第54話 束縛の力、解く力
「ブッルルーン! ブルっと参上! ブル!」
そんな声と共に姿を現したブルルンに、
「ひぅっ!? こ、今度は何……!? ぬいぐるみの妖怪!? 付喪神!?」
なんていう驚きの声を上げる霊体。
「ぬいぐるみの妖怪でも付喪神でもないブル! ブルルンは使い魔ブル!」
ブルルンがそんな返事をしたかと思うと、首を傾げるかの如く上半身部分を横に振って、
「むむ? 何かの力で、この場所に束縛されているブル? しかも、咲彩の妙な呪いと、どことなく力の質が似ているブルね」
と、そんな風に言葉を続けた。
「ああなるほど……そういうわけか」
「強引に地縛霊のような状態にされているってわけね」
俺とかりんがそんな風に言うと、
「ブル? もしかして、これを解除する感じブル?」
などと問いかけてくるブルルン。
そんなブルルンに対して俺は、
「そうなるかもしれないな」
とだけ答えておく。
「束縛……? 解除……? どういう……事?」
霊体が突然の話についていけずに困惑の声を発する。
そりゃまあそうだよなぁ……と思いつつ、
「さっき、学校全体が邪悪な霊気に包まれていて怖いから、ずっとここに隠れていたい……みたいな事を言っていたよな? 外に逃げようとか思わなかったのか?」
という問いの言葉を投げかける俺。
それに対して霊体はというと、
「え……? 外に逃げる……? そう言われても……私、ほとんど……このトイレの中しか動けない……。というか……それよりも先に進もうとすると……見えない壁みたいなのにぶつかって……進めない。深夜は……ちょっとだけ外にも行ける……けど、大して変わらないし……夜に外にでても……暗くて怖いだけだし……」
と、そんな風に答えてきた。
いや、霊体が夜の暗闇を怖がるってどうなんだ……
まあ……そういう霊体がいても別に構わないが……
っとと、それはそれとして……だ。
当然ながらそういう返答になるよな……と思いつつ、俺は霊体に対して更に問いかける。
「ちなみに、その壁をなくせるとしたらどうする?」
「……え? そ、そんな事が出来るのなら……ここからとっとと逃げる……。こんな場所に居たくない……」
霊体が驚いた顔をしながらそう口にした所で、咲彩が、
「ま、そうだよねぇ……。というか……今の感じからすると、透真にはそれをする事が出来る手段があるっていう話だよね?」
なんて言葉を続けながら俺の方を見てきた。
「ああ、その通りだ」
そう俺が答えると、
「ええっ!? で、出来るの……!?」
と、霊体が心底驚いたといわんばかりの表情で、俺の方へと顔を向けてくる。
「出来る。このブルルンと俺の魔法があれば簡単にな」
「そうブルね。咲彩の呪いに比べたら、構造が簡単すぎて解呪は余裕という物ブルよ」
頷く俺に続き、ブルルンが首を縦に振るかの如く上半身を上下に振ってみせつつ、そんな風に言った。
「な、なら――」
俺はその霊体の言葉を遮るようにして、こう告げる。
「――ただ、その代わり聞きたい事と手伝って欲しい事がある」
と。
実の所……もっと早くブルルンを出しておいても良かった様な気がちょっとしています……
とまあそれはそれとして、次回の更新ですが……平時通りの間隔となりまして、10月30日(日)を予定しています!




