第45話 資質と魂魄と肉体
「――とまあ、そういうわけなんですよ」
舞奈が自ら死にかけた時の話を鈴花にして、そう締めくくる。
「な、なるほど……あの司書の人が、急にいなくなったのはそういう事なんだ……。というか、そんなアンデッドみたいな状態で大丈夫なの?」
「特に問題ありませんね。脳が徐々に劣化していって、思考がおかしくなっていく、ゾンビみたいな事にはなっていませんし」
「そ、そうなんだ。まあいきなり、かゆ……うま……とか言い出されたら困るけど、そうじゃなければ別にいい……かな?」
舞奈に対しそんな風に言って、俺の方を見る鈴花。
「……それ、脳も身体も腐って変異までするゾンビだよな? 少なくとも、舞奈の肉体がそんな物騒な存在になったりしないから心配すんな」
なんて事を鈴花に言って返しつつも、先の件のようにホムンクルスを弄くれば近しい事は出来るが……と思うも、そこは敢えて口にしない俺。
「身体能力も上がっていますし、怪我した時の治癒も早いですし、むしろ割と便利ですよ」
「……治癒は俺の魔力を消費するから、あまり大きな怪我は勘弁願いたいがな」
そう舞奈に突っ込みを入れ、肩をすくめてみせる俺。
というより……その事を抜きにしても、あまり怪我などして欲しくはない。
「それにしても、阿良木さんとウチの両親が『魔法』とかそういうのに、深く関係しているなんて思わなかったよ……ホント」
そう言って、やれやれと首を横に振ってくる咲彩。
そしてそれに同意するように、
「ああ、さすがにちょっと驚いたぜ」
と頷きながら言う雅樹。
「そういえば……阿良木先生は、魔法が使えるんですか?」
「どうだろう? 資質とやらを調べた事はないね」
紘都の問いかけにそう返す亜里沙。
言われてみると、亜里沙の資質を調べた事ってないな……
というわけで、その流れで亜里沙の資質を測定してみた所、支援や妨害といった味方を強化したり、敵を弱体化させたりするような魔法が得意なようだった。
「思ったよりも地味だったね……」
「ま、まあ、その……ある意味阿良木先生らしい……と思いますよ」
ため息をつく亜里沙に対し、そんなフォローめいた返しをする紘都。
資質があるだけで十分凄いんだがなぁ……。特に亜里沙のそれは、かなり高位の物が使えるような資質だし。
と、そんな事を思っていると、
「ちなみに、セラちゃんも測定していない感じ? セラちゃんが魔法使っている所見た事ないけど……」
なんていう問いの言葉を鈴花が口にした。
それに対してセラは口元に人差し指を当てて、
「んー、資質があるけど、ない感じ?」
などと告げる。
しかし、そう告げられた鈴花は、「?」と言った感じで首を傾げるだけだった。
まあ、今のセラの返しじゃ、さすがに理解出来ないだろうな……と思い、
「本来の身体であれば使えるんだが、今のこの身体だと資質と適合しないせいで使えないんだよ。どうにかしようとは思っているが、上手く霊体――魂魄と肉体とで資質を噛み合わせる手段が思いつかなくてな……」
と、そんな風に補足説明をする俺。
「あー……なるほど、そういう事ね……」
「そうそう、そういう事ー!」
納得した鈴花に続いて、セラがそう言ってウンウンと首を縦に振る。
しかし、魂魄と肉体……か。
咲彩が巻き込まれた――いや、今も現在進行形で巻き込まれている一件って、何気のその辺が色々と関わってきているよな。
この一件を解決出来れば、何か良い手段が得られるかもしれないな。
なんて事を考えていると、
「ところでよ……資質は分かったけどよ、どうやったら俺たちも魔法が使えるようになるんだ?」
という、もっともな疑問を口にしてくる雅樹。
「使い方を学んで、あとはひたすらその使い方を繰り返すのみ……だな」
「なるほど、学習と練習が必要って事だね」
俺の返答に対し、紘都がそう返してきたので、俺はそういう事だと頷いてみせた。
「それって、今すぐには使えないって事だよね……」
「まあ、ウチの学校を調べるだけなら魔法は必要ないと思うけど……ちょっと残念だね」
鈴花と咲彩がそんな風に、残念そうな表情で口にしてくる。
しかし、そこで俺はこう返す。
「――ただし……今言ったのは、舞奈やかりん、そして俺の様に、きっちり自分の力で魔法を使おうとした場合の話だ」
と。
残り半分……のはずが、微調整してネタを突っ込んだ所、予想外に長くなりました(汗)
ま、まあ、そんな所でまた次回!
次の更新は、明後日(10月7日(金))の予定です!




