第5話 北から再び島へ
「ここらへんじゃねぇか?」
と、告げながら船のスピードを落とす稲郷。
それに対して、咲彩が周囲を見回して頷く。
「うん、この岩場の感じ的に島の北側部分で間違いないよ」
「この辺りは普通に上陸しようとすると、結構大変そうだな。俺たちは飛ぶか大ジャンプすれば問題ねぇ話だけどよ」
雅樹がそんな風に言った通り、島の北側は崖と言ってもいいような急な斜面になっており、岩場も多かった。
「――霊力的には、んー……ちょっと行き過ぎたか?」
俺が甲板から霊力を探りつつ首を撚ると、かりんが同意の言葉を口にしてきた。
「そうね。もう少しだけ南って感じだわ」
「それにしても、変わった岩が多いブルねぇ。亀みたいな形の岩をさっき見たブルよ」
「そうですね。あそこにある岩も、なんだかギリシャとかにある神殿の柱みたいですし……」
ブルルンに頷いてみせながら、岩場を指差してそんな事を言う舞奈。
「言われてみると、縦溝のある柱が斜め傾いたかのようにも見える……かも」
ミイがそう言った所で、咲彩が頬を人差し指で掻きながら、
「その発想はなかったなぁ。この辺では材木みたいだって言われてるよ、あれ」
なんて言った。
「あ、たしかに立てかけられた材木のようにも見えますね!」
「なるほど……言われてみるとそうですね。私もこの辺りの事はあまり詳しくないので、始めて知りました。……と、それはそれとして、ここからどうしましょう? もう一度上陸する必要がありますよね?」
舞奈に対して頷いてみせながら、島を見上げる紡。
「まあそうなるな。うーん、ここら辺なら魔法を使っても大丈夫……か? こっちの方まで観光客が来る事はないんだよな?」
俺はそう口にしながら咲彩の方を見る。
すると、咲彩が俺に対し、
「あ、うん。さっきも言った通り、こっちの方まで続いている道はないはずだから、遭遇する事はないと思う」
と、そんな風に返してきた。
「んじゃ、さっき言った通り、飛ぶか大ジャンプで上陸すっか」
「ああ、そうだな」
雅樹に対してそう返事をした所で、稲郷が俺の方を見て口を開く。
「それなら、俺は先に戻らせて貰うぜ。『ネズミ』が仲間を引き連れてきた上に、『檻』に迷い込んで来てくれたんでな。そっちの方を片付けねぇといけねぇんだわ。――成伯がいればワープ出来るし問題ないだろ?」
この感じ……どうやら、錬金術師どもとそのスパイどもが罠に引っ掛かったみたいだな。
なんて事を考えつつ、
「まあそうだな。この島の霊力が発せられている地点を調べたら、次は遺跡の方へワープして行くつもりだし。ここまで運んで来てくれて助かった。ありがとう」
と返事をする俺。
「そうですね。先輩、ありがとうございました」
亜里沙が俺に続く形で礼を述べ、他の皆もそれぞれ礼の言葉を口にする。
そして、そのまま自力で空中を移動したり大きく跳躍したり出来る者は、それを用いて島へと上陸。それ以外の者は俺の飛翔魔法で島へと上陸した。
「それにしても完全に森って感じだね……」
「そうだね。でも……なんとなくだけど、人工的な感じもするような……?」
鈴花と紘都が、歩きながらそんな事を呟くように言う。
するとそれを聞いた咲彩が、
「あー、かなり昔の話にはなるんだけど……この島って、結構な数の木が植林されたみたいなんだよね。だからじゃないかな?」
と告げ、それにミイが更に言葉を紡ぐ。
「……言われてみると、こんなに緑がなかった気も……する?」
「あれ? あそこに何かあるよ?」
そう言いながら正面を指差すセラ。
それに対して「あそこ?」と返しつつ、その手の指し示す方へと視線を向けてみると、なにやらマンホールのような円形の平らな石があった。
……というか、本当にマンホールみたいに完璧なまでの円形なので、明らかに人の手によって作られたものだというのが分かる。
「この真っ平らさ、そして完璧な円形……自然に生み出されたものじゃないね」
亜里沙が俺と同じ事を思ったらしく、石を見回しながらそんな風に言ってくる。
それに対して、紡が石の上に手を置き、
「そうですね……。明らかに『誰かが作った物』ですね、これは」
と、そう返す。
「うーん……。この石からこれまで感じていた『何か』を強く感じるよ。……あ、いや、石の下……かな?」
「そうね。おそらく、この石の下に霊力の源となる『何か』があるんだと思うわ」
鈴花の発言に続くようにして、頷きながらそんな風に告げてくるかりん。
そして、俺の方もまた、この石の下から霊力を感じ取っていた。
とりあえず邪気や呪怨の類は一切感じないので、危険はなさそうだが……これは一体……?
この島の話は次で終わる想定です(あくまでも『想定』ですが……)
とまあそんな所でまた次回!
次の更新も平時通りの間隔となりまして、6月4日(日)を予定しています!




