第42話 肉料理アレコレ
「被って来ましたが……既に髪の毛が盛大に濡れているので、手遅れ感満載ですね……これ」
「手遅れ感満載ってどんな表現だ……。まあ……たしかにこの大雨で濡れてしまった髪には、最早意味はないな……」
「ううっ。もう少し色々と話したかったのですが……ちょっとこのままだと風邪を引きかねないので、中で頭にシャワーをかけて温めます……」
舞奈は俺に対してそんなちょっと変わった言い回しをすると、またすぐにザバザバという音を立てつつ去っていく。
……何か、わざわざ露天風呂で話したい事でもあったのだろうか?
まあ……この大雨の中で話すのもどうかと思うし、また次の機会でいいか。
そう結論を出すと、俺は少しだけ露天風呂に浸かってから屋内へと戻った。
さすがに雨風が強すぎてなぁ……。防水魔法を使うのも何か違う気がするし……
◆
「鉄板で焼いた牛バラ肉とタマネギ、最高だったぜ……」
「タレが凄い良かったよね」
「そうだねぇ。あの絶妙な甘辛さ、ご飯との相性が抜群って感じだったよ」
などと、夕食の感想を口にする雅樹、紘都、そして鈴花。
たしかに、あれは美味かった。
「あれって、この辺りの名物料理なのか?」
「ううん、あれが有名なのはもっと南の方さ。でも、みんなはそろそろお肉を一杯食べたいんじゃないかって事で、敢えてバラ焼きにした感じだよ」
俺の問いかけに対し、咲彩がそう答えてくる。
ふむなるほど、俺たち用ってわけか。
「へぇ、あれってバラ焼き……という名前なのね。あのタレならば牛の肉だけじゃなくて、豚や馬、羊の肉とかでも合いそうな気がするわね」
と、顎に手を当てながらそんな事を言うかりん。
「まあたしかに、牛肉以外でもバッチリいけそうな美味さだったな」
俺がそう同意した所で、
「ふたりって、馬とか羊の肉食べた事あるの?」
首を傾げて問う鈴花。
それに対して、俺とかりんは頷いてみせる。
「ええ。色々あって食べた事があるわよ」
「ああ、むしろ向こ……うに住んでいた時は、羊の肉の方がメインだった」
――危うく向こうの世界と言いかけたが、どうにか言い直しに成功した。
……成功した……よな?
と思っていると、
「あ、だから透真さんが先日作ったラムハンバーグは美味しかったんですね」
そう納得の表情で言ってくる舞奈。
そしてそれに続く形で、
「私も作るの手伝ったよー!」
と、両手を上げてアピールするセラ。
そうそう、なにげにセラって料理出来るんだよなぁ……
「ハンバーグか……。食堂で出していた和風ハンバーグ美味かったよな。何度か作ってみようと思ったんだが、どうやっても味が再現出来なくてなぁ……。あれ、牛肉以外に何か別の肉使ってるのか?」
なんて事を肩をすくめながら問う雅樹に、
「ん? ……ああ、あれかい? あれに牛肉は一切使ってないよ? 全部豚肉だし」
と、サラッと返す咲彩。
「マジかよっ!? そりゃどうやっても味が再現出来ないはずだぜ……」
「牛肉でもいいんだけど、豚肉の方がポン酢とは相性が良いからね」
「な、なるほど……。そういう物なのか」
「うん、そういう物なのさ。もちろん、牛肉の方が美味しいと感じる人もいると思うけどね」
なんていう雅樹と咲彩の会話を聞いていた鈴花が、
「……なんだか、和風ハンバーグが食べたくなってきたね……」
などと、呟くように言う。
「うーん……。それならちょっと妙な献立になりそうだけど……明日の夕食は和風ハンバーグも出そうか」
「是非っ!」
咲彩の一言に勢い良く……というか、食いつくようにそう返す鈴花。
「ま、その夕食をゆっくり堪能する為にも、目の前の問題を解決するとしようか」
「そうね。とりあえず、皆の資質を確認してしまいましょうか」
俺の言葉に同意するように、そう言って皆を見回すかりん。
それを見ながら俺は、魔法収納空間から例の資質を測る道具を取り出すのだった。
あくまでも個人の感想です(汗)
とまあそれはそれとして……次の更新ですが、平時通りの間隔となりまして……9月29日(木)を予定しています。
そして、その次の更新なのですが、所用により平時通りの間隔での更新も難しい可能性が高く、平時よりも間隔が1日多く空きそうな感じです……




