第89話 光の咲彩と封印の仕掛け
「こんのぉぉぉっ!」
咲彩はそんな怒りの混じった声を発すると、再度光球になってデカブツの眼前へと移動。
目の前に現れた咲彩に気づいたデカブツが、「オオオオォォンンンッ!」という咆哮と共に掴みかかる。
当然、咲彩はそれを光球で回避。
デカブツはそれを追うように連続で攻撃を仕掛けていくも、右へ左へと瞬時に移動する咲彩に対して一発も当たる事はなく、むしろ咲彩からの隙を突いた反撃を食らって逆にダメージを食らっていくような状態だった。
「これって……図書室から飛び降りる際に見えた、雅樹さん相手にやっていた動きでは……?」
「ああ、たしかにそうだな。まさかここでこんな使い方をするとは……」
首を傾げながら問いの言葉を発した紡に対し、頷きながらそう答える俺。
そんな会話をしている間にも、デカブツは咲彩の動きに対してまったく反応出来ず、一方的に光の剣によって斬り刻まれていく。
そして、ダメージの蓄積によってデカブツの動きが明らかに鈍くなった瞬間、
「これで……終わりっ!」
と言い放ち、頭上へと移動した後、そこからデカブツの頭に――いや、眉間に向かって落下しつつ剣を勢いよく突き刺す咲彩。
「グガアアァァァアァァァアァァッ!!」
デカブツの叫び声が響き渡り、目の光が消えると共にズシンという重い音を響かせ、デカブツは地面に倒れ伏した。
「うわわっ!?」
倒れ伏すデカブツによってバランスを崩した咲彩が、慌てて光球になってその場から離脱。しかしバランスを崩したままの移動なので……
「あいたぁっ!?」
思いっきり尻餅をつく形となった。
そしてその様子を見ていた弥衣と紡が、やれやれと言わんばかりの表情で、
「やっぱりしまらない……」
「まあ……咲彩ちゃんですからね……」
と、そんな風に言うと、
「でも、あのトドメの刺し方はカッコイイと思いました。マンガとかアニメとかゲームとかでたまに見ますよね、ああいうの。私も武器の魔法が使えればやってみたいものです」
なんて感想を舞奈が口にした。
カッコイイ……のか? 向こうの世界でも剣や槍をメインに使う連中がデカブツ相手によくやっていたが、カッコイイという感想を抱いた奴はいなかった気がするな……
などと、昔の事を思い出していると、
「貴方、さっき私の突き刺した槍に無駄に蹴りを入れて更に深く押し込むとかいう無駄にカッコイイ事したじゃない……」
と、いつの間にか現れたかりんが呟くように言った。
無駄って……。いやまあ、たしかにあまり意味のある行為だとは思えないが……
「無駄が余計です! しかも2回! 絶対にカッコイイと思ってませんよね、それ!」
そんな抗議の言葉を返す舞奈をあしらいつつ、俺の方へと歩み寄り、
「――透真、時計塔の入口の封印術式だけど、入口の近くに怪しい台座があったわ。何かを置かないと駄目っぽいわ」
という報告をしてくるかりん。
「なんだか、ホラーアドベンチャーとかRPGとかにありそうな仕掛けだね、それ」
咲彩の言葉に対し、顎に手を当てながら「たしかにそうですね……」と同意して頷く舞奈。
「今度はそこに置く物を探すのか? 面倒だな……。壊しちまえばいいんじゃねぇか?」
「私もそう思ったけど、攻撃を加えると罠が発動するっぽいってブルルンが言うのよね」
雅樹に対し、かりんがそう返事をして肩をすくめて見せると、
「その通りブル! 何の罠かまでは不明ブルけど、攻撃に反応して発動する罠の術式が仕組まれてるのは視えたブルッ!」
と、短い前足の右側だけをビシッと上に伸ばして告げてくるブルルン。
「なるほど……。罠か……」
腕を組みながらそう返すと、弥衣が首を傾げながら問いかけてくる。
「どうする感じ?」
「うーん……そうだな……。転移罠とかだと手出しするのは危険だが……大した事のない罠であれば、その罠もろとも壊してしまうというのもひとつの手ではあるな……」
思考を巡らせながらそんな風に答えると、
「転移はたしかに危険ですね。『いしのなかにいる!』なんて事になったら、もうどうにもなりませんし」
「あ、先に言われた!」
なんて事を口にする舞奈と咲彩。
……ここはダンジョンじゃないぞ……と思いつつも、ふたりの会話はスルーし、
「まあ……とりあえず見てみるか」
と、かりんに告げた。
なんだか妙な感じのサブタイトルになってしまった気が……
ま、まあ、それはそれとしてまた次回!
次の更新は平時通りの間隔となりまして、1月22日(日)を予定しています!




