第17話 4階へ
結局、俺が何を誤解しているのかは、分からずじまいだったが……まあいい。もう少し弓道というものへの理解を深めれば、自ずと分かる時が来るだろう。
部員にならずとも、気が向いたら訪れれば良いと千堂部長に言われたので、定期的に時間を作って訪れて見るとしよう。
――というわけで、武道場を後にした俺と舞奈は、特別教室――化学実験室や家庭科調理室といった、特定の授業でのみ用いられる専用の部屋……教室が連なる棟へとやってきた。
なんでだかは良くわからないが、魔法研究塔に篭もっていた頃を思い出すなぁ……。実験室だの書庫だのがあるから……なのだろうか?
「そう言えば成伯さん、先程の弓道――いえ、弓術には驚かされましたが、他にも武術は何か出来るのですか?」
なにやら興味津々といった表情の舞奈。本当にこういうのが好きなんだな。
「そうだな……。出来る出来ないで言うなら、剣とか杖とかも使えるぞ」
「剣、杖……つまり、剣術と杖術ですか。剣術はわかりますが……杖術を嗜まれているとは、なかなか通な感じですね」
「通……なのか? 必要に迫られて使えるようにしただけなんだが……」
――基本的に魔法は発動させるために呪文を詠唱する必要がある。
俺も、今でこそ大体の魔法を無詠唱で使えるようになったが、昔は呪文の詠唱が必要だった。
だけど、常に呪文を詠唱出来るような余裕があるとは限らないわけだ。
敵に奇襲されたりして、詠唱する余裕のないような状況の時に、何も抵抗する手段がないようでは死ぬだけだ。
だから俺は、杖を使った戦技を覚えた。杖だけでも戦えるように。
単に、それだけの話だ。
「杖術が必要に迫られる場面というのが良く分かりませんが……。……って、あれ?」
舞奈がそう言って、俺の方を見ながら首を傾げる。
……いや、俺の方じゃないな。俺の先……だな。
俺は舞奈の視線の先へと顔を向ける。
と、そこにはひとりの男性教師が階段を降りていく所だった。
「あの教師がどうかしたのか?」
「あ、いえ……どうして上から降りてきたのだろう……? と、思いまして」
教師の姿が見えなくなった所で、舞奈がそんな事を口にして上を見る。
別におかしな話ではないように思えるが、一体それの何が気になるというのだろうか? と、そう思い、問いかける俺。
「ん? 屋上にでも行っていたんじゃないのか? たしか、4階と5階には立ち入れないけど、屋上には出られるんだよな?」
「あ、はい、向こう側の棟――私たちの教室がある方の階段は、たしかに屋上へ出られるのですが、この棟の屋上は空調の室外機やら配管やらがあるせいで、業者の人以外は立ち入り禁止になっているんですよ。なので、この階段を登って行っても屋上への扉は施錠されていて出られません」
「なるほど……それはたしかに気になるな。なら、ちょっと見てくるか」
舞奈の説明を聞き、なんとなく気になった俺は階段を登ってみる。
すると、踊り場まで行った所で、4階の廊下が見えた。……おや?
4階は防火壁で塞がれていて廊下には出られないんじゃなかったのか? さっきの教師が開けたのか?
頭にピコーンと電球が点くRPGとかだと、術士も物理攻撃の技をぶっぱなしたりしますよね。
まあそれはそれとして、本日はもう少し更新が続きます!




