第109話 式神の力
「式神って言うと、もうちょっとこう……人や動物そのものみたいな姿形をイメージしてたけど、それとは大分違うね」
「さっきも言った通り、私自身はこの手の術って使えないのよね。だから術式が不完全だったかもしれないわ」
かりんが咲彩の言葉に対し、肩をすくめてため息混じりにそう返す。
それを聞いた弥衣が頷きつつ、
「……たしかに思っていたのと少し違う。せめて人形だったら……と思わなくもない。けど、これはこれで独特感があってイイ。戦いにも問題なく使えるし……」
なんて事を呟くように言った。
「そうなのか?」
「ええ、そうね。思念や霊力によってある程度形を変えたり、形代を起点に、短時間ではあるけれど何かを具現化――生成したりする事が出来るわ」
俺の問いかけに対し、かりんがそう説明した所で、
「こんな感じ……」
と言って、人の形をした紙――形代といったか――を、動かす弥衣。
と、次の瞬間、その形代の手の部分に突如としてナイフ程度の大きさの剣やら槍やら斧やらが出現。
そして、まるで形代の手がそれらを握って操っているかの如き動きで、一斉に振るわれた。
「ほぉ……。ひとつひとつの武器は小せぇけど、この数で一斉に攻撃されたら、かなりやべぇな」
「銃を持たせれば、一斉射撃とかも出来る……」
感嘆の声を発した雅樹に対し、弥衣がそんな事を補足するように言う。
「なるほど……。たしかにこれは戦いに使えるな」
頷いてみせた俺に、
「更にこういう事も可能」
なんて事を告げ、形代を自分の周囲に纏わりつかせる弥衣。
するとその直後、弥衣の身体が浮き上がり、そのまま空中を動き始めた。
こんな事も出来るのか……
「これは形代を浮かせている力の一部を弥衣に回している感じね。1体の形代の力だけじゃ無理だけど、これだけの数の力が集まれば、弥衣ひとりくらいなら簡単に浮かせる事が出来るようになる……という事みたいね」
「お、おお……。これこそ、まさに数の力……」
かりんの説明を聞きながら、弥衣の方を見てそんな事を呟く霊体。
……そういえば、霊体の資質を調べていなかったな……
ああでも、ミイの分身体みたいなものだから、霊体の方を調べても無意味か。
かと言って、ミイの方は今の状態だと調べるのが難しそうだし……
まあ、ここは一旦置いとくか。
そんな事を考えていると、いつのまにか霊体が空中に浮いている弥衣のもとへと近づき、
「……この形代、一体どうなって――」
なんて事を言いながら形代に触れた。
と、その直後、
「るぎぃぃいいぃぃぃいいいぃぃっ!?」
という霊体の苦悶の叫びが響き渡った。
そして、それとほぼ同時に弥衣を浮かせていた力が消滅。
『うぎゅうっ!?』
落下して素っ頓狂な声を上げた。
……今、声が複数重なったような……と思い、弥衣の落下した方を良く見てみる。
すると、セラが弥衣に押し潰されていた。
「って! だ、大丈夫か!?」
慌てて俺が駆け寄った所で、ふたりの間に何かが挟まっているのが見えた。
うん? なんだ? 何が挟まっているんだ……?
改めて目を凝らしてみると、それは凹の形になっているブルルンだった。
どうやら、ふたりの間に滑り込んだらしい。
「どーいーてー」
「ブッルゥ……。早く退くブルゥ……」
と、呻くセラとブルルンに、
「ご、ごめんなさい……!」
と謝りながら慌てて退く弥衣。
見た感じ、ブルルンのフカフカヌイグルミパワーで、セラも弥衣も大した事はなさそうだった。
ナイスだ! ブルルン!
このままいくとかなり長くなってしまいそうだったので、一旦ここで区切りました……
ほぼ出来ているので明日……と思ったのですが、そうすると所用の都合で、その次までの間が空いてしまう為、空きを減らすために、明後日更新とさせていただきます。
とまあそんな所でまた次回! そして、上で記載いたしました通り、次の更新は……明後日3月9日(木)を予定しています!




