第24話 疑惑の舞奈
残念ながら、最寄りのスーパーやコンビニの場所は把握しているが、一度も行っていないので『印』は刻んでいない。
というか……どちらも人が多そうなので、印を刻むのに良い場所があるのどうか、という点がまず怪しいのだが。
とまあそういうわけで、俺は買い物に行く為に、玄関からマンションの廊下へと出る。
ちなみにこのマンション、内廊下タイプなのだが、廊下も冷暖房完備、換気も完璧……と、内廊下にありがちなデメリットがまったくなかったりする……らしい。
らしい、というのはマンションという名の集合住宅に住む経験自体が、俺にとっては始めてだからだ。
こういうタイプの家――集合住宅自体は向こうの世界にもあったのだが、ここまでの高層建築はなかったので、なんとも新鮮な感じだ。
エレベーターというのも実に便利だしな。
なんて事を考えている間にやってきたエレベーターに乗り、スマホの地図アプリとやらを起動する。スーパーとコンビニのどちらへ行くか迷ったからだ。
……距離的にはコンビニの方が近い、か。
だが、品数はスーパーの方が圧倒的に多いんだったよな。
ふむ……。ここは今後の事も考えて品数の多いスーパーへ行くか。
と、結論を出した所で、ピロンッ! という1階に到着した事を示す音が鳴る。
そして、エレベーターの扉が開かれ――
「……成伯さん?」
という舞奈の声が聞こえて来た。
……ん?
「月城? どうしてここに?」
何故かそこに居た舞奈に問いかける俺。
「それはこちらのセリフですよ。私、ここに住んでいますし……」
「え? そうなのか? 俺もここに住んでいるんだ。まあ、昨日引っ越してきたばかりだけどな」
「そ、そうだったのですか!? そ、それはさすがに予想外です……」
舞奈はそう驚いた後、ふと何かに気付いたような表情を見せたかと思うと、
「……というか、成伯さん。どうして私よりも先に? 徒歩……でしたよね?」
と、そう言って凄く訝しげな目でこちらを見てきた。
……あ、まずい。そう言えばそうだ。
どう考えても、自転車より先に辿り着くわけがないじゃないか……
「思えば、朝の、あの塀を自転車で飛び越える事からして、既におかしかったんですよね。普通に考えて、あんな事出来るわけがないですし……」
「そ、そう……か?」
「ええ。普通の人には無理です。……普通ではない『何か』を使わなければ、あの塀を自転車で飛び越えるなんてのは不可能です。そして、私より先にここへ辿り着く事も不可能です。それと――」
それはもう次々と的確な言葉を紡ぎ、こちらの逃げ道を塞いでくる舞奈。
……桜満、悪い……。いきなりトラブル発生だ。
なおも言葉を紡ぎ続けている舞奈に対し、俺は「すまん」と心の中で言い、魔法を発動させた――
舞奈に何か魔法を使ったようですが……?
という所で、また明日!
……明日は日を跨ぐ前に更新したいと思います……




