第127話 ミイと天球儀と呪符
紙製だという事に驚きつつ、空いた穴から中を覗いてみると、細い木の骨組みとなにやら複雑な紋様――いや、紋様のような文字がびっしりと記されているのが見えた。
その記されている文字を良く見てみると、数文字ごとに文字と文字の合間に薄っすらと繋ぎ目のようなものがあった。
これは……小さな紙を繋ぎ合わせている……?
……って。そうか……これは呪符だ。
かりんの呪符で見た事のある形状の文字がそこかしこに見受けられるし、間違いないだろう。
つまりこの天球儀は、細い木を組み合わせて作られた骨格の上に、呪符を繋ぎ合わせて作られた大きな紙を貼っているというわけか……
なんというか、障子とか和傘みたいな感じの作りだな。
しかし……そうなるとこれは、かりんのような符術を使える人間が作った……という事になるな……
と、そんな事を考えていると、なにやら天球儀から『ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲー!』という、昏く底冷えのする声のようなものを響かせながら、黒いガスが勢いよく真上へと噴出し始めた。
「何かが噴き出した……よ?」
「う、うーん。なんだか気持ち悪いぃー」
そんな事を口にした霊体とセラに対して、ブルルンが交互に見ながら、
「触れても問題はないと思うブルけど、敢えて触れるようなものではないブルねー」
と、告げる。
「あのウニョーンよりも気持ち悪いしー、さすがに触れないよー。ギュムーッ!」
「ギュムブルゥ!」
心外そうな表情でギュッとブルルンを抱え込むセラに対し、ブルルンが驚きとも喜びとも取れるような、何とも言い難い表情でそんな声を発する。
うーん……。どちらかというと、なんだかちょっと嬉しそうに感じるが……良く分からん。
「うん……。ちょっと触れたくない。……というか、何……これ。毒じゃない……んだよ……ね?」
頷きながらそう問いの言葉を投げかける霊体に、
「ブッル。もちろん毒ではないブルよ。このガスのようなものは、負のアストラルの一種ブルね。この天球儀の中には呪詛や怨念といったものが、術式の一部として封じ込められていたブル。でも、ご主人が文字通り術式を『破った』事で、その『封じ込めておく力』が失われたブルよ。その結果、こういう形で放出、そして霧散している……というわけブルね」
と、そんな風に説明するブルルン。
「なるほど……。理解した」
霊体が納得顔で頷きながらそう返事をした所で、セラが小首を傾げながら、
「……あれ? それってつまり……」
と呟くように言いつつ、ミイの方を見た。
そう……。セラはミイの拘束も解除されるのではなかろうか? と思ったわけだ。
そして、予想通りというべきか、唐突に浮遊状態になっていたミイが落下。
ミイは一瞬驚いた表情をするも、すぐに下を向き、床に手を付くような形で上手く着地してみせた。
「こんなに簡単に破壊するなんて、思わなかった……。想定外」
俺を見上げながらそんな風に言ってくるミイに対して、
「まあなんというか……。こんなにもあっさりと壊れるというのは、俺にとっても少しばかり想定外だったぞ……」
と、肩をすくめながら返事をする俺。
そしてそのまま周囲を見回しながら、
「とりあえず……ここまでは問題なかったが、割と無茶な方法をとったからな……。術式の崩壊、あるいは魔法の暴走といった現象が起きる可能性もゼロとは言い難い。もしそういった現象が起きたとしても安全な場所へ――時計塔の外へ避難するとしようか」
と、そんな風に告げた。
ちょっと付け加えるだけだと微妙だったので、若干内容を圧縮して外に出る(ミイとの合流が完了する)所まで一気に描写する形にしましたが、微妙に会話の流れが気になるというかなんというか……
もしかしたら、後で再調整するかもしれません……
とまあそんな所でまた次回! 次の更新は平時通りの間隔となりまして……4月25日(火)を予定しています!




