第8話 折角だからなんとやら
「へぇ、木や茅で作った家だけじゃなくて、土を盛ったような家もあったんだね」
「まあ、内側――天井は茅っぽい感じだけどね」
復元された古代の建物の中を覗き込みながら、鈴花と紘都がそんな風に言う。
「かりんの住んでいた場所とかもこんな感じだったのですか?」
「……さすがにここまで昔じゃないわよ……」
小声で問う舞奈に対して、やれやれと首を横に振りながらそう答えるかりん。
そして、
「まあ、向こうに見える大きな建物は、ちょっと似たような物があったわね」
なんて事を言いながら、少し離れた場所に建つ横長の建物へと顔を向けた。
「また随分と大きな建物ブルねー」
ブルルンが少し高度を上げながらそんな風に言う。
ちなみに隠蔽魔法がかかっているので、俺たち以外の誰かに見られたり声を聞かれる事はない。
「なんだかどこかで見た事がありますね……? ……タタラ場?」
「……タタラ場という呼び方をしていた記憶はないけれど、タタラ製鉄という名の製鉄法を用いて鉄を作っていた場所は実際にあって、あんな感じの建物だったわ。まあ、あれは外見がちょっと似ているだけの別物でしょうけど。この時代にそんなのがあったとは思えないし」
かりんは舞奈に対して頷きつつもそう答え、肩をすくめてみせた。
うーん……。向こうの世界だと鉄は魔導融合炉で作っていた事もあって、タタラ製鉄というものがどういうものなのか良く分からないな……。ちょっと興味があるし、後で調べてみるか。
◆
かつては作業場か何かだったのではないかと思うような大きな建物や、4本の柱を支えとして、その上に作られた倉庫などを見学して回った所で、ちょうど昼飯時になったので、俺たちは入口となっている建物に戻ってきた。
というのも、
「あそこに縄文時代と現代が入り混じったような料理が食べられるレストランがあったはずですよ」
と紡が言ったからだ。
そして、実際にそのレストランに移動した所で――
「――たしかに、入り混じっているような気はするわね……。というか、このおにぎり、昔良く作ったものに似ているような……」
かりんがメニューを見ながらそんな事を言った。
「随分と栗推しですね……」
「まあ……縄文時代にも食べられてたと言われてるし……」
舞奈の呟きに対して、そう返す弥衣。
「よし、折角だから俺はこの『ホタテ』のラーメンにするぜ」
「……『折角』の使い方おかしくない? なんでそっちなのさ」
弥衣の言葉を聞いた雅樹の発言に対し、咲彩がそんなツッコミを入れる。
そこに舞奈が唐突に言葉を挟む。
「なんというか、口に出している色と入る扉の色が違うアレみたいですね」
「……残念だけど、赤い扉はどこにもないね?」
周囲を見回しながらそんな事を言ったセラに、
「あっても、赤い扉に素直に入ったら駄目だと思う……」
と告げる弥衣。
「……っていうか、弥衣が何気に理解してるし……」
驚きと呆れの入り混じった表情でそんな風に咲彩が言うと、
「実物をリアルタイムに見た事がある」
なんて返す弥衣。
「あ、あるんだ……」
驚きながらそう口にしたセラに続くようにして、
「まあ、あれも二十数年前の代物だから、おかしくはない……のではないか?」
と、そんな風に言う亜里沙。
「……これは一体何の話?」
「……謎……」
ミイと霊体が会話を聞きながらそうボソッと呟くが、その反応が多分一番正しいと思うぞ……なんて事を思う俺だった。
な、なんだか今回は終盤で妙な展開に……
元々はこんな展開になる想定ではなかったのですが、気づいたら何故かこうなっていました(何)
とまあそんなわけで、思ったよりも長くなってしまったので、次の目的地への移動は次の話に回しました。
中途半端に移動するより、冒頭から新しい場所の方が良いのではないかとも思いまして……
そして……その次の話(更新)ですが、次も平時通りの間隔となりまして、6月13日(火)を予定しています!




