第81話 蘇生した少女
「あれ? この子って……あの時の?」
「ああ。俺たちが校舎内に入った直後に、上から落ちてきて死んだ奴だな」
咲彩と雅樹がそんな風に言った通り、それは上から落ちてきた――というか、化け物に落とされたと考えるべきだろう――少女だった。
「だよね。って、そう言えば……この子の制服って、どこのだろう?」
「うーん……。割とどこにでもあるセーラー服なので、見ただけでは何とも言えないですね……」
咲彩の問いかけにそう返し、揃って考え込むふたり。
そんなふたりに、
「まあ、目が覚めたら直接聞けばいいだろう」
と返し、少女の方を見る俺。
うーん……。生命力のようなものは感じられるが……なんというか……こう、魂が肉体に縛り付けられているような感覚があるな……
……それはある意味、魂をその身体に無理矢理繋ぎ止めている状態である舞奈に近いものだ。
俺と同じような事を考え、そして俺以上に大規模な……しかし醜悪な構造の術式を実行した奴がいる……という事だろうか。
道具や儀式を必要するような大掛かりな物が多いのが、この世界の術式の特徴ではあるが、これはその中でも特に大掛かりだな……
というか……この術式を構築した奴は、ここまでの事をして一体何をしようというんだ……? 相変わらずそこら辺がさっぱりだな……
と、そんな事を考えていると、「う、うぅ……ん」という声が聞こえ、少女が目を開ける。
「あ、気が付きましたか」
そう紡が問いかけると、
「あ……。たしか、この前出会った……?」
と返事をする少女。
「はい、そうです。朝霧紡です。私たちがちょうどここに来た所に現れたのは、こう言ってはなんですが、不幸中の幸いでした。……化け物に殺されたんですか?」
「……今、殺されたから……。花子さんみたいなのが……急に壁から現れて……驚いて逃げたら……上から降ってきた怪物に……真っ二つにされた……」
紡の問いかけに対してそんな風に告げる少女。
……それって、あの霊体の事だよな……多分。直接的な死因ではないけど、なんだかすまない……って気分になるぞ……
と思っていると、少女が俺たちを見回し、
「あなたたちは……?」
というもっともな疑問を口にした。
「俺たちは、『ここ』を調べる為に外から敢えて踏み込んできたんだ」
「んで、あの化け物どもをぶちのめしながら探索して、こうして助けられそうな人間が近くに居れば助けに行く……って感じだな」
「そうそう。そんなわけだからもう安心していいよ! ボクたちがこれ以上、君を死なせはしないから!」
俺、雅樹、そして咲彩がそんな風に答えると、少女は驚きと困惑、そして僅かな希望が混ざりあったような、何とも言えない表情と声で、
「え? ほ、本当……に? 本当に……助けに来た……?」
と、紡に向かって問いかけた。
「はい、本当です。実際、私も化け物たちの集団に追いかけられている所を、助けて貰いましたし。それはもう、あっという間に化け物たちを吹き飛ばして!」
などと、ちょっと興奮気味に返事をする紡。
うんまあ……たしかに面倒だったから、一気に吹き飛ばしたな……
「凄い……。それなら……もう逃げる必要は……ない? 痛いのも……死ぬのも……ない?」
「そうですね。もう化け物に襲われても安心ですよ。皆さんが撃退してくれますから」
少女の新たな問いかけに対して紡がそう答えると、
「……う」
とだけ返す少女。……う?
「……う?」
俺と同じく、意味が分からなかったらしい紡が首を傾げた直後、
「うわぁああぁぁあぁぁあぁぁああぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁんんっ!」
と、紡に抱きついて泣き出した。
堰を切ったように……という表現があるが、まさにそんな感じだ。
まあ……今まで色々あったんだろうな……
詳しい話を聞きたい所ではあるが……今は落ち着くのを待つとしよう。
またもや想定よりも長くなってしまったので、一旦ここで区切りました……
(実は区切りが悪かったので、ちょっと構成を変更して少しはマシな感じになるように調整していたりします)
残りの分も出来ているのですが……年始に予定が詰まっていて、4~5日程更新が空いてしまう状況だったりする為、その間を埋める様な形で、1月2日(月)に更新しようと思います……!




