第130話 黒き影を穿つ槍
……セラたちの安全を考えるならば、一度この状態から距離を取りたい所だが、そんな余裕はなさそうだ。というか、そもそもそれをさせてくれないだろう。
となると、一気に叩き潰すしかないな。
まあ……『リッチ』や『ノーライフキング』と同等と考えるのなら、なんとかなるだろう。
俺は素早く思考を巡らせて結論を出すと、
「ブルルン、障壁と浮遊状態の維持を頼む! ――問題ないよな?」
と、ブルルンに問う。
多分、既に発動している魔法――構築済みの術式を維持するだけならば、俺経由で問題なく出来るはずだが、ふたつ同時というのはどうなのだろうか……?
そう思って問いかけたのだが……
「ブッルブッルブッルルゥーッ! 全然問題なしブルよぉー! 術式構築済みの物を維持するだけなら余裕ブッルゥ!」
などと、身体を前後に振って肯定を示しつつ返答してくるブルルン。
リアクションがオーバーだが、どうやら問題はないようだ。
「よし、それなら任せた!」
「任せるブルゥー!」
ブルルンの返事を聞くと同時に、俺はセラたちに付与している魔法の維持を放棄。
自身の飛翔魔法のみを操って、アンデッドに向かって急降下するように突っ込む。
「ルゥヲヲヲヲヲヲヲヲヲッ!!」
昏い咆哮と共に、自身の周囲に人の形をした黒い靄を大量に生み出すアンデッド。
更に良く見ると、どの黒い靄も同じく靄で出来た剣や槍、斧といった武器を手にしていた。
これは……数でこちらを圧倒しようと考えている感じか……?
そう推測した直後、人型の靄が一斉に跳躍。
俺に向かって、まさに文字通り飛びかかってくる。
こいつら……あの空間内に巣食っていたザコアンデッドどもに似ているな。
あれも剣やら槍やら斧やらを手にして襲いかかってきたし……
案外、これがあいつらの核――本体みたいなものだったりするのかも……な。
そんな事を考えつつ、俺は咲彩が空中戦で投げまくっていた光の槍を放った。
もっとも――
「なんだか凄い事になってるー!?」
「槍……。大量すぎ……!」
そんなセラと霊体の声が聞こえてきた通り、咲彩のように1本1本投げていては面倒なので、まとめて100本ほど周囲に生み出し、そのまま飛びかかってくる靄の方へと放った感じだが。
弾幕と化した光の槍が飛びかかってくる人形の靄を片っ端から粉砕。
……どころか、貫通してそのままアンデッドにも襲いかかっていた。
……この靄、思ったよりも耐久力ないな。
『ノーライフキング』が大量に呼び寄せて放ってきた悪霊――正確には幽霊的な存在ではなく、怨念体と呼ばれる強い意思……というか憎悪に満ちた残留思念の塊みたいなものだが――とかは、光の槍1本じゃ1体しか倒せなかったんだがなぁ……
『ノーライフキング』の放ってきたそれと比べると、こちらの方が圧倒的に数が多いものの、あっさりと貫通出来てしまう光の槍の前ではあまり意味がないというものだ。
数で圧倒するという思考は間違っていないが、耐久力のなさが仇となったな。
などと心の中でアンデッドの取った方法を批評しながら、更に降下。
さすがに複数の靄を粉砕して威力の弱まった光の槍ではアンデッドには大したダメージを与えられていないようで、
「ヲヲ……ヲヲヲ……ヲヲヲヲヲヲ……!」
などという怨嗟の声を発する程度であった。
だが、それならそれで更に攻撃を仕掛ければ良いだけというものだ。
なんだか妙な感じにのサブタイトルですが、他に思いつかなかったもので……
とまあそれはそれとして、この先へ進むとどうにも区切れる場所がなさそうなので、再び想定よりも手前で一度区切りました。
残りの部分に関しましては、既に動き始めているので、更新の方も明日……といければ良かったのですが、GWの都合でちょっと難しく……明後日5月2日に可能そうな感じです!




