいに見えるなぁ……
なんて事を思いながら、俺もその後を少し早めに歩いて追いかけるのだった。
そして、思ったよりも会話が長くなってしまいました……
次の場所に移動するのが全然冒頭じゃないどころか、ほぼ終わり際というオチに……
ま、まあ……なにはともあれ、そんなこんなで新しい場所(観光地)へやってきました。
と言っても、ここはそこまで長い話にはならない予定です(一度来ていますし)
さて、次の更新ですが……次も平時通りの間隔となりまして、6月16日(金)を予定しています。
次の所もちょっと出来ているので、明後日15日でも行けそうな気もしたのですが……色々と予定が詰まっている状態なので、安全を考えて16日にしておきました。
(なので、はやめに書き終えられた場合は、その次の更新が早まる可能性があります)




