第41話 ドヤる舞奈とポンコツ舞奈
セラとブルルンの事はとりあえず大丈夫だろうと考え、舞奈と別れて男湯へと移動する俺。
――やはり、外の雨は強くなってきているな……
と思いつつ、湯船の中からガラス越しに外を見る俺。
そこには露天風呂とはまた違う庭園が広がっており、人工的な光によってまばらに照らされていた。……たしか、ライトアップというんだったか?
なんにせよ、その光のお陰で雨の降りしきる夜であっても、それなりに庭園の美しい光景を見る事が出来るのが素晴らしいな。
……って、そういえばこの雨でも露天風呂には出られるんだな。
雨の水で温くなったりしないものなのだろうか?
ふと露天風呂へ続くドアの方を見ると、特に封鎖などはされていなかった為、そんな事を俺は思った。
うーん……気になるな。
というわけで、露天風呂の方へ行ってみる。
すると、入口の所にタライをひっくり返したような形状の笠が置いてあった。
三度笠……というんだったか?
なるほど、これを被れば濡れないというわけか。
ならば早速……とばかりに、俺はその笠を被り、露天風呂へと入る。
雨風が強いものの、笠のお陰で頭が濡れる事はない。
――昨日入った時とあまり変わらない……というより、若干温度が高い?
「さしずめ、雨風によって冷える事を考えて、源泉から流れてきているお湯をあまり冷まさずに湯船に流している……といった所だろうか?」
俺の考えた事が、そのまま壁の向こうから聞こえてきた。
「――とか、そんな事を考えていませんか? ……いますよね? というか、そこにいるの透真さんで間違いない……ですよね?」
うん、どう考えても舞奈の声だ。
「たしかにその通りだが……もしかして、わざわざそれを言う為に露天風呂に来たのか?」
「はい、その通りです! 透真さんは防水魔法が使えますし、透真さんの性格からして、雨の水でお湯が冷えないのかと気になるはずです。なので、こうして驚かせる為に来てみました!」
「……そうか……」
舞奈の返答に対し、そんな風にちょっとため息まじりにそれだけ返す俺。
というより、それ以上どう返すべきか分からないとも言う。
うーん……相変わらずとんでもない分析力だな……
というか、壁の向こうでドヤってる顔が目に浮かぶぞ……
なんて事を思っていると、舞奈がトーンダウンして、
「……まあ、思ったよりも来るのが遅かったので、このまま来ないのではないか、分析が間違っていたのではないかと、ちょっと不安になりましたが……」
と、そんな言葉を続けてきた。
たしかに途中から若干自信が揺らいだような声になっていたな……
「そ、そうか。まあ、こうして来たのだから問題ないだろう?」
俺は、どう反応すればいいのか迷った末にそう返した。
う、うーん……なんだか反応として間違っている気がしないでもないが、まあ……いいか。
「そ、それと……」
という舞奈の言葉に、まだ何かあるのか? と思っていると、
「さ、さすがに雨風が強すぎて頭と顔が大変な事に……。頭はどうせ洗うから濡れても問題ないと思っていましたが……ちょっと冷たいです……。透真さんは咲彩さんの学校に行った時と同じように、魔法で雨風を防いでいる感じですか?」
なんて事を言ってきた。
……? 何を言っているんだと思いつつも俺は、
「……いや、普通に入口に置いてあった笠を被っているだけだが……? 被るだけで頭が濡れる事は絶対にないし、顔にもほとんど当たらないから、別に防水魔法は必要ない感じだが……」
と答える。……もしかして、あれか? 笠の存在に気づいていなかったのか?
「か……さ……? ちょ、ちょっと見てきますっ!」
という声と共に、ザバザバと水をかき分けて歩く音が聞こえてくる。
……どうやら気づいていなかったようだ。
う、うーん……。舞奈って、とんでもない分析力を持っているのに、たまにこういうポンコツな所があるよなぁ……。いやまあ……そういう面も『良い』んだけど。
と、そんな風に思う俺だった。
なんともなサブタイトルになりました……
展開的には一番これがしっくり来たというかなんというか……
とまあ、それはそれとしてまた次回!
次の更新は明後日……と言いたいのですが、諸々の用事がある為、少々難しい状況です……
というわけで、平時通りの間隔となりまして……9月26日(月)に更新予定です!




