第29話 舞奈と魔法II
今回の話は少し短いです。
俺は慌てて舞奈を降ろすと、再び謝る。
「わ、悪い! すっかり忘れていた!」
「い、いえ! 気にしないでください!」
舞奈はそう言ってくるが、こちらに顔を合わせようとしない。
というより、俺も気恥ずかしさで顔を合わせられない。
互いにしばし明後日の方向を向いて無言でいたが、さすがにそのままというわけにもいかないので、俺は舞奈に問いかける。
「……と、とりあえず、もう少し弱いのを付与してみようか?」
すると、舞奈はやや恥ずかしそうにしつつも、
「そ、そうですね……。ちょっと……もう一度、改めて試してみたい……です」
と、そんな風に返してきた。
というわけで、効果を弱めた魔法を再度付与。
「足から着地すれば、魔法の効果で着地の衝撃が打ち消される。だから、必ず足から着地するんだ」
「わ、わかりました。やってみます」
俺の説明に頷くと、おっかなびっくりといった感じで再度跳躍。
効果をかなり弱めたので、2メートル程度飛び上がった所で落下。
俺が言った通り、足から着地する。
……ちなみにロングスカートだったからか、スカートの中が見えるような事はなかった、とだけ言っておこう。
などという言い訳めいた事を心の中で呟いていると、
「す、凄いですね! 私がこんな風に忍者のように動けるだなんて思ってもいなかったです!」
なんて事を言いながら、今度は左右に飛び跳ねる舞奈。
そして何度か飛び跳ねた所で舞奈は立ち止まり、何やら意を決したかのような表情をした。……なんだ?
「あ、あのっ!」
「――うん? どうかしたのか?」
そう問いかけると、舞奈はややうつむきがちに、
「あの……無理を承知でお願いするのですが……」
と、そんな風に言ってきたかと思うと、すぐに、
「……いえ、やっぱりいきなりこんな事を言うのは……」
などと言って続きの言葉を飲み込んだ。
意を決した表情はなんだったのかと思わなくもないが、まあ言いづらい事ってあるよな。
というわけで、こちらから助け船を出す事にした。
「……よくわからないが、とりあえず話すだけ話してみてくれないか? 無理かどうかは聞かないと答えられないし、ほら、昔から良く言うだろ? 『言うだけはタダ』だってな」
「そ、そうですね。言うだけはタダですよね……」
舞奈はそんな事を呟いてしばし逡巡した後、決心がついたのか顔を上げ、
「私に……私に、今のバフの魔法を教えていただけませんかっ!?」
と、俺の目を見て言ってきた。
「……え? 魔法?」
今回の話、前回の話に含めるか迷ったのですが、含めると長くなりすぎるので、分割したままにしました。
というところで、また明日! 今度こそ12時に投稿出来るようにしたいです……




