第17話 温泉から出て
「あ、ブルルン。ブルブルブルしてリフレッシュ出来たー?」
セラが脱衣所の入口から出てきた所で、ブルルンに対してそう問いかける。
それに対して、何故か身を捩りながら、
「ブルッ! 全身がブルブルブルブルされて、良い感じになったブルゥ! あれが『まっさーじ』という奴ブルね……」
なんて言葉を返すブルルン。
「マッサージ……なのかしらねぇ?」
「……どうなんですかね?」
と、かりんと舞奈が言っているが……そう言われても、見ていないので分からないしなぁ……
「ところで、そろそろ夕飯時だよな? ブルルンってどうするつもりなんだ? このまま出しておくわけにはいかないだろ?」
「あー……そうだな。夕食は専用の別室だという話だったが、紘都や鈴花には、まだ話をしていないし、一旦戻しておいた方がいいか」
俺は雅樹の問いかけにそう答えてブルルンの方を見る。
するとブルルンは、
「了解ブル! 戻っておくブル!」
という言葉を残し、その姿を消した。
「戻るって、一体どこに戻るんだ? 家か?」
「使い魔用の魔法空間……のような場所だな。無論、家に戻して番をさせてもいいんだが、番をさせておく必要がある程、治安の悪い国ではないからな」
雅樹にそう答えると、
「まあ、私たちの住んでいるマンションは、セキュリティ万全ですしね」
と、補足するように言ってくる舞奈。
「なるほどな。つか、治安の悪い国って言い回しだと、なんだか別の国に行った事があるみたいに聞こえるんだが……」
「あるぞ。それもかなりあちこち行った……いや、連れ回されたな」
「マジかよ!」
驚きの声を上げる雅樹に、頷いてみせる俺。
「ああ、マジだ。お陰であちこちの国にゲートで移動出来るようになったな」
「ゲート? 響き的にはテレポート魔法の類に聞こえんだが……」
「ああその通りだ。と言っても、印を刻んだ所にしか行けないから、一度は直接出向かないと行き先は増やせないんだけどな。ちなみにこの宿の近くにも印を刻んでおいたから、今後はいつでもすぐに来られるぞ」
「マジかよ!?」
再び同じような驚きの声を上げる雅樹。
驚きすぎて語彙力が低下しているんだろうか……?
なんて事を思っていると、
「あれ? みんなはもう温泉に入った感じ?」
という声が聞こえて来る。
うん? この声は紘都か……? と思いつつ声のした方を見ると、ちょうど紘都と鈴花がエレベーターから出てきた所だった。
「ああ。咲彩の様子を見に行った後、皆を誘おうと思って部屋に戻ったんだが、ふたりはまだ帰ってきてなかったんでな。居たメンツで先に入ってきちまったぜ」
頷いてそう答える雅樹と、それに続くようにして、
「ところで、ふたりはどこへ行っていたんですか?」
と、問いかける舞奈。
「あ、うん、海の方まで行ってきたんだ。海に浮かぶ鳥居がある島と夕日の組み合わせがきれいだったよ!」
「へぇ、それはちょっと興味があるわね……」
「ですね。今日はもう遅いので、明日余裕があれば見に行ってみたいですね」
鈴花の話に興味を抱いたかりんと舞奈がそんな風に言う。
というか、俺もちょっと興味があるな。
「っと、夕ご飯の時間が近いから急いで入って来ちゃうね」
「だね。じゃあ、また後で」
スマホで時間を確認しながらそう告げて脱衣所へ向かう鈴花と紘都。
そのふたりの背中を見ながら、俺はやはりふたりにも色々と話をしておくべきだな……と、そんな風に思う。
まあ、夕飯の後……いや、明日にでも話す方向性でいくか。
一応、桜満と亜里沙に説明して、ふたりの意見を聞いてからにした方が良いだろうからな。
本日(既に昨日になっていますが……)は色々とあった為、大幅に更新が遅くなってしまいました……申し訳ありません。
次の更新は平時通りの間隔となりまして、8月14日(日)を予定しています!
多分、次はいつもどおりの時間に更新出来ると思います……




