表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
217/503

第58話 潜みしモノ

「階段を登ってすぐのクラスなのか。他の階への移動は楽そうだな」

「うん、便利だよ。もっとも……さっきの場所からはちょっと遠いけどね」

「ああまあ、言われてみっとたしかにそうだな」

「だから、ボク自身はあの非常口ってあんまり使った事ないし、ほとんどあっちへは行かないんだよね。ここの階段使って1階まで降りれば、学食まで通路は一直線だし」

 雅樹に対してそんな風に返事をしながら、教室のドアへと歩み寄る咲彩。


 咲彩が『良く生徒に使われている非常口』の近くのトイレについての逸話を、その場所に行くまで思い出さなかったのは、それが理由……なのだろうか。

 そう思いながら舞奈を見ると、俺の視線に気づき、

「なんだかちょっと気になりますね」

 と、小声で呟いてきた。どうやら同じ様な事を考えていたらしい。

 

 そう……。今横にいる霊体が『自分の名前を覚えていない』というのが、咲彩に対しても行われていた。

 つまり、咲彩がその逸話について『忘却させられていた』という可能性も十分にあり得るのだ。

 

 もしや、霊体もどこかに行けば『思い出す』……のだろうか?

 いや、だからこそあの場所に拘束していた……のか?

 だが……そうだとしたら、その『何者か』は、一体何が目的なんだ……?


 そんな事を考えていると、唐突にゾクリとする『何か』を感じた。

 俺は弾かれるようにして顔を上げ、そちらへと視線を向ける。

 と、咲彩が教室のドアを開けようとしている所だった。

 

「待った!」

「開けちゃ駄目!」

「ストーップブル!」


 俺、セラ、ブルルンの声が同時に発せられる。

 どうやら、セラとブルルンも同じ物を感じ取ったようだ。

 

「え?」

 という声と共に、咲彩がドアをちょっとだけ開けた所で静止し、こちらへと顔を向けてくる。

 

「な……なに、これ……。きゅ、急に邪悪な霊気が膨れ上がって……!?」

 霊体が震えながらそう言って、俺の後ろへと隠れたその直後、

 開いたドアの隙間から黒い手が勢い良く飛び出した。

 

「咲彩!」

 雅樹がそう呼びかけながら全力で駆ける。

 その速度は、明らかに身体強化魔法を行使してのものだ。

 

 それと同時に「障壁展開っ!」という声が響き、鈴花の障壁魔法が発動。

 咲彩に掴みかかろうとした黒い手がその障壁によって弾かれた。

 

 しかし、障壁は一瞬で消失。弾かれた黒い手が再び咲彩へと掴みかかる。

 だが、既にそこに到達していた雅樹が鈴花を引っ張り、そのまま抱きかかえるような形で後ろへと倒れ込む。

 

 直後、「はっ!」という掛け声と共に、弦を引くような動作をした紘都の手からバチバチと放電する魔法の矢が放たれた。

 そして、それが黒い手に勢い良く突き刺ると同時に、パキィンというガラスの割れるかのような破砕音が響き渡り、黒い手が粉々に砕け散りながら霧散していく。

 

 それに対し、「やった!」と口にした鈴花に、「それフラグ!」というツッコミを入れるかりん。

 

「なら、それごと潰すまでだ!」

 俺はかりんに続くようにしてにそんな言葉を紡ぎつつ、魔法を発動。

 ドアの隙間に魔法剣を叩き込んでやった。

 

 と、次の瞬間、先程と同じ破砕音が連続で響き渡り、そして静かになった。

 よし……潜んでいた黒い手かその本体かは分からないが、とりあえず打ち砕く事に成功したようだな。

 

「す……凄い……」

 俺の肩越しに眺めていた霊体がそんな感嘆の声を漏らす。

 

 その声に俺は思う。

 道具を使っているとはいえ、まさかここまで上手く魔法での連携が決まるとはな……。しかも、ぶっつけ本番みたいな状況で。

 皆、思った以上に即戦力になってくれているというか……この世界の人間は、やはり魔法の扱いに慣れるのが早いなぁ……と。

黒い手再び、といった感じですが……それはつまり……?


とまあ、そんな所でまた次回! 

そして、その更新ですが……平時の間隔よりも1日早い、明後日11月8日(火)を予定しています!


※追記

誤字を修正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ