第26話 舞奈への説明と舞奈の隠し事
俺の使った魔法の効果はまだ発揮されており、舞奈はボーッとしていた。
すまん、と心の中で呟きつつ、速やかにかかっている魔法を解除してやると、
「――成伯さんは一体何をしたのですか?」
と、何事もなかったかのように先程の続きの言葉を紡ぐ舞奈。
「……わかった、説明しよう。だけどその代わり1つ約束して欲しい。今から話す事を誰か他の人に言いふらしたりしないで貰いたいんだ」
「私、こう見えて隠し事が得意なんですよ? ……なので、敢えて『隠している事』をこの場で言わせて貰います」
なんだ? どういう事だ? と、そう思っていると、舞奈が言葉を続けてくる。
「……昨日の夜、私の父からメッセージがあり、今日新しく編入される生徒――成伯さんの事ですね――には何か秘密があるはずだから、それとなく聞き出すなり調べるなりして欲しいと私に言ってきました」
俺の言葉にそんな事を返してくる舞奈。……って、マジかよ!?
あ、いや、まてよ……?
「――朝、あのタイミングで話しかけて来たのは『そういう事』か?」
「あ、いえ、半分はそうですが、半分は偶然です。成伯さんの容姿は、父からメッセージと一緒に送られてきた写真で前も後ろも確認済みだった事もあり、前を走っているのが成伯さんだというのは、遠目からでも分かったので……」
俺の問いかけにそう返してくる舞奈。
「なるほど……月城家が厄介だと言っていたのはこういう事か……」
それにしても、一体どうやって掴んだというのやら……って感じだな。しかも、写真まで撮影しているし――
ただ……『何か秘密があるはず』という所までで止まっている事から考えるに、秘匿されている情報を何らかの手段で得はしたものの、俺という人物がどういう存在であるかまでは掴めていない、といった所なのだろう。
にしても、舞奈も良く写真だけで前を走るのが俺だと確定出来たものだ。しかも、遠目からでも分かったとか言っていたし。
……まさか、桜満の言っていた月城家の『力』というのは、権力的なものではなく、本当の意味での『力』――異能的な物の事を言っていたのだろうか……?
……まあ、とりあえずそこは置いておくとして――
「――だが、それならここで話してしまっても問題はなさそうだな。むしろ、月城に話しておいた方が都合がよさそうだ」
桜満が何かするようだったが、今の話も伝えておいた方がいいな……
「はい。私が情報を得ないと、父が他の者を……もっと情報を聞き出す能力に長けた者を、送り込んでくるだけだと思います」
「ま、そうだろうなぁ……。――説明するついでに、どうやって学校からここへ先に戻ってきたのか、それについて実際に見せようと思うんだが……どこか人が絶対に来なさそうな場所は……」
俺の部屋に呼ぶのが一番早いのだが、それは正直ちょっと言いづらい。
そう思っていると、
「それでしたら、成伯さんの部屋で良いのでは?」
などと、舞奈の方から言ってきた。
なんという無防備っぷり!
俺が自転車で送ると言った時に断ったのは、送り狼を警戒したわけではなかった、という事か……。多分、恥ずかしかっただけだな……
ある意味こういう所も貴族令嬢に似ているなぁ……。いやまあ、名家の娘であるようなので、似たようなものなのかもしれないが。
「いや、うん、まあそれでもいいけど……」
どうしたものかと思い曖昧にそう答えると、舞奈はその意図を勘違いしたらしく、
「ああ、引っ越してきたばかりなんでしたっけ? 部屋の中が片付いていない感じですかね? それでしたら私の部屋に来てください。一人暮らしですが、掃除はバッチリしているので大丈夫ですよ!」
などという、強烈な威力を誇る魔法剣で突き刺してきた!
……いや、本当に魔法剣を突き刺してきたわけではもちろんないが、言葉でそんな気分にさせられたのだ。
ホント、サラッととんでもない事を言うなっ!?
今日は2話の予定だったのですが、どうにも区切りが悪いのでもう1話いきます!




