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第22話 咲彩の悪夢・後編

ちょっと長めです。

 歩く度にギィギィミシミシと音のする廊下を、ボクは慎重に注意しつつ進む。

 いきなり怨霊が現れたとしても、すぐに逃げられるように。

 

 しかし、怨霊の類が出てくる気配は一向にないまま、大きな居間へと辿り着いた。

 もしや、中にいた怨霊は全て屋敷の外へ出てしまっているのだろうか?

 まあ、そうであるのならそれはそれで助かるというものだけど。


 などと思いつつ居間を見回すと、和風の造りに不似合いな茶髪の西洋人形が、朽ちたタンスの上に置かれていた。

 ……市松人形なら分かるけど、どうして西洋人形?


 ……良く分からないけど、髪の毛が伸びたり追いかけてきたりしたら怖いので、とりあえず放っておこう。

 

 そう考えて居間を更に見回してみるが、それ以外に気になる物は特になにもなかった。

 隣にも部屋があるのでそちらへと移動してみる。


 すると、隣の部屋に入った瞬間、物騒な物が目に入った。

 それは、髪の毛のようなもので雁字搦めにされている襖だった。


 ……この髪の毛、さっきの西洋人形と同じ色……?

 まあ、こういうのは開けない方が良いよね。開けようもないけど。

 

 そう考えてスルーしようとした所で、ヒタヒタという裸足で廊下を歩くような足音が耳に入ってきた。

 まさか、さっきの連中が侵入してきた? いや、それにしては歩き方が静かすぎる……

 

 ボクはどこかに隠れるべきだと判断し、周囲を素早く見回す。

 すると、血しぶきのついた屏風が目に入った。

 古い屋敷だから屏風がある事自体は不自然ではないけど、この血しぶきの方は不自然すぎる……。なんでこれだけ?


 そんな事を考えている間にも足音が近づいてくる。

 ――考えている暇はなさそうだ。

 即座に屏風の裏に隠れるボク。


 程なくして、廊下を歩いていた足音が止まった。


 立ち止まった……?

 そっと、そーっと屏風の端から隣の部屋を覗いてみる。


 すると、西洋人形と同じ髪の色をしたセーラー服の少女が宙に浮いていた。

 一瞬、幽霊かと思ったがどうも違うような気がする。

 なぜなら、『何かに担がれている』かのような格好だからだ。


 ドサッという音と共に少女が畳の上に放り投げられるように落下する。

 ……見えない何者かがいる……?


 そんな風に考えた直後、どこからともなく刀が飛んできて、少女を斬り裂いた。

 

「ギャアアァアアァァアァァアアァッ!」

 

 凄まじい悲鳴が響き渡る。

 ……少女からではなく、朽ちたタンスの上に置かれた西洋人形から。


 少女からは血一つでない。

 代わりに西洋人形から大量の血が吹き出し、周囲を鮮血で染め上げた。


「ク、ケケ、チ、チ、オロカモノノチ、マタ、フキダシタ!」


 どこからともなくそんな声が響く。

 と同時に、髪の毛で雁字搦めになっていた襖の髪の毛が消え去った。


 ……どういう事?

 

 しかし、それをゆっくり考える間などなく、

「チ、チ、オロカモノノチ、タリナイ。チ、ヨコセ……!」

 という声と共に、ボクの方へと刀の先端が向けられた。


 まさか、気付かれてる!?


 驚きで声が出そうになるのを必死に抑えて、心の中で慌てるボク。

 するとそこに、

「ミ・テ・ル。ニ・ガ・サ・ナ・イ。モット、シネシネ」

 そんな声が真上から響く。


 嫌な予感しかしないが、上へと顔を向ける。

 そして……その先にあった『縦長のひとつ目』と視線が合った。

 

 ……!?


 悲鳴が出そうになるのをギリギリで抑え込みつつ、急いでその場から離れるボク。

 直後、バリッという破ける音が響き、屏風に穴が空いた。

 同時に、床、天井、壁……部屋全体を覆わんばかりの無数の赤黒い手形が現れる。


「ひいっ!?」

 遂に悲鳴が口から漏れた。


 ここはもう、逃げるに限る。

 そう判断し、髪の毛が消えて開く事が出来るようになった襖を開ける。


 その刹那、今度は開けたその襖に穴が空いた。

 幸いにも、その先の部屋からは廊下に繋がっていたので、廊下へと飛び出して走る。


 ボクは逃げる。とにかく逃げる。

 そんなボクを赤黒い手形――いや、いつの間にか足形になっていた――が、追いかけてくる。

 わけがわからないが、そんな事を考えている場合ではない。

 なんとか外へ出られないかと思いながら廊下を駆ける。

 

 と、程なくして廊下が左右に分かれている所へと辿り着く。

 どっちへ行けば……?


 右……は、階段が見える。

 左……は、薄っすらと月の光らしきものが漏れている引き戸……


 って、あそこから外に出られるはず……! 

 そう判断し、左の廊下の先に見えている引き戸へと走る。

 

 謎の力で開かない……などという事はなく、あっさりと引き戸が開き、ボクの視界に屋敷の庭が飛び込んでくる。

 当然、すぐに外へと飛び出すボク。


 どこかに裏口か何かは―― 

「っ!?」

 

「ダ・メ」

 そんな声と共に、目の前にあちこちが黒く変色し、口が糸のようなもので縫われている状態の顔が、逆さまに――上から垂れ下がるようにして現れた。

 

「ニゲチャ……ダメ。シンデ?」

 異常なまでに長い手がボクを左右から掴み上げる。

 そして……

「が……ぎぃ!?」

 壊れて先端が鋭く尖った状態で垂れ下がっている雨樋の残骸に、ボクを突き刺した――

これを3話もやるのはあれなので、無理矢理2話で抑えましたが、それでも結構な分量に……

ちなみに、この前後編で出てきたホラーな場所やホラーな存在は、当然意味もなく出てきたわけではなく……いずれ……


といった所でまた次回! 既に次の話はかなり出来ているので、次の更新は平時よりも1日間隔が短くなりまして、明後日(8月22日(月))を予定しています!

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