第23話 咲彩と雅樹
「――!!!!!!」
ガバっと跳ね起きるボク。
「……って跳ね起きる?」
直前までの状況とのあまりの食い違いに、そんな独り言が自然と口から漏れた。
――とりあえず状況を把握しようと深呼吸をして心を落ち着かせると、ボクは周囲を見回す。
すると、どう見てもそこはボクの部屋だった。
……あれ? さっきのは……夢?
でも、私と友達はたしかに、あの場所に……
いや……もしかして、それも含めて夢だった……とか?
なんて事を思っていると、
「お、目が覚めたのか良かったぜ。……って、なんだか汗びっしょりだが、大丈夫か?」
という、懐かしい声が聞こえてきた。
この声は……と思いつつ声のした方を見ると、やはりと言うべきか、そこにいたのは懐かしい人物……ある意味では幼なじみと言っても良いような関係である雅樹――緋村雅樹だった。
……って、えっ!?
待って待って! なんでいるのっ!?
「え? な、なんで雅樹がここにいるのさ!?」
「そろそろ目を覚ます頃かもしれないって言われてよ。だから、様子を見に来たんだよ」
ボクの驚きに満ち満ちた問いかけに対し、そんな風にサラッと返してくる雅樹。
いやいや、そういう意味の問いかけじゃないから!
「そうじゃなくって! どうしてこんな所まで雅樹が来てるのかって話だよ! っていうか雅樹、引っ越しの日に来なかったのに、なんでここの事知ってるのさ!」
」
ボクがちょっと憤慨しつつそう言うと、雅樹はバツの悪そうな顔で頭を掻きながら、
「あー、まあ……それに関しては、色々とぶっ飛んでる友達がいてな……。そいつのお陰だ」
なんて事を言ってきた。
「いやいや、色々とぶっ飛んでる友達って……」
そう口にしつつふと疑問が湧いたボクは、雅樹のそのひとつ前の言葉を反芻する。
「――って、そろそろ目を覚ます? 様子を見に来た? ボク、ずっと寝てた……って事? どのくらい?」
「んー……昨日の昼過ぎに、お前をデケェ木の下で寝ているのを発見してから、大体20時間くらい経過してんな。その前から寝ていたとすると……丸一日くらいじぇねぇか?」
「丸一日!?」
ボクは雅樹の言葉に驚きつつ、思う。
だとしたら……やっぱりさっきのは単なる夢だった……? と。
しかしそこで、
「いやぁ、まさか学校で失踪した上に『呪われて』いるとは思わなかったぜ……。正直、どうにか目覚めてくれてホッと一安心だ……」
なんて事を言ってくる雅樹。
「の、呪い……!?」
「ああ、呪いだ。冗談抜きのマジモンの、な」
再びのボクの驚きに対し、雅樹が真剣な表情でそう告げてくる。
つまりそれは嘘でもなんでもなく、ボクは本当に呪われていたという事だ。
……まあ、正直言って心当たりはありすぎるんだけど……
ボクがそう心の中で呟いた所で、
「今さっき言ったように、俺には色々とぶっ飛んでる友達が……まあ、複数いるんだが……そいつらがお前の呪いをどうにかしてくんなかったら、今頃お前は危ない所だったんだぜ。いや、マジであいつらには――特に透真とかりん、それから透真の妹のセラには感謝しかねぇぜ……」
と、雅樹が腕を組みながらそんな説明してきた。
「ちょ、ちょっと待って! そ、それならボクの友達――美香も楓も紡も無事なの!? ほぼ確実に、ボクと同じ状況のはずなんだけど!」
「ミカ? カエデ? ツムギ? ……誰だ? 昨日、デケェ木の下で寝ていたのはお前だけだったぞ?」
ボクの問いかけに首を傾げながらそう返してくる雅樹。
そ、それじゃああの3人は……っ!
「――あー……っと、よくわからねぇが……その顔からして、色々ヤバそうな話がありそうだな。……咲彩、ちょっと待ってろ。そういうのに詳しい奴ら――今言った透真たちを呼んでくるわ。俺だけが話を聞くよりも、あいつらを交えて話を聞いた方が色々と手っ取り早い」
雅樹はボクの顔を見てそう告げると、足早にボクの部屋から出ていく。
それを眺めながらボクは思う。
……あの3人は、まだあそこにいる……?
……もしそうだとしたら、なんとしても助け出さないと……っ!
と。
咲彩視点での話はここまでになり、次の話からは透真視点に戻ります。
咲彩視点が続いた事もあり、このまま透真視点の話も続けて出したい所だったりします。
といっても、さすがに同日に2話は厳しいので、最終調整込みで明日になりますが……
とまあそんな所でまた次回!
次の更新は上に記載した通り、明日(8月23日(火))を予定しています!




