第101話 錬金術師と魂の欠片
「おお、錬金術……。金や賢者の石が作れる?」
なんて事を唐突に言い出す弥衣。
「いえ、残念ながらあの錬金術では作れませんね。霊薬も爆弾もちょっと無理です」
「武具も作れない?」
「作れませんね。というか……そんな万能な錬金術は、冒険者じみたアトリエ持ちの人間にしか、多分扱えませんね」
「残念……。なら錬成――」
そんな会話を舞奈と弥衣が続ける横で、錬金術師という言葉を呟いていた亜里沙が、
「まさか、ここでその名が出てくるとはね……」
と、ため息交じりに呟いた。まさに俺と同じ思いだ。
「それで……。その錬金術師が天球儀を?」
「そう。カナのお父さんから『費用』を受け取って時計塔と一緒に作った」
俺の問いかけにそう答えるミイ。
「こう言ってはなんだけど……山奥の村にしては随分とお金があったようだね? 何か利益率の高い産業があったのかい?」
顎に手を当てながらそんな問いの言葉を投げかけた亜里沙に対し、ミイは首を横に振ってから、
「あの村にそんなものはない……。というか……『費用』はお金で出したわけじゃない。山で幾つか発見された赤い結晶石……。魔術や錬金術に関わる者であれば、どんな高値であっても手に入れたがるとかいうその石を、錬金術師はお金の代わりに受け取った……」
と、告げた。
……って、待て待て。赤い……結晶石?
「その赤い結晶石……とやらは、一体どういう感じの代物なんだ?」
「――もしかして、こんな感じだったりするのだろうか?」
俺の問いかけに続く形で、スマホの画面をミイに見せる亜里沙。
そこには、例の錬金術によって精製された破壊の化身――その『魂の欠片』を結晶化した代物の写真が映し出されていた。
そして、それを見たミイが、
「そう。そんな感じだった」
なんて、サラッと返してくる。
マジか……。錬金術師に続いてこいつまでこんな所で出てくるとは……
いや……錬金術師の存在が出てきた時点で、こいつが出てきてもおかしくはない話か……
「賢者の石……?」
「いえ、全然違います。これはもっと物騒で危険な代物です」
再びの弥衣の疑問にそう舞奈が返した所で、
「それって、破壊の化身……とかいう奴の魂の一部みたいなもの……なんだっけ?」
「ああ、そういや宿で透真から聞いた説明の中に、そんなのがあったな」
と、咲彩と雅樹が口にしつつ俺の方を見てくる。
「そうだ。その通りだ。こいつは破壊の化身という強大な存在の魂――その欠片だ」
俺がそんな風に説明すると、
「まあ……欠片といっても、人間を異形の魔物へと変貌させたり、自身の魂を移し替える為の肉体を生み出す事が出来たりと、なかなかにとんでもない力を持っているけど……ね」
と、付け加えるように言うかりん。
かりんの発言を聞いた咲彩が、
「異形への変貌ねぇ……。ちゃんと元に戻れるんなら、変身ヒーロー的な感じの使い方も出来たりするのかなぁ?」
なんて事を呟いた。
……その発想はなかったな。
たしかに、状況次第ではあるが完全な一方通行ではないからなぁ……
方法によってはそういう手段も……
……いや、やっぱり駄目だ。
『戻らなくなってしまう』リスクや、『生命力を消耗しすぎる』リスクがありすぎる。
そんな事を考えていると、
「異形……。変貌……? 学校で階段から落ちそうになった時に……?」
という鈴花の呟きが耳に届く。
しかしその直後、その呟きを遮るかの如く、雅樹が少し声を大にして口を開く。
「――咲彩の場合は、変身ヒーローじゃなくて怪人になりそうだけどな」
「なんでさ!?」
当然の如く、雅樹の言葉に憤慨する咲彩。
しかしそんな咲彩に対し、雅樹は肩をすくめてみせながら、
「ブンブン飛び回ってチクチク襲いかかるだろ? どう考えても羽虫系怪人じゃねぇか」
なんて返す。
「ぐぬぅ……! それなら雅樹は怪人アイアンクローだよ!」
「おう、それはそれで格好いいな」
「ぐぬぬぬぬぬぅっ!」
更に憤慨する咲彩を見ながら、
「相変わらず仲が良いねぇ。僕たちもああいうのやってみる?」
などと鈴花に声をかける紘都。
「う、うーん……。あれはちょっと真似出来そうにないかなぁ……」
と、頬を掻きながら返す鈴花。
……雅樹の奴、強引に鈴花の思考を変えたな……
というか……言うべきか迷って、まだ話していなかったが……雅樹も紘都も、何気に『あの件について』気づいていそうな感じだ。
近い内に、あの件の真実も話さないと駄目な気がするなぁ……これは。
ようやく出て来た感がありますが、章(SCROLL2)としてはもう終盤なので、今回は割とあっさりめな登場だったりします。
といった所でまた次回! 次の更新は、明後日2月19日(日)を予定しています!




