第25話 魔法と符術、そして雅樹
紘都の説明を聞かされた鈴花はというと、頬を人差し指で掻きながら、
「う、うーん……そ、そう言われるとそうなんだよね……。ウチのお店を手伝ってくれた時のあの動きとか、言われてみると魔法かなにかを使っていないと無理なんだよねぇ……正直。まあ、あの時は深く考えないようにしていたけど……」
なんて事を、呟くように言ってきた。
「ええ、そうですね。あの時はガンガン魔法を使っていましたね。そうしないと回らなかったもので……」
「そうね。私も使っていたわね。だって、調理器具が足りなさすぎて、あのままじゃ注文された物を作るのに時間かかりすぎる状況だったし……」
「……厨房の調理器具が分身でもしているかのように見えたのは、やっぱり魔法を使っていたからなんだね……。舞奈の皿運びも理解不能だったし……」
舞奈とかりんの説明に対し、鈴花が盛大にため息をつきながらそんな返事をした。
そこにセラが間髪入れずに一言告げる。
「ちなみに、私はあの時幽霊だったよー」
「あ、うん……。その、なんというか……それが一番驚きかな……。こうやって普通に触れるのに……」
セラの身体をペタペタと触りながらそんな事を言う鈴花に向かって紘都が、
「鈴花、いくらなんでも触りすぎ……」
と、呆れ気味に静止の言葉を投げる。
「い、いやぁ……幽霊がこうやって実体を持っているのが、なかなか理解出来なくて……」
「それを言ったら、私も幽霊みたいなものだったのだけれどね?」
鈴花に対してそうツッコミを入れつつ、セラに触れる鈴花の手に触れてみせるかりん。
と、その直後、バチンッという静電気を更に激しくしたような音が響く。
「あいたっ!」
顔をしかめながら勢いよく手を引っ込める鈴花に、
「魔法とは少し違うけど、これが符術――電光転というものよ。威力は大分落としたけどね。……理解出来たかしら?」
なんて事を告げるかりん。
良く見ると、かりんの手には呪符が握られていた。
セラから鈴花を引き剥がすのが目的なんだろうけど、なんとも強引な引き剥がし方だな……
「う、うう……。も、もうちょっと優しく……」
かりんの方を見ながらそう言って、軽い雷光を放射された方の手を擦る鈴花。
そんな鈴花に対して、やれやれと首を横に振りながら、
「まあ、そろそろ受け入れようか、鈴花」
と、紘都。
「……正直言うと、大分前から受け入れてはいるんだけどね。頭が混乱しているだけで」
「えっと……それは受け入れているとは言えないのでは……?」
鈴花に向かってそんなツッコミを舞奈が入れた所で、雅樹が部屋に駆け込んできて、
「おーいっ! 透真が言ったとおり、咲彩が目を覚ましたぞーっ!」
と、大声で報告してきた。
「お、目覚めたか。それは良かった」
「ああ、一安心だぜ……。透真、かりん、それとセラちゃんも、改めてありがとうな!」
「どういたしまして、だ」
「ええ、どういたしまして、よ」
「うんうん、どういたしましてー!」
雅樹の礼に対し、俺たちがそう返した所で、
「それで……なんだが、どうにも面倒な事になっていそうでな……。俺じゃ話を聞いても何とも出来そうにねぇから、すまねぇがちと来てくれねぇか?」
なんて事を言ってくる雅樹。……面倒な事?
「よくわからんが……どの道、咲彩からは話を聞くつもりだったし、すぐに行くとしよう」
そう雅樹に告げ、咲彩の部屋へと向かうべく立ち上がる俺。
「あ、待って! 私も行くよ!」
立ち上がりながらそんな風に言ってきた鈴花に続くようにして、
「というか、今回は全員で行けばいいんじゃないかしら? 目覚めたからお見舞いに来たって言えば大丈夫だと思うし」
と、言ってくるかりん。
「それもそうだな。じゃあ、全員で行くとするか」
――というわけで、今回はこの場にいない亜里沙以外の全員で、咲彩の部屋に行く事になった。
しかし、面倒な事……か。
俺たちにどうにか出来る範囲であればいいんだが……
なんだか妙なサブタイトルに……。まあ、その……他に思いつかなかったもので……
といった所でまた次回! 次の更新は明後日(8月26日(金))を予定しています!




