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第40話 雨と雨具と簑笠

「ところで……今、ブルルンが雨が強くなっていると言っていましたが、まだ強くなりそうな感じですか? 宿の中にいるとあまりわからないもので……」

「そうだな……このまま結構な大雨になりそうな勢いで強くなってきているな。咲彩の学校へ行く時は雨具――傘とか雨合羽とかを用意しておいた方が良い気がするぞ。広域防水魔法を展開するつもりではあるが……何らかの理由で、魔法の効果範囲外に出る可能性もあるだろうし」

 舞奈に対して頷きながらそう告げると、

「なるほど……。大雨だと傘では濡れそうですね……。とはいえ、雨合羽は持ってきていませんし……」

 と、そんな風に言ってくる舞奈。

 

 まあ、畳めば持ってこられるとは思うが、普通はそこまで用意してこないよな。だが――

「そこはゲートで自宅まで取りに戻れば良いだけの話だろ?」

「あっ! そういえばそうですね。なんだかんだで便利過ぎる魔法ですよね、本当に」

 舞奈が手のひらをポンと打って、そう返して来た所で、 

「取りに戻るんでもいいけど、売店でちょっと変わった雨具を売っててね。少し気になってるんだー」

 なんて事をセラが言ってきた。

 

「あ、たしかに売っていたブルね」

「変わった雨具? カエルを模したものとかですか?」

「ううん、そういうのじゃなくて、時代劇に出てきそうなの!」

 首を傾げて問う舞奈に、セラがそう答える。

 

「時代劇……。ああなるほど……わかりました。それは多分、蓑笠ですね。しかし……何故そのようなものが宿の売店に?」

「近くに置かれていた刀と一緒に、『レプリカ』とか書いてあったブル」

 舞奈の疑問にブルルンがそんな風に答えると、それに対して舞奈は顎に手を当てながら、

「うーん……。観光地にはどういうわけか、良くレプリカの刀がお土産屋さんに置かれていたりしますし、それと同じような感じ……なんですかね? 蓑笠のレプリカというのは、なんとなくレアな気はしますが」

 と言った。

 

「武器……は、さておき、その簑笠はいくらだ?」

 舞奈の言葉に、俺は『武器くらいどこでも売っていると思うが……』と言いそうになったが、そんなわけはない事に気づき、無理矢理そんな感じで誤魔化した。

 この国――というかこの世界では、どこでも買えたりしないよな……うん。


「2980円だったかなぁ? 手持ちのお金だと全部無くなっちゃうから、ちょっと手を出しづらかったんだよねぇ……」

「ふぅむ、なるほど……。たしかに高いとも安いとも言えない感じの値段だな」

 セラの告げてきた値段に対して俺がそう返すと、舞奈がそれに続く。

「まあ……レプリカですからね。本物だったらもっとしますし」


「でも、一応雨具としては普通に使えるみたいブルよ」

「……それはレプリカと言っていい代物……なのか?」

「う、うーん……材質が本物とは違うんだと思いますよ、きっと」

「なる……ほど? たしかにそれなら納得出来なくもない……か?」

 若干引っかがるが……まあいいかと思い、舞奈に対してそんな風に返すと、セラの方を見て、

「ま、気になるなら買えばいいんじゃないか? あって困る物でもないし」

 と言いながら、俺は5000円札を財布から取り出すと、それをセラに差し出した。

 

「それでその蓑笠のレプリカとやらと、それから他に好きな物を買っていいぞ」

「トー兄様、いいのー?」

「ああ。よくよく考えたら、旅行用のお小遣いを渡していなかったしな」

「ありがとうっ! トー兄様! ブルルン、見に行こうっ!」

 俺に対して満面の笑みでお礼を述べたセラは、自分の財布に5000円札を収めると、ブルルンを抱きしめたまま勢い良く走っていく。

 

 って、待て待て――

「セラちゃーん! 廊下を走っては駄目ですよーっ!」

 俺が呼び止めようとした所で、舞奈が先にそう声をかけた。

 その声にセラは、「は、はーい……っ」と返事をしつつ走るのをやめ、代わりに少し早めに歩いて去っていく。


 ふぅ、これで迷惑がかからな……って、それだけじゃないっ!

「待て待て! ブルルンを連れて行くのか!?」

 慌てて声を大にして呼びかけるも、既にセラの姿はなく、その声が届く事はなかった。

 

 そんな俺に対し、

「ま、まあ……ふたりの話から推測すると、既に一度売店へ連れて行っているようですし、大丈夫なのではないかと……」

 と、そう告げてくる舞奈。

 

 う、うーん……言われてみると、ブルルンが売店の売り物について知っていたし、一度一緒に行っているのはたしかだな……

 であれば、問題ない……のか?

蓑笠って、何気に優秀な雨具だと思います。


といった所でまた次回! 次の更新は明後日(9月23日(金))を予定しています!

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