第55話 邪悪な霊気
「……き、聞きたい事と手伝って欲しい事……?」
「ああ、そうだ。……と言っても大した事じゃない。邪悪な霊気とやらの詳細と、それについての調査――校内の探索を一緒に手伝ってくれればいい」
霊体の問いかけに俺がそう答えると、
「た、探索……。こ、怖い……。けど……つ、ついていく形なら……いい……よ?」
なんて事を言ってくる霊体。
「それなら前金……というわけでもないが、邪悪な霊気とやらについて、もう少し詳しく教えてくれないか? それは一体どんなものなんだ? 俺には特に感じないんだが……」
そんな風に問いかけると、
「んー、私も分からないー」
「そうね。私も特に何も感じないわ」
と、セラとかりんが俺に続く形で言ってきた。
「え、えっと……。その……今はたしかに感じない……ね。というのも……夕方と深夜――つまり……もっと早い時間と遅い時間に感じる事が……多いから……」
「うーん……。そのふたつの時間帯というのは、なんとなく逢魔が時と丑三つ時な感じがしますね。一番霊的な力が増す時間帯だと昔から言われていますし」
霊体の話を聞いた舞奈が、そんな風に言ってくる。
なるほど、そう言われてみるとたしかにそうだな……
「特に数日前は……今までよりも大きな邪悪な霊気を、上の方の階から……感じた……」
「上の方……?」
霊体の言葉に俺が首を傾げると、
「この棟の上っていうと……3階にボクたちの教室があるけど……」
なんて事を告げてくる咲彩。
「……数日前、か。その一際大きな邪悪な霊気とやらが、咲彩たちが謎の廃村がある異空間か何かに引きずり込まれた時に生じたものだとしたら……」
「ふむ……。この学校全体に最初からその邪悪な霊気と言っている何らかの力が働いていて、本の術式とは密接な関係があるという事になるね。それが『どっち側』に対して強く働いているのかは分からないが……」
雅樹の発言に頷き、そんな推測を口にする亜里沙。
「どっち側に対して……というのは、どういう意味なんですか?」
「ああ、邪悪な霊気が本の術式に対して作用しているのか、それとも本の術式によって邪悪な霊気が満ちる状態になっているのか……とまあ、そういう意味さ」
首を傾げる紘都に対し、亜里沙がそう説明する。
そこに俺が、
「本……というよりは、廃村の異空間に対して……というのが正確かもしれないな」
と、補足するように言う。
「なるほど……」
亜里沙と俺の説明に紘都が頷いてみせた所で、
「あれ? そうなると……今回の一件の首謀者ともいえる人物は、廃村の異空間側で何かをしようとしている……?」
という推測を口にする鈴花。
「もしくは廃村の異空間の霊気を使ってこちら側で何かをしようとしている……といった所でしょうか」
鈴花に補足するような感じでそんな風に言ってきた舞奈に対して俺は、
「まあそういう事になるな」
と短く返事をすると、そのまま上を見ながら続きの言葉を紡ぐ。
「ともあれ、まずは教室へ行ってみるとしよう。何かの痕跡が残っているかもしれないしな」
「なら、ササッと解除してしまうブル?」
「ああ、そうするとしよう」
ブルルンの問いかけに頷き、俺とブルルンは霊体を呪縛から解放する為の術式を構築し始めた――
結構ギリギリの投稿になった為、全体の調整が少し甘く、後で再調整するかもしれません……
とまあそんな所でまた次回!
次の更新も平時通りの間隔となりまして、11月2日(水)を予定しています!
※追記
咲彩が、3階に自分たちの教室がある事を話す所で、変な言い回しになっている部分があったので修正しました。




