第70話 咲彩の思い
「なんでそんなテンション高いんだよ……」
ハイテンションな咲彩に対し、呆れ気味に突っ込みを入れる雅樹。
俺もその理由が気になるし、ある意味ナイス突っ込みだ。
と、そう思っていると、
「個人的にオカルトハートを揺さぶられるような、とても興味深い現象だというのがまずひとつ理由としてあるね」
なんて返事をする咲彩。
……オカルトハートってどんなんだよ……と呆れていると、
「――そして、もうひとつ。……こうして死んでも蘇るというのなら、それはつまりボクの友達たちも『見つけ出せば確実に助けられる』……そして、『必ずこの場所のどこかに居る』という事だよ? テンションが上がるに決まっているじゃないか」
と、咲彩がそんな事を続けて口にしてきた。
「な、なるほど……。そう言われると、ある意味納得出来るような……」
「不幸中の幸い……みたいな感じだけれど……ね」
舞奈と霊体が、咲彩の言葉に若干の引っ掛かりを覚えつつも一応理解出来たらしく、そんな風に口にする。
「そうだね。不幸中の幸いというのはその通りだと思うよ。正直……ボクは友達たちを何としても助け出したいと思っていた。だけど、どこかで助けられないんじゃないかっていう思いも――諦めの思いもまた同時にあったんだよね……」
急にトーンダウンしながらそんな風に語る咲彩。
そんな咲彩に対し、
「そうだったのか……。お前が目を覚ました直後のあの様子を見た俺としては、その後のお前がやたらと落ち着いている事に対して、ちょっとした違和感があったんだが……なるほど、そういうわけだったか」
と言って、納得顔で首を縦に振る雅樹。
たしかに……もっと強く助けて欲しいと言ってくるかと思ったら、そんな事はなかったり、逆に急に食いついてきたりと妙な感じではあったが、そう言われると納得出来なくもない話だな。
「――無論、何度も死ぬなんていう苦痛を味わわされている事を考えたら、喜ぶのはおかしいのかもしれない……。でも、それでも、今は助けられるという事が分かった事に対する喜びの方が大きいんだ」
と、そこまで言った所で、ハッとした表情を見せた後、
「あ、えっと、その……ま、まあ、その、なんだろうね? オカルトハートを揺さぶられるような、とても興味深い現象だっていう思いの方が、それよりももっと強いけどね! うん!」
なんて事を急に口にする咲彩。
……いやいや、そんなに顔を真っ赤にして言われた所で、それが照れ隠しだというのはバレバレだぞ……? などと思ったが、ここは敢えて言わないでおくか。
だが……
「咲彩お姉ちゃん、顔真っ赤だよー。すっごい照れ隠しだねー!」
と、セラがサラッと言い放った。おおう……
無論、それは悪意もなにもない純粋な感想なのだが、こういう時のそれは精神に対するクリティカルヒットとなるというもので……
案の定、「うぐぅっ!?」という狼狽の声と共に、咲彩が更に顔を真っ赤に――ゆでだこみたいにしながら、硬直した。
……ま、まあ、そうなるよなぁ……と思っていると、今度はそんな咲彩の肩にブルルンがポンっと前足を置き、
「照れる必要なんてないブルよ! 咲彩が友達を助けたいという想いはとても伝わったブル! ブルルンもばっちりしっかりきっちり全力で協力するブルよ!」
なんて事を言った。
……これまたブルルン自身に悪意はないのだが、ここで更にそんな追い打ちしなくても……と、そんな風に思っていると、
「どがぁああぁぁあぁぁあぁぁあぁぁぁっ!!」
なんていう叫び声を上げながら、ブルルンを両手で掴んで一心不乱にギュッギュッと脇腹を押しまくる咲彩。
「だ、駄目ブルゥ! それは駄目ブルよぉぉ! ブッルゥゥゥゥゥッ!?」
と、ブルルン。……なんだか、さっきのセラの時とまるで同じだな……
それを見ていた雅樹が「ツイニクルッタ」などとボソッと口にする。
う、うーん……何かで見た事があるような……気のせいか?
などと思っていると、舞奈と鈴花が、
「え、ええっと……別の意味でSAN値が0になった感じがしますね……。これ」
「……ま、まあ……SAN――サニティは正気の意味だから、たしかにこれも一種の正気度0の発狂状態と言えなくもないかもしれないね……。うん」
と、苦笑しながらそんな事を呟いた。
……ある意味、名状し難いきょ――いや、羞恥ではあるな……
雅樹の最後のセリフは、敢えてカタカナにしています(何)
ひらがなだと直接すぎるなぁ……と思ったもので……
それにしても、サブタイトルが前半と後半で別の意味を持つという、なんともな状況に……
とまあそんな所でまた次回!
次の更新は平時通りの間隔となりまして、12月9日(金)を予定しています!




