第57話 霊体と逸話の謎
「ど……どういう……事?」
「それは、こっちが聞きたいんだけどね?」
困惑する霊体に対して亜里沙はため息交じりに返事をして、首を横に振ってみせる。
「もしかして、何者かによって隠蔽されている……とかブル?」
ブルルンが胴体の上半分を横に曲げながらそんな風に問うと、
「その可能性自体はゼロだとは言えないけど……そうすると、今度はそんな隠蔽をする理由は一体なんなのか……という話になるね」
と、そう答える亜里沙。
「たしかにそうですね……。ですが……幽霊となっている事、そして殺された時の記憶があるという事から、確実にトイレで殺されているのは間違いないはず……。となると、警察の記録に残っていないくらい昔という事も考えられるのでしょうか……?」
舞奈はそんな事を呟くと、顎に手を当てて何やら考え始める。
「でも、そんなに昔の話だったら、『あのトイレに関する逸話』も、忘れ去られていそうな気がするけど……」
「うーん……。たしかにそうですね……」
鈴花の言葉に、そう答えて更に深く考え始める舞奈。
「……まあもっとも、そこは花子さんカッコ仮の記憶が間違っていなければ……っていう前提が成り立っている必要があるんだけど」
そんな風に肩をすくめて言うかりんに、
「か、カッコ仮って……。じゃなくて……それはどうでもよくて……あ、いや、どうでもよくはないけどどうでもいいというか……」
なんて返す霊体。……それは一体どっちなんだ……
「と、ともかく……っ! 記憶が間違っているなんて事はない……はず。殺された時の記憶は……しっかりある……し……」
そう答えて、自身の肩を抱く霊体。
まあ、俺の生み出した剣に思いっきり反応していたくらいだし、そこは間違いないのだろう。
ただ……
「――殺害されたのは間違いないかもしれないが、殺害された場所が、実は『あそこではない』……というのは十分あり得る話だな」
と、口にする俺。
「あそこじゃ……ない?」
「ああ。あそこと似たような他の場所……例えば別の学校のトイレだった……という事も考えられるって話だ。んで、なんらかの呪術だか魔術だかを用いて、あそこに移動させて拘束した……とかな」
霊体の疑問に対してそう返事をすると、
「でも、そうすると……今度は『あのトイレに関する逸話』が、どこから湧いてきた話なのか分からなくなるね」
という、もっともな事を言ってくる紘都。
「そうねぇ……。もしかしたらあの逸話は、花子さんカッコ仮とは別の少女――女子生徒の話なのかもしれないわね」
「もしそうだとしたら、それはそれで気になるけどねー」
かりんの発言に対してセラがそんな風に返すと、ブルルンが上半身部分を縦に振って肯定を示す。
「ま、なんにせよ……現時点では情報不足すぎて、何とも言えねぇな……」
「はい。私も、色々と分析を試みてみましたが、どうしても途中で詰まってしまいます……」
舞奈が雅樹に頷いてそう返した所で、
「あ、みんな、もうそこがボクの教室だよ」
と言って足を止め、人差し指で教室を指し示す咲彩。
おっと……。なんだかんだと話をしている間に、咲彩の教室のある階まで来ていたようだ。
霊体の件は気になるが、一旦後回しだな。
咲彩の教室までやって来ましたが、果たして……?
といった所でまた次回!
次の更新は前回記載した通り、明後日11月6日(日)の予定です!
※追記
誤字を修正しました。




