第1話 土手沿いの道、少女との遭遇
「うおおおおおぉぉぉっ!」
俺はそんな声を発しながら、全力で土手沿いの道を走っていた。
脚力増強魔法、体力増幅魔法、体力自動回復魔法……
走るのに有用な強化魔法を、無詠唱で片っ端から自身に使いながら、走る。ひたすら走る!
今の俺は破壊神を次元の狭間に放り込んだ大魔道士ではなく、ただの学生だ。
……この世界のただの学生は、魔法など使わないとは思うが、そこに関してはスルーしておくとしよう。
ともかく、編入初日から遅刻するわけにはいかないので全力で走り続ける。
いやぁ、この世界でも魔法自体は問題なく使えるって事に感謝したくなるな!
そう……あの後、俺はどういうわけか次元の狭間を経由し、この地球――日本へと辿り着いてしまった。
しかも、何故か10代後半の肉体で、だ。
そして、この年齢の者は、この国では『高校』と呼ばれる教育機関に通うのが基本だとコウイチから聞いていたので、俺はこの世界で出会った人物の勧めもあり、それに従う事にした。
まあ……今日この日に至るまで、色々とあったんだがそこは――いや、そこも置いておくとしよう。
今、重要なのはそこじゃない。遅刻せずに済むかどうか、だ。
と、そんな事を考えながら走っていると、後方から自転車が近づいてきた。
俺が今日編入する予定である学校の制服に身を包んだ少女が、それを全力で漕いでいる。
……どうやらあの少女も遅刻寸前みたいだな。
さすがに全力で漕ぐ自転車の方が速く、俺を追い抜いていく少女。
……と思ったら、追い抜いた瞬間に急停止した。
……はて? どうかしたのだろうか?
そう思っていると、
「あ、あの……もし良かったら後ろに乗っていきますか?」
なんて事を言ってくる少女。
一瞬、その少女が女神に見えた。腰辺りまである長い髪もまた、女神らしさを際立たせていた。
……自分でも何を言っているのか良く分からないが、ともかく、そのくらいの神々しさを感じたのだ。
いやまあ……実際に女神になんて会った事はないから、そのくらい神々しさ、とはどのくらいなのかと問われると困るんだけどな。俺が会った事のある神は破壊神だけだし。
「あ、あの?」
つい呆けていた俺に、再び問いかけてくる少女。ちょっと困惑気味だ。
「はっ!」
……いかんいかん。あまりの事に心の中で誰にともなく語ってしまった。
とりあえず返事をするとしよう。
「あ、いや……それだと全力が出せないと思うし、そうすると君が遅れてしまうだろ?」
「そ、それは……たしかにそうかもしれませんが……」
「だから気にせず先に……って待てよ? 逆にすればいいのか」
「逆……ですか?」
「つまり……俺が漕いで、君が後ろって事だ。俺ならさっきのスピード以上で君を載せたまま走れる自信がある」
無論、『魔法を使えば』だがな! というのは、当たり前だが口にはしない。
「な、なるほど……」
そう言って一瞬だけ思案するような仕草をするも、すぐに自転車から下りて俺にハンドルを預けてくる少女。
「――たしかにそれは良いアイディアかもしれませんね」
……自分で言っておいてなんだが……随分あっさりと納得したな。
いや、判断が早い……のか?
まあいい、ともかく全力を出すとしよう――
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本日は続けて投稿予定です!
※追記
2022/12/9
キャライメージ用に舞奈(この時点ではまだ名前出ていないのに名前を書いていて恐縮ですが、次の話ですぐに名前が分かるのでご容赦ください……)の挿絵を追加しました。
AI便利ですね……(まあ、ある程度(――さすがに全部の変な所の修正は無理なので、背景以外(背景は別にいいかな、と)であからさまに変な所を重点的に)手直ししてはいますが……)
ちなみに、どこをどう直したのか気になる方は、活動報告の「Novel AI」を御覧ください!