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ファンタジー世界の大魔道士、地球へ転移す ~異世界生まれの高校生?~  作者: TOMA
SCROLL2.5 異世界の大魔道士、東北から帰る
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第1話 一夜明けて……

 黒志田の顛末について、あれこれと桜満や亜里沙と話をした結果、まずは桜満たちが現在追跡出来ている『範囲』に該当する地域内に、黒志田や黒野沢と何らかの繋がりがある場所がないかを調査する……という方針になった。

 無論、俺の方ももう少し範囲を絞れないか色々と試してみるつもりだ。

 

 そして、一夜明けて――

 弥衣がやって来るというので、舞奈と共に宿のロビーで待っていると、

「あ、透真、舞奈。おはよう。ブルルンは……いない?」

 という挨拶共に、亜里沙に連れられる形で弥衣が姿を現した。

 

「ああ、おはよう。ブルルンならセラと一緒にいるぞ」

「おはようございます。思ったよりも早かったですね」

 そんな風に俺と舞奈が返事をすると、

「なるほど……。それにしても、本当に新幹線が北海道まで繋がっていた……。驚き……」

 なんて事を言いながら、俺たちのいる場所へと歩み寄ってくる弥衣。

 

 昨晩、桜満が配置していた部下が姿を現した弥衣たち『失踪者』を保護し、諸々の事情を説明したそうだ。

 そして、既に俺たちと行動して状況を理解していた弥衣は、俺たちがこっちにいる事を知り、朝からこうしてやってきたというわけだ。

 

「一緒にあの空間に囚われた方たちも無事保護されたと聞いていますが、そちらの方たちの近くにいなくても良いのですか?」

「うんまあ……説明が長くなりそうだったし、別に私がいなくても大丈夫そうだし……。それよりもみんなの方が気になった」

 弥衣が舞奈の問いかけに対して、そんな風に答える。

 

「まあ、こっちも色々あったからな……」

 腰に手を当て、ため息混じりに言う俺に、

「あの空間を生み出した元凶を倒したけど、咲彩の学校で色々やってた奴には逃げられたって聞いた」

 と、そんな風に返してくる弥衣。

 どうやら既に話は聞いているようだ。

 

「そうなんですよねぇ……」

「ああ。しかも、気づくのがもう数秒早ければどうにかなっていたし……」

 そう口にして肩を落とす舞奈と俺に、

「――終わってしまった事はどうにもならないし、黒志田が黒野沢や『企業』と関係があるという可能性を考えていなかったのは、私たちも同じだからね。成伯や月城が悪いわけじゃないよ」

 と、そう言ってくる亜里沙。

 そして、それに続くようにして、咲彩がこちらに向かって歩み寄りながら、

「そうそう。ボクとしてはボクらの学校から危険な奴がいなくなったってだけで十分だしね」

 なんて言いながら弥衣の方を見る。

 

「あ、弥衣が来るって聞いたから、弥衣の分の朝ごはんも用意しちゃったけど、もう食べちゃった?」

 咲彩の問いかけに対し、弥衣は首を横に振ってから告げる。

「まだ食べてない。でも、いいの?」

 

「全然オッケーだよ。ひとりふたり増えた所で大して変わるもんじゃないし。って事で、とりあえず朝ごはんの準備が出来たから行くよー。細かい話は食べながらでも出来るしね」

 そう告げてきた咲彩に頷き、俺たちは朝食会場の広間へと移動する。

 

 この宿は、宿泊客全員がひとつの広間に集まるタイプではなく、大きさの異なる食事用の部屋に分かれるタイプなので、その場所にいるのは当然俺たちだけだ。

 まあ、今日は元々ここに宿泊している俺たち以外――

「あ、弥衣さん。到着したんですね」

「朝食に間に合ってよかった」

「うん……。どれもおいしそう……だし、ね」

 なんて事を口にしてきた、紡、ミイ、霊体もいるが。

 

 なお、霊体は名前が決まっていないので霊体と呼んでいるが、俺の術式によって以前のかりんに近い状態になっているので、以前のかりんと同様に、食事を摂る事が可能だったりする。

 無論、摂らなくても問題はないのだが、折角食べられるようになったのなら……という事らしい。


 ちなみに紡の方は、自宅――俺たちが新幹線から在来線に乗り換えた駅と、昨日の夜ちょっとだけ立ち寄った遺跡の間にあるらしい――から、わざわざ『始発で』ここまで来ていたりする。

 というのも――


「うん。凄くおいしそう……。でもこれ、こっちの方の料理じゃなくて、私の住んでいる辺りの料理……じゃ? もしかして、わざわざ?」

 思考の途中で、そんな事を口にする弥衣。


 今、弥衣や俺たちの目の前にあるのは、肉やらきのこやら野菜やらが入った汁の中に、更に煎餅――といっても米ではなく小麦粉で作られた物――が入っている一人分の大きさの鍋だ。

 煎餅を煮込むっていうのがちょっと面白い。


 そして、これこそが紡が朝早くから来ている理由でもある。


「あ、うん。まあなんというか……きっと長い間食べてなかっただろうなぁって思ってさ、それで前にそっちの方に住んでて、作り方に詳しい紡に手伝って貰って用意してみたんだけど……実は苦手だったりする?」

 不安げな表情で問う咲彩。紡も同じような表情だ。

 

 しかし、その心配は杞憂というもので――

「ううん、そんな事ない。むしろ好きな方。ありがとう、嬉しい。凄く……凄く」

 と、まさに口にした通り凄く嬉しそうな、しかしちょっと泣きそうな、そんな表情で返事をする弥衣だった。

というわけで(?)SCROLL2.5の始まりです。

まあ、後日談兼日常話みたいなものなので、そんなに長い話にはなりませんが。


といった所でまた次回! 

次の更新も平時通りの間隔となりまして……5月25日(木)の予定です!


なお、凄い余談ですが、この「小麦粉で作られた煎餅」は、汁に入れるだけではなく、カレーうどんのうどんの代わりにしたり、すき焼きに突っ込んだりしても美味しいと思います。

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