第115話 魔法陣と黒きモノ
「空を飛べる化け物は少ない?」
「そうみたいだな。この感じだと一番最初に障壁が壊れそうだ。少し抑えて下の援護をするとしよう」
周囲を見回しながら問いかけてくる弥衣に、俺がそう返すと、
「了解。……と言っても、舞奈や咲彩の所は問題なさそう。かりんたちの所を援護する」
なんて言いながら、かりんたちに迫るアンデッドを銃撃していく弥衣。
……たしかに舞奈たちの方は、纏めて薙ぎ倒していってるからあまり問題なさそうだな……
逆に、紘都も紡もかりんも高威力の攻撃手段は持っているものの、広範囲を薙ぎ払うような攻撃手段はほとんど使えない事もあり、一度の攻撃で倒せる数が少なく、どうしても迎撃に割かれる時間が長い。
一度に出てくる敵の数が多いものの、どれも脆い……一撃で倒せるような奴らばかりだから、威力の高い攻撃よりも、広範囲の攻撃の方が殲滅のスピードがどうしても早くなるというもので、こればかりは仕方がないな。
唯一、鈴花が纏めて吹き飛ばせるが、さすがにひとりでは限界があるというものだ。
というわけで、紘都たちの方へ上から援護攻撃をしつつ、障壁にも攻撃を加えていく俺と弥衣。
無論、空を飛ぶ化け物も迫ってきたら迎撃するが、弥衣が言った通り個体数が少ない為、正直脅威度は全くない。
「ブルルッ! ご主人、その障壁砕ける寸前ブルッ!」
「おっと、それじゃあ少し待つか。他はどうだ?」
「舞奈たちの所もかりんたちの所も、大体同じくらいブルね」
そんな風にブルルンが言った直後、一際大きい靄が視界に入った。
「ボス?」
「そんな所かもしれないな」
首を傾げながら問いかけてくる弥衣にそう答えた所で、靄が爆発し、骨の翼を持つ竜が姿を現した。
「骨の飛竜ブルッ!」
「というか、飛竜のアンデッドだな」
「スカスカで銃が効きづらい……」
先手必勝とばかりに形代での一斉射撃を実行した弥衣が、そう言って首を横に振る。
まあたしかにスケルトンタイプのアンデッドは、向こうの世界でも矢や槍みたいな『刺さる』攻撃に対してはめっぽう強かったしなぁ……
なんて事を思いつつ、
「ああいうのは接触面積の広い武器や魔法で攻撃する方が楽だ」
と弥衣に対して言いつつ、俺は紫のオーラを帯びた黒い球体を生み出すと、それを勢いよく放り投げた。
それを回避しようと飛竜のアンデッドが翼をはためかせる。
が、その程度では逃げられはしない。
「ゴアァァアァアァァアァァァァアァアアァッ!」
苦悶の叫びなのか怨嗟の叫びなのか良く分からない咆哮と共に黒い球体に激突された飛竜のアンデッドがバラバラに砕け散りながら消し飛んでいく。
「一撃で粉砕するとか、さすがご主人ブル!」
「……なんかあの飛竜、自分から黒い球体に突っ込んだような?」
と、ブルルンに続く形でそんな疑問を口にする弥衣。おや、よく見ているな。
「ああ、今のは球体状に圧縮した重力塊で近くのものを引き寄せ、粉砕する魔法だ。つまり、あいつは自ら突っ込んでいったんじゃなくて、逃げようとしたが引き寄せられたって感じだな」
「闇の魔法かと思ったら、重力の魔法だった……!」
俺の説明を聞いた弥衣が、そんな驚き方をした所で、
「ブルッ! 舞奈の所の障壁が砕けるブル! っとと、かりんの所も砕けるブルね!」
なんて告げてくるブルルン。おっと、もうか。
「――壊す」
俺よりも先に弥衣が動き、銃から剣や斧やハンマーに持ち替えた形代の群れが、一斉に障壁へと殴りかかる。
と、次の瞬間、パリィィンというガラスが砕けたかのような音が響き渡る。
そして、それを皮切りにするかの如く、連続して同じ音が響き渡った。
「全部砕けたブルッ!」
「これはまた見事なまでに完璧なタイミングだな……」
下を見ながらそう俺がつぶやいた直後、
「そのまま魔法陣を破壊するブルよーッ!!」
と、号令をかけるブルルン。
『了解っ!』
下から一斉にそんな声が返ってきたかと思うと、皆が一斉に魔法陣へと攻撃を集中させるのが見えた。
……っとと、下の様子を眺めている場合じゃないな。俺の方も破壊しないと。
その刹那――
『オオオオオノノノオオオオオレレレェェェェェ』
なんていう複数の――老若男女様々な声が入り混じったかのような、怨嗟の声のようなものが響き渡ったかと思うと、黒い手が一斉に外殻から伸びてくる。
と同時に、同じく外殻……いや、違う。
……この黒い月の内側全域に、俺たちの事を見つめる無数の『瞳』が現れた――
更新が予定よりも若干遅くなりました……
(投稿時間の設定がズレていた為、手動で更新しました…… orz)
さて、なにやら現れましたが……? といった所でまた次回!
(交戦中な事もあり、ギャグっぽい要素を入れられないのが最近の困りどころです……)
次の更新も、平時通りの間隔となりまして……3月25日(土)の更新を予定しています!
※追記
誤字脱字を修正しました。
やや分かりづらい描写になっていた箇所を補完しました。




