第78話 炎の魔法と血のプール
「光刃舞! 閃迅突! 瞬煌斬!」
そんな事を言い放ちながら、続けざまに3体の本棚のアンデッドを撃破する咲彩。
技の名前は良く分からんが、それ自体の威力は魔法を併用しているだけあって凄まじく、全て瞬殺であった。
「もう一発、瞬こ……って、あれ? もういない?」
周囲を見回してそんな風に言う咲彩に、
「残りは透真が炎の竜巻で燃やし尽くしたぞ」
と告げる雅樹。
「あの魔法強すぎだよ! もう少しエモノを残しておいて欲しかった……」
「残しておけって言われてもなぁ……」
肩を落としながら言ってくる咲彩に対してそう返すと、
「っていうか、雅樹の時も思ったけど、炎の魔法で燃やしているのにあいつら以外には引火しないんだね」
なんていう、ある意味もっともな疑問を口にしてくる咲彩。
「ああ、引火する魔法と引火しない魔法ってのがあってな。今、俺が使ったのや、さっき雅樹が使ったのは、引火しない魔法だ。森の中でトレントのような植物の魔物を焼き払うのに普通の炎を生み出したりしたら大変な事になるからな。そういう特殊な炎を生み出す魔法が作られたんだよ」
「なるほどねぇ。でも、たしかにそうだよね。木の魔物を倒したら森もなくなった……とかシャレにならないし」
俺の説明を聞いた咲彩が、納得しながらそう言ってくる。
「……前にそのシャレにならない事態を引き起こしかけた奴がいたなぁ……。氷結魔法で凍らせたからいいが……」
「「その話、詳しく!」」
俺の呟きに食いついてくる咲彩と雅樹。息ピッタリだな……
「……今度、機会があればな。今ここで話すにはちょっと長い」
俺はため息交じりにそう言って首を横に振ってみせる。
……って、なんだか紡も関心がありますと言わんばかりの表情でこちらを見ているな……
「むう、残念。でもまあとりあえず今は、紡の仇は討てたって事でよしとしておこうかな」
「いやいや、勝手に殺さないでください……。たしかに一度殺されましたけどね?」
咲彩の発言にそんな突っ込みを返す紡。
最初は本棚のアンデッドに対する恐怖心があったようだが、いつの間にかなくなっているな。
ま、こんだけ大騒ぎすれば、さすがに恐怖もどこかに消し飛ぶか。
っと、それはそれとして……
「――ここで女子生徒と遭遇したという事は、ここまでやってきているという事になるな……。アンデッドどもが彷徨き回っている中、遠くからここまで来たとは思えないし、案外この近く……なのか?」
そんな風に口にしつつ、窓から外を見る俺。
……うん? プールがあるな……。まあ、水の代わりに血が溜まっているが……
だが……そっちよりも気になるのはコンクリートが使われている事だ。
この校舎とは、なんだか造られた時代が違うような気がするが……どういう事だ?
俺が思考を巡らせていると、横にやってきた雅樹がプールを見て顔をしかめる。
「うへぇ、ホラーモノの定番みてぇなプールがあんじゃねぇか……」
まあたしかにこの世界のホラーモノだと、ああいうの良く出てくるな。
なんて思った所で、続けてやってきた咲彩が
「あれ? あのプールの裏に薄っすら見えるのって煙突じゃない?」
と、そんな事を言った。……うん?
「煙突? どこらへんだ?」
「ほら、あそこだよ。あの物置みたいなのの右横、木の間」
首を傾げる俺に対し、人さし指で場所を示しながらそう説明してくる咲彩。
物置の右……木の間……。って、あ!
「なるほど……たしかに鉄製の煙突っぽいものがあるな。俺のイメージしていた煙突と全然違うから気づかなかった……。よく見つけたもんだ」
「これでも目は良い方だからね!」
「お前、コンタクトじゃねぇか……。どうせ強化魔法だろ?」
胸を張る咲彩に対し、肩をすくめながらそんな突っ込みを入れる雅樹。
「……むぅ。その通りだけど、少しは乗っかって褒めてくれてもいいと思うんだよ、ボクは」
「わー、すごいですねー、咲彩ちゃん……の魔法」
頬を膨らませる咲彩に、雅樹の代わりにそんな風に褒める紡。
う、うーん? これ……褒めている……んだよな?
……本人は至って真剣に褒めているっぽい表情だし……
でも、棒読みすぎるせいで、そうは見えないのがなぁ……
……2話に分けても収まりませんでした……ので、一旦区切りました。
次の話は当初予定していた話の溢れた部分と、元々次の話の予定だった部分が混ざった形になると思います。
とまあそんなこんなでまた次回! そして、その次の更新ですが……溢れた部分に関しては既に出来ている為、明後日(12月27日(火))にいけそうな感じです!




