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第21話 咲彩の悪夢・前編

 ――****――

 

 ――複数の青白いオーラを纏った薄っすらと透けている人間……否、ほぼ怨霊と言っても良いであろう存在が廃屋から飛び出して来て、ボクを追いかけてくる。

 まだ離れているが、立ち止まれば追いつかれてしまうだろう。

 

 ボクは必死に走る。走る。走り続ける。

 

 周囲に廃屋が見えなくなり、代わりに森とボロボロになった鳥居が見えてくる。

 その鳥居をくぐり抜けると、今度は大きな岩が見えてきた。

 

 ……この岩、見方によってはドクロにも見えるね……。不気味だなぁ……

 

 そんな感想を抱いている場合ではないのだけれど、そんな感想を抱かずにはいられなかった。

 ともあれ、その不気味な岩の裏へと回るボク。

 そして、そこから道の周囲に広がる森へと飛び込んだ。

 

 急いで息を整えつつ森の草むらに潜む。

 幸いにも体力はある方なので、すぐに息は整った。

 

 程なくして、そんなボクの耳に足音が聞こえてくる。

 

 地面に這いつくばるような格好のまま、ボクが走ってきた舗装されていない細い荒れ果てた道へと視線を向けると、斧や鎌を持った怨霊たちがボクを探すように辺りを見回しているのが目に入った。

 

 その顔は、やはり人間と呼べるようなものではない。

 白目の部分がない瞳を持つ奴や、口裂け女かと思う程に大きな口を持つ奴など、どれもこれも不気味だった。

 

 ボクの身の丈ほどもある草は、ボクを完全に覆い隠している為、今の所気づかれてはいない。

 

 ボクを見失った事に苛立ったのか、奴らのうちの1体が鎌を草むらに向けて振るう。

 とはいえ、そこにボクはいない。草むらに隠れている可能性を考えて、適当に振るっただけなのだろう。

 

 ……けど、このまま止まっていたら直撃してしまう可能性はある。

 

 そう考えて、ボクは這ったままゆっくりと、音を立てないよう慎重に後退する。

 ドスドスと鎌が振るわれ、無意味に地面が削られ、草が舞う。

 

 しばらくすると、別の奴が「キギィィッ!」という奇声を上げる。

 それが合図だったのか、鎌を振るっていた奴が鎌を振るうのを止め、他の奴らと共に、細い道の先へと進んで行った。

 どうやら、ボクがもっと先へ逃げたのだろう……と、そう判断したようだ。

 

 ……今の内に……と思い、そっと草むらから這い出……そうとした瞬間、ガサッという音がした。


「……?」


 不思議に思いそちらへ顔を向けるが、木があるだけでそこには何もない。

 どうやら気のせいだったようだ。

 というより、気のせいじゃなかったらシャレにならない。

 

 改めてボクは立ち上が……ろうとして、視線が合った。


 ――地面に浮かんでいた『顔』と。


「ミ・ツ・ケ・タ」


 地面に浮かぶ顔が、ニィと不気味な笑みを浮かべつつ、そんな声を発してくる。

 そして、それに続けて、

「キケケケケケケケケェッ!!」

 という耳をつんざくような、大音量の奇声が周囲に響き渡った。


 その直後、去っていった奴らの足音が、こちらへと戻ってくるのが耳に入る。

 

 ――ボクは慌てて走り出す。逃げる。

 来た道を戻る形になってしまうが、仕方がない。


 しばらく走った所で、再び古い……というか、半ば朽ち果てた建物――村が見えてくる。

 と、そこで村の外へ向かって逃げていた時は気づかなかった、門と高い塀のある大きな屋敷のようなものが目に入った。


 もしかしたら……と思い、開かれたままの門から中に入ってみる。

 すると、運の良い事に門の閂が壊れておらず、閉じる事が出来そうだった。


 ボクは即座に門を閉じる。

 そして、程なくすると足音が近づいてきて、ドンドンと叩き始めた。

 

 そう簡単には壊れないだろうとは思うも、奴らは斧や鎌を持っているので安心は出来ない。

 ボクはその場から逃げるようにして、玄関から屋敷の中へ足を踏み入れる。


 ――正直、こっちもこっちで怖いのだけど、あそこに留まっていてもどうにもならないのもたしかなので、こうするより道はない。

 ……出来れば何も出てこないと嬉しいんだけど、難しい……かなぁ……?

案の定というべきか……話が長くなったので、ここで一旦区切りました。

ホラー物ではないので、描写や表現を割と抑えめにしてみたのですが……果たして……


といった所でまた次回! 次の更新は、明日(8月20日(土))です!

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