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第37話 雨夜の視線

「――よし、到着っと」

 ふたつ隣の駅の近くにある大きな建物の敷地内へと着地しつつ、そんな事を誰にともなく呟く俺。


 まずは周囲に誰もいないか確認してみるも、誰もいなかった。

 休みだとはいえ、部活動で学校に来ている生徒が少しはいるのではないかと思ったのだが、ひとりも生徒の姿はなかった。というより、教師を含めた人の気配を感じない。

 雨も降っているし、電車の時刻表と本数を考えれば、部活動で来ていた生徒も既に下校し終えた後なのだろう。

 そう……俺は先程よりも強さを増した雨の中、飛翔魔法を使って咲彩の通う学校へとやってきたのだ。

 無論、防水魔法を使っているので濡れてはいないし、隠蔽魔法を使っているので誰かに見られているという事もない。

 

 さて、ここへやってきたのは皆よりも先に来て探索する為……ではなく、単純にゲートを作りに来ただけだ。

 この校舎の構造を知っているわけじゃないから、単独で探索するには少し広すぎるし、どこに何があるのかを把握するだけで時間を食う事になる。

 さすがに構造を知っている人間がいるのなら、案内して貰う方が手っ取り早いというものだしな。

 

 とまあそんなわけで……俺は周囲を再度見回し、手近な物陰へと移動。

 念の為に隠蔽魔法を使ってから靴で地面に印を描き、

「――虚空を超えて此の地と彼の地を繋ぎし其よ、今ここに顕現せよ。《転移門》……第二十八の印より第二十五の印」

 と、詠唱した。


 これをやっておかないと、わざわざ電車で来る必要があるからな……

 夜にあの人数でゾロゾロと旅館を出て駅に向かい、更にそこから電車に乗って移動……というのは、いささか目立ちすぎるので、さすがに避けた方が良いだろうと考えたのだ。

 

 さて……ゲートも問題なく開いたし、旅館へ戻るとす――

 ……ん? 人の気配……いや、視線?

 

 ゲートを潜ろうとした所で、こちらに向けられる視線を感じる俺。

 いや、正確に言うのなら、『こちらを視てはいるが、俺やゲートの存在を認識出来ておらず、俺がどこへ消えたのか探っている状態の視線』だな。

 

 どうやら視線の主は、俺が隠蔽魔法を使った事で『俺を見失った』ようだ。

 という事は……だ。この視線の主は、隠蔽を看破するような魔法や力を有していないという事だな。

 

 気配を消す程度の事は出来るようだが、こちらを見つけようとして焦ってそれを解いてしまうようでは、脅威度は低いと考えて良いだろう。

 とはいえ……さすがにこのまま放っておくってわけにはいかないよなぁ。

 ま、戻る前に視線の主を確認しておくとするか。

 

 そう結論を出すと、俺は即座に隠蔽魔法を維持したまま、視線の先へと向かって飛翔魔法で一気に接近する。

 と、そこは本棚が並んだ部屋――図書室だった。

 そして、図書室の窓越しに俺へと視線を向けてきていたのは、若い男性だ。少なくとも幽霊の類ではないというのは、ひと目見てわかる。

 見た目の年齢的にもそうだが、服装からして明らかに生徒ではないので、この学校の教師か、あるいは司書……といった所だろうか。

 咲彩がいれば何者なのかすぐに分かるだろうが……あいにくとここにはいない。

 

 容姿を覚えておいて、魔法で幻体を作って咲彩に見せ……って、違う。

 そんな面倒な事をしなくても、スマホで写真を撮っておけばいいだけじゃないか。

 誰もいないと、つい魔法でなんとかしようとしてしまうなぁ……なんて事を思いながらスマホを取り出す俺。

 

 そしてシャッター音が鳴らないようにしてから、件の若い男性を撮影した。

 ……これで簡単に容姿情報を記録しておけるのだから便利だよなぁ……ホント。

 

 などと、桜満あたりが聞いていたら何を言っているんだと呆れられそうな事を、声には出さずに心の中で呟く俺だった。

早速、謎の人物の登場となりました。


といった所でまた次回! 次の更新は、明後日(9月17日(土))を予定しています!

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