第18話 壊された電子錠
「4階の防火扉が開いているな」
俺が踊り場からそう告げると、
「え!? 本当ですか!?」
という驚きの声と共に、階段を駆け上がってくる舞奈。
「た、たしかに開いていますね……」
「さっきの教師が開けたんじゃないのか?」
「そんな簡単に開くようなものではないはずですが……」
電気が点いておらず、黄昏時の弱い太陽の光しか光源のないその4階の廊下は、なんとも不気味な雰囲気が漂っていた。
……いや、不気味な雰囲気が漂っているってだけじゃない、か。
妙な魔力……というか、霊的な波動を『実際に』感じるな。
……もしかしたら結城先生の言っていた話は、『噂話』で済むようなものじゃないのかもしれないな。
なんて事を思案していると、
「ん? 月城に成伯? そんな所で何してんだ?」
という、まさにその結城先生の声が聞こえてきた。
「……って、なんで防火扉が開いているんだ?」
階段を登ってきた結城先生が、当然ではあるが、その事に気づいて疑問の言葉を発する。
「月城さんに校舎内の案内をして貰っていたんですが……上からどこかの先生が降りてくるのが見えまして……。少し気になって見に来てみたら、こうなっていました」
「なるほどな、そういう事か。もしや、電子錠が故障したのか……?」
結城先生は俺の言葉に納得し、そう言いながら4階へと向かう。
「……ん? 電子錠が壊れている? 内側から誰かが壊した……のか? いや、そうだとすると、いつどこで、どうやって入り込んだっていうんだ……?」
「何かの拍子で自然に壊れて、自然に開いた……という可能性はありませんか?」
4階で思案する結城先生にそんな風に問いかける舞奈。
「いや……良く見るとわかんだが、人為的に何らかの衝撃を与えて壊された……そんな形跡がある。だからその可能性はないと言っていいだろう。――ま、なんにせよ、ふたりが見かけたという教師は、これに気づいて業者に連絡しに行ったんだろうよ」
なんて事を言ってくる結城先生。
なるほど、そういう事か。たしかにそれなら納得だ。
それにしても……見ただけで電子錠とやらが壊れた原因を推測するとはな。
さすがは元殺し屋、とでもいうべきだろうか。
「で、まあ……とりあえず業者が来るまでは、カラーコーンでも持ってきて置いておくしかねぇな。電子錠が壊れた影響なのかわかんねぇが、どうやっても閉まらなくなっていやがるし」
防火扉を動かしながらそんな風に言う結城先生。
なるほど……たしかに、ガチャンという音がして閉まるのに、すぐに勝手に空いてきてしまうな。
「すまん、俺は念の為ここで見張ってっから、ふたりでカラーコーンとコーンバーを体育倉庫から持ってきてくんねぇか? この時間ならまだ施錠されていねぇはずだしな」
と、そんな頼み事を口にする結城先生。
特に異論などはないので、俺と舞奈はそれに対して了承を示す。
「カラーコーンとコーンバーですね、了解です」
「はい、すぐに取ってきます。行きましょう、成伯さん」
本日はあと1話更新予定です!




