第72話 咲彩と雅樹と大型アンデッド
「これはまた随分と派手にやってるなぁ……」
咲彩と雅樹の所へと辿り着いた俺は、そんな風に呟く。
というのも、既にアンデッドの群れと交戦状態であったからだ。
ただし、咲彩と雅樹が一方的にアンデッドの群れを叩き潰しているような、そんな圧倒的優勢な状況だが。
それにしてもこのふたり、異様に連携がいいな。
咲彩が前に踏み込むと雅樹が後方を薙ぎ払い、雅樹が前に踏み込むと咲彩が後方を薙ぎ払う……
そんな感じで、しばらく離れていたとは思えないくらいに息の合った動きで、アンデッドどもに攻撃する隙を全くと言って良い程与えていない。
まあ、これまでのふたりの言動や雰囲気からすると、当然と言えば当然な動きだと言えるかもしれないが。
もっとも……『それ』について口にしたら、全力で否定してきそうだが。
うーん……。予想通り……いや、予想を遥かに超えるレベルで、手助けの必要がなかった気がするな……これ。
だがまあ……そうは言っても、こうして追いかけて来た以上は、見ているだけというわけにもいくまい。
ふたりのあ――じゃなかった、連携を邪魔しない程度に援護を……と思った直後、ふたりの居る場所――その真上から強烈な邪気と殺気を感じた。
「――っ!? ふたりとも! 後ろに大きく飛べ!」
俺が声を大にしてそう呼びかけると、咲彩と雅樹は一瞬驚くも、すぐに後方へと跳躍した。
この反応の速さ……。俺が声をかけなかったとしても、おそらくギリギリで回避が間に合っていたような気がするな。
などと思った次の瞬間、ズドォンという激しい破砕音と共に天井が砕け散った。
「うおぉっ!?」
「ななぁっ!?」
驚くふたりの目の前――先程まで立っていた場所に、向こうの世界の豚と猪を混ぜた様な顔を持つ二足歩行の巨体の魔族――オークをゾンビ化させたような、そんな大型のアンデッドが、スクラップを集めて適当に固めたかの如き歪な形状をした巨大ハンマーを手に降ってくる。
そして、その勢い――というか、自身の重みとハンマーの両方によって、下にいたアンデッドが数体潰れた。
「な、なんかとんでもないのが振ってきた!?」
「おいおい、また随分とバカデケェ奴が現れたな……」
なんていう随分と違う反応をそれぞれ見せるふたりに対し、
「ふたりでも十分倒せると思うが……どうする? 先を急ぐのなら、こいつは俺が相手をしてもいいが……」
という問いの言葉を投げかける俺。
「まあ、先に行く事を考えたらその方がいいとは思うけど……でも、ボスくらい自力で倒したいかな」
「そうだな。デケェのが出てきたからって他人に任せて退くのはなんかちげぇわな。つか、そもそもそいつは俺の性に合わねぇ」
ふたりがそんな風に返してくる。
「ま、そう言うだろうとは思っていたけどな。――というわけで、強化だけしておこう。で、代わりに俺がこいつらが追いかけている『誰か』を先に探しに行く」
俺はそう告げてふたりを魔法で強化すると、自身にも隠蔽魔法を使った。
念の為、様子を見に来た俺だったが、ふたりは俺の想像以上の連携力と殲滅力だった為、俺自身の行動の方針を変更する事にしたのだ。
「あれ? 消えた?」
「ああなるほど。これで俺たちが奴――奴らを引き付ければ、透真はあそこをスルーして進めるっつーわけか」
「あ、そういう事! 納得したよ!」
雅樹の説明に納得したらしく、そう言いながら頷いて大型アンデッドへと視線を向ける咲彩。
そう……。以前、廃工場で黒野沢を追い詰めた時に使った方法と同じ方法でここを突破。
そして、アンデッドどもが追いかけている者を救出する。それが新たな俺の行動方針だ。
「――そういう事だ。ここは任せた」
俺がそう告げると、
「了解だ!」
「任せて!」
という了承の声を俺に返しつつ、大型アンデッドへと突撃するふたり。
自分から焚きつけるような事をしておいて何だが……よくもまあ、あんな大型の奴に臆すること無く突っ込めるものだ。
いや……アイツもそんな感じだったか……
前回記載した通り、今回の話は本来1話だったものを、長すぎる為2話に分割した形で、その前半部分となります。
というわけで(?)次の更新は明後日12月13日(火)を予定しています!
それと……第8話のラストに鈴花のイメージ絵を追加しました。
前の2人同様、AIベースで色々と修正したものです。
地味に今回は背景も修正しました……
どこを修正したのかは、1人分だと大した量でもないので、次の誰かを追加した時にでも纏めて活動報告に記載しようかと思います(需要があるかと言われると、疑問符をつけざるを得ない気はするのですが、まあ折角なので……)
次のイメージ絵の追加は、う、うーん……璃紗あたりになる……と思います。




