第35話 咲彩の学校と龍穴
「その件はさておき……これがあれば、例の村に行けそうな感じかい?」
舞奈とかりん以外が、『あの一件』に興味を抱く前に……という事なのか、亜里沙が話題を戻すように、そんな問いの言葉を俺へと投げかけてきた。
「記されている通りの事をすれば良いと思うが……どうやらこの術式、その地の霊的な力の流れの噴出するスポット――日本では『龍脈』と『龍穴』……と言うんだったか? そこから必要な力を汲み上げ、それを利用して次元の壁に穴を開ける仕組みになっているみたいでな。ここ記されている通りの事をしても、何も起きないだろうな」
「それってつまり、ウチの学校が龍脈……というか、龍穴の上にあるって事かな?」
俺の説明を聞いた咲彩がそんなもっともな疑問を口にする。
「ま、そういう事になるな。無論、学校以外でも龍穴の上なら出来ると思うが、どこが龍穴なのかはさすがに俺にはわからんしなぁ……。さっき行った神社は、おそらく龍脈の上にあるんだろうが、龍穴かと言われると……」
そう俺が返すと、かりんが手を上げて、
「あ、それなら私が何となく分かるわよ」
なんて事をさらっと言ってきた。マジか。
「……さすがは巫女……というべきなんですかね?」
舞奈がそう呟くように言うと、鈴花が、
「へぇ、かりんって巫女だったんだ」
と、そんな風に返す。
そういえば、その辺の説明ってしてなかったな。
「そうよ。もっとも、私と似た血を――巫女の力を、鈴花も持っているんじゃないかって私は思っているけど」
「えっ!? 本当に!?」
「ええ。なんとなくそういう気がするのよ。まあ……あくまでもそういう気がするっていうだけだから、絶対とは言えないけれど」
かりんが驚く鈴花にそう返して肩をすくめてみせると、鈴花が額に指を当て、なにやら「むむむむむ……」と唸りだした。
「……うーん、何も感じな……あれ? 海の方から何か妙なものを感じるような……」
なんて事を言ってきた鈴花に、かりんが目をしばたたかせながら、
「……本当に持っていたようね。私もそっちの方から龍穴の存在を感じるわ」
などと、驚き半分、呆れ半分といった声で返す。
「海の方……? そういえば、海に浮かぶ島にも神社らしきものがあったよね?」
紘都がそんな風に言うと、
「あるね。まあ、当然船がないと行けないけど」
と、そう答えてくる咲彩。
「なら、普通に咲彩の学校に行った方が手っ取り早いんじゃねぇか?」
「そうだねー。私もそう思う」
もっともな話を口にする雅樹とそれに同意するセラ。
「だなぁ……。咲彩の学校ってここからどのくらいかかるんだ?」
「ここから2駅だから15分くらいで着くよ。電車が来ればだけど」
俺の問いかけに咲彩がそう返事をした所で、舞奈がそれに続くようにして、
「あ、そういえば駅に停車する際に、車窓から学校らしきものが見えましたね」
と言ってきた。
そう言われてみると、来る途中でそれっぽい建物が見えたような……
「そうそう、そこだよ。駅から近くて便利なんだよね。『街』の方にもすぐに行けるし。朝は本数多いから、1本乗り損ねても次のでギリギリ間に合うし」
咲彩はそんな風に言って一度言葉を切り、時計へと顔を向ける。
そして、壁に貼られている時刻表を見ながら、
「……あー、今行ったばかりだから、次は40分後になるね。この時間帯、1時間に1本しかないんだよねぇ……」
などと告げてきた。
ふぅむ、40分後か……。向こうからこっちへ戻る電車も1時間に1本である事を考えると、行って戻ってくるだけでもそれなりに時間を食う事になるし、これから行くという選択肢はちょっと選びづらいな……
今回の話、もうちょっと先までで1話の予定だったのですが、会話が思った以上に長くなってしまったので、一旦区切りました……
それもあって、残り半分はほぼ出来ているので、このまま明日投稿します!(まあ、本来は併せて1話なので、物語的な進展はあまりないですが……)
というわけで、次の更新は明日(9月13日(火))です!




