第52話 3番目のドアを開けて
「そう言えば……花子さんの正体の一説に、学校に忍び込んできた変質者から逃げて、トイレの3番目の個室に隠れたものの、結局殺されてしまった少女である……という様な感じの物があったような気がしますね」
「ああ、そう言われてみっとそんな説もあったな。しかも、咲彩の言ってた話と思いっきり重なってんな」
なんて事を口にする舞奈と雅樹の横目に、そーっとインターネットで花子さんとやらについて検索してみる俺。
すると、あっさりとその情報が得られた。
うーん……魔法並に便利だよなぁ、これ。
「ま、そうかもしれないし違うかもしれないが、そこは話しかけてみれば分かるだろう」
俺は3つ目の扉の前に立ち、魔法剣を1本ずつ自身の左右に浮かせると、おもむろにその扉を開けた。
「ちょ、ちょっ!? いきなり開けんの!?」
という咲彩の声が聞こえてきたが、いちいちノックして問いかけるなんざ面倒なだけだ。中に『霊体が存在している』のは分かっているわけだし。
それに、襲いかかってきたら迎撃すればいいだけだ。
その為に魔法剣を2本浮かせているわけだしな。
と、思っていると、
「ひぅっ!? い、いきなり開けるのは、マ、マナー違反……」
なんていう予想外の驚きに満ちた――しかし、消え入りそうな声が正面から聞こえてきた。
それは、インターネットの花子さんの情報そのままの、ワイシャツと赤い吊りスカートを着た少女のものだった。
それ以外の容姿も、アンデッド感のあるものではなく、いたって普通だ。
俺が開けた事で驚いて飛び退いたせいなのか、思いっきり壁に半身を埋めているあたりは、まさに霊体という感じだが。
「久しぶりに誰か来たと思ったら……いきなり開けるとか想定外……。しかも、凄い怖い……」
なんて事を、俺の横に浮かぶ魔法剣を見ながら言ってくる花子さんっぽい霊体。
「ああ……。まあ……襲ってきたら突き刺す所ではあったな。これなら、対象が霊体であっても突き刺さるし」
「ひぃぃっ!? な、何もしないから刺さないでっ!? も、もう一回刺し殺されるのは嫌……! そ、それでなくてもここの所……学校全体が邪悪な霊気に包まれていて、怖いし……。もうずっと隠れていたい……! だ、だから帰って……っ!」
俺の発言に対して、ガクガクと震えながらそんな風に言ってくる花子さんっぽい霊体。
う、うーん……。なんだか思っていたのと大分違うような……
一応、会話自体は成立しそうな感じではあるが……
と、そんな事を思いながら頬を指で掻いていると、
「もう一回刺し殺される? それじゃあ、あの話は本当だったみたいだねー?」
「それに、学校全体が邪悪な霊気に包まれているというのも気になりますね」
などと口にしながら、セラと舞奈が俺の方へと歩み寄ってくる。
「うひぃっ!? ゾ、ゾンビィィッ!?」
セラと舞奈を見た瞬間に、そんな声を上げて壁の中に消えていく。
……が、すぐに再び顔だけ壁から出し、
「――じゃ……ない?」
なんて事を呟きつつ、セラと舞奈を見た。
……ふたりの事をゾンビと勘違いした?
もしかして……ふたりの霊的な部分を『視た』か『感じた』んだろうか?
なにやらそれっぽいのが出てきましたね……?
それはそれとして、思ったよりも話が長くなってしまったので一旦で区切りましたが、なんだか妙な所で区切る形になってしまった気がします……
とまあ……そういうわけですので、残りの部分に関しては明後日更新します!
明日でも良かったのですが、諸事情により本来の次の更新予定が平時よりも1日多く間隔が空く状態の為、ちょうど中間になる部分で更新しようと思いました。
なので、次の更新は10月25日(火)で、その次の更新は10月27日(木)を予定しています!




